9月7日・日曜日。総裁選挙告示の前日に自民党の若手議員4名で「サンデー・プロジェクト」に出演した。テーマはもちろん総裁選挙。他の出演者は、若手の擁立をギリギリまで模索していたグループの中心メンバーである菅義偉衆院議員、大村秀章衆院議員、河野太郎衆院議員だった。候補者擁立に必要な推薦人の数は20名。その日の朝刊各紙の報道は、「若手の出馬を支持する議員の数は19名まで達しているが、候補者が絞られていないこともあり、擁立はかなり難しい」というトーンだった。

 

 もちろん、小泉総裁の再選を一貫して訴えてきた自分としては、この動きに参加することは出来なかった。短期間にここまで賛同者を集めた菅、大村、河野三氏を含む若手グループの突破力には敬意を表したい。が、結論から言うと、たとえ20人以上の擁立肯定派を集めたとしても、今回の擁立は無理だったと思う。若手議員の中の誰を立てるのか、どんな政策・公約で戦うのか、ということが最後まで固まっていなかったからだ。

 

 総裁選挙で候補者を擁立して戦うというのは、選挙で負けた場合、「冷や飯を食う」(ポストで冷遇される)ということを意味する。21名集めた後で、投票して一人に絞るという作戦だったようだが、いざ自分の支持していない候補者に決まった時に実際に署名する議員が何人いるだろうか。さらに、若手からも候補者を出すという目的が「次世代の存在感を高める」ということであるとすれば、すでに名乗りを上げていた4名の候補者と対等に(あるいはそれ以上に)国民や党員にアピール出来る人物でなければならない。各候補者の公約や国家ビジョンに対抗する政策を持たずに出馬しても、「何だ、若手はこんな程度か!」と思われたら、かえって逆効果になってしまう。

 

 「総裁選挙で勝つことは難しくても、若手の候補者が出て次世代の考え方や存在感を示すことは、自民党のイメージアップにつながる」という考え方はもう古い。安倍晋三氏とか石原ノブテル氏とか、自民党にはすでに次世代のスター候補が十分育っている。立候補閉め切り日の数日前、同じグループのある先輩議員がこう言っていた。「若手じゃなければダメだ、若ければ誰でもいいという理屈には説得力がない。この人なら小泉さんよりベターだとか、この人の政策でなければ日本は救えないとかいう理由で擁立するなら、それはそれで納得がいくけどね。高村正彦前外相でさえ、推薦人20名を集めるのに苦心している。大義名分の乏しい試みは、結実しない。見ててごらん。」なるほど、そのとおりだと思った。

  

 さて、TV討論のほうは(予想どおり)若手擁立に最後の努力を傾注する3人の意見を、小泉総裁の再選が望ましいと主張する自分が押さえつけるような構図になった。嫌な役回りだった。そりゃあそうだ。この3人はともに「世代交代」を訴えてきた同志に他ならない。河野、大村両氏とは一緒に有志による政権公約(マニフェスト)を作った仲。政策や政局で何度も活動を共にしてきた政界の盟友といっていい存在だ。菅氏とも、北朝鮮に対する抑止を目的とした外為法改正のために二人で奔走した。いわゆる二世議員にない突破力を持った行動派・党人派で、人望もある。

 

 幸か不幸か、議論の勢い(声の大きさ?)ではこちらが勝ってしまった。政治家としての実力では山本一太を上回る3人の主張が弱々しく感じたのは、「小泉改革路線は評価している。が、もっと早くすすめるべきだ」とか「若手候補を擁立しても勝てないと思うが、次世代をアピール出来る」とかいった中途半端な姿勢だったからだと思う。

 

 結局、若手擁立の努力は実らなかった。この企てには乗れなかったが、万一、実現したら「自民党にとってはいいことだ」とあちこちでコメントするつもりだった。翌日(告示日)の午後、菅氏と大村氏から携帯に電話が入ってきた。「昨日は擁立にケチをつけるような形になっちゃってごめん!でも、ここ数日でここまで盛り上げた行動力には感服した。とにかくご苦労様でした。」「いやいや、そりゃあ、立場があるからしょうがない。残念ながらもう一歩足りなかったよ!」と言葉を交わした。友情はもちろん壊れなかった。さらにこう付け加えておいた。「世代交代の戦いは、ここからが本番だと思っている。次回は必ず一緒にやりましょう!」

 

 明日の午後、小泉純一郎自民党総裁は間違いなく再選されるだろう。新総裁の任期は3年。任期中によっぽどのことがない限り、小泉政権は中曽根内閣以来の本格政権(5年)になる可能性が高い。逆に言えば、小泉政権はあと3年間でその役割を終えるということだ。小泉首相は蛮勇をふるって改革に取り組むだろう。古い政治文化や政官業の癒着、金属疲労を起こしている既存のシステムをぶち壊し、日本再生のための基礎をしっかり構築してもらわねばならない。現段階でそれが出来るのは小泉総理だけだ。

 

 我々次世代の改革派は、この間、構造改革の推進をサポートすると同時に、改革がけして逆行しないように監視していかねばならない。小泉改革が志半ばで頓挫した場合はもちろんのこと、小泉内閣がその歴史的役割を終える3年後には、我々の世代が政権を奪い取らねばならない。日本を蘇らせるための改革には時間がかかる。小泉総理の強味を学び、弱点を克服しながら改革を継承し、さらに押し進めていけるのは次世代の政治家だけだと確信している。だいたい、3年経った時点で、安倍晋三氏は51歳、塩崎泰久氏は55歳、渡辺喜美氏は54歳、石原ノブテル氏は48歳、そして山本一太も48歳になっている。若手と呼ばれること自体が不自然だ。

 

 次回の総裁選挙は、激烈な世代間闘争になるだろう。旺盛な権力欲と執念、そして目的のためには手段を選ばない戦闘力と闇のネットワークを持った「旧世代のじいさん達」に打ち勝つのは、並み大抵のことではない。戦う覚悟を決め、十分に戦略を練り、確固たる政策ビジョンと政権公約(マニフェスト)を準備する必要がある。改めて言うが、次の自民党総裁選挙(このまま自民党が存続すればの話だが)では、「次世代から候補者を擁立する」のではなく、「次世代で政権を穫る」ことを目指さねばならない。僭越ながら、その戦略を描けるのは「発想力」と「闘争本能」と「ネットワーク」、そして何より「いつでも政治家をやめられる覚悟」を兼ね備えた山本一太しかいないと自負している。明日の晩、小泉総理が再選された日の夜に、いよいよこの戦いの最初の準備を始めたいと思う。そう、次は必ずオレ達が穫る!!