日曜日。もちろん地元にいる。午前中は、佐波郡で行われた「実践倫理の会」に出席。前橋市で行われた某団体の10周年記念総会で挨拶をした後、夕方まで伊勢崎地区のポイントを回った。時間調整のため立ち寄った前橋事務所のデスクの上でパソコンを開いた。あと二つほど会合をこなして東京行きの新幹線に乗り込む予定だ。最後は親しくしている某県議の後援会の集まりに顔を出す。「独立自尊の一票」について話したいと思っている。




 移動中の車の中で、素早く新聞各紙(朝刊)のニュースをチェックした。最も印象的だったのは、読売新聞朝刊の13面「時の栞。」藤原帰一東大教授が「プルートウの悲劇に学ぶ」というタイトルで、手塚治虫のマンガ「鉄腕アトム:地上最大のロボットの巻」について語っている。




 藤原教授は父親の仕事の関係で、小学校の前半をアメリカで過ごしたと書いてある。日本のマンガを送ってもらっていた友達のところでマンガを読むのが楽しみだったそうだ。登場人物のセリフを全部覚えてしまうほど、くり返し読んだらしい。今ではほとんど忘れてしまったマンガの中で、一つだけ鮮明に記憶にあるのが「鉄腕アトム」シリーズの「地上最大のロボットの巻」というエピソードだということだった。




 ちょっぴり驚いた。何に驚いたかと言うと、まずずっと年上だと思っていた藤原氏が自分と同世代(あちらが二歳年上)だったこと。(失礼!)もっとびっくりしたのは、同氏が、小学校時代に鉄腕アトムを「ひとことひとことを覚えるくらい何度も」読み、その中で最も忘れられないエピソードがこの「地上最大のロボット」だったという事実。自分も同時期にアトムを読み、ほとんど同じ感覚でこの物語をとらえていたからだ。ちなみに、同世代だということを考えると、この時、藤原教授が読んでいたアトムは「カッパ・コミックス」シリーズではないかと思われる。




 ストーリーは、ロボットの王様になりたいという野望を持つどこかの国のスルタン(王族)が、100万馬力のプルートウという最強のロボットを作らせるところから始まる。このプルートウが主人であるスルタンから「ロボットの帝王になれ」という命令を受け、世界で一番強いと言われる7人のロボットを倒すために旅に出るという筋立てだった。




 アトムを除く各国のロボットは次々とプルートウに倒されていく。が、エピソードの終盤で、人間から戦うことだけを義務付けられたプルートウが、アトムとの戦いの最中にロボットとしての良心(使命感?)に目覚めるという展開になる。ところが、そのプルートウもこつ然と現れたさらに強い200万馬力のロボット(ボラー)によって破壊されてしまう。悲しい結末だった。




 アトムがプルートウの壊された残骸(確かツノの部分だった)に頬を寄せて涙する場面は忘れられない。ラストシーンはアトムとお茶の水博士のこんな会話だった。「博士、いつか、ロボットがこんな風に争わないですむ日が来るんでしょうか?」博士の正確な言葉は忘れたが、確かこんな調子だった。「そうじゃなあ。戦いをしむける人間が変わらなければいかんのかもしれん。」




 このエピソードの「強いことは空しい」「力では解決しないこともある」といった警鐘は、子供心にも深く響くものがあった。藤原教授とは一度もお目にかかったことがない。が、マスコミ等での発言を見る限り、国際政治や日米関係に対する考え方はずい分違っているようだ。でも、近いうちに会いにいこうと思う。何と言っても、同じ時代に「鉄腕アトム」を愛読していた仲なのだから。