11月に出版予定の本「もし総理になったら-新世代リーダー29人の提言」(仮題)の監修者としての後書きの原稿案を出版社に送ったところ。これから削られたり、直されたりすると思いますが、とりあえずHPの読者の皆さんには、一足先にお見せします。




--監修者・後書き--




昨年の11月から毎週一回、約7ヶ月間にわたり、「新世代総理宣言」という新しいタイプの政治セミナーを、森ビル・アカデミーヒルズ及びラジオ短波と共同で企画、開催した。ラジオ番組とタイアップしたこの新しいタイプの公開セミナーでは、自らゲストの人選を行い、同時にセミナーのモデレーター(司会)とラジオ番組部分の放送作家を務めるという、総合プロデューサーの役割を果たすことになった。




日本の政治に今、最も求められていることは「世代交代」だと思う。もちろん、ただ若ければいいというつもりはない。どんな世界でも、ベテランの叡智は必要だろう。が、現在、日本という国家は間違いなく凋落のとば口に立っている。金融・経済の問題についても、外交・安全保障の問題についても、これまで経験したことのない未知の状況に遭遇している。過去の経験則は、通用しない。




ある国家が危機的状況を乗り切って新しい方向に大きく踏み出す時には、リーダーの世代交代が起る。米国のクリントン大統領や英国のブレア首相、ロシアのプーチン大統領等、過去に40代のトップが誕生した背景には、常にこうした流れがあった。




日本が現在直面する未曾有の危機を克服するためには、既存の制度や古い政治文化、さらに過去の成功体験に縛られない大胆な発想とスピーディーな決断が不可欠だ。小泉総理の改革への挑戦は大いに評価したい。が、この改革路線を完成させ、国民の意識を変え、日本をしなやかに、したたかに進化させていく役割は、しがらみや既得権益に囚われない、新世代の政治リーダーが担わなくてはならない。




最近、「若手の政治家に覇気がない」と、よく言われる。何とかして旧世代のリーダーシップに健全な競争を挑めるような構図を作りだせないか。次世代の政治家の国家ビジョンや政治哲学をもっと内外にアピールする方法はないか。世代交代によって新しい政治の流れを生み出す戦略を、ずっと頭の中で描いてきた。たまたま、政治に関する新たな番組を検討していたラジオ短波と、森ビルの文化事業部門を担当し、アーク都市塾というセミナーを主催していたアカデミー・ヒルズがこの実験的セミナーの主旨に賛同してくれた。二つの組織の全面協力を得て、アーク都市塾セミナーの一環という形で、このプロジェクトがスタートする運びとなった。




セミナーは「新世代総理宣言」というタイトルそのままの内容。毎回、与野党から次世代エースの呼び声高い国会議員を一人づつゲストに招く。そして、総理になったつもりで、それぞれの国家ビジョンや政策を熱く語ってもらうというものだった。ゲスト選考の基準は極めてシンプル。この国の未来の首相にふさわしい能力と見識を持ち、実際に総理大臣になる可能性を持った人物であることだ。




ゲストで登場願った衆参の国会議員は、全部で30名。50歳になったばかりの3名の議員をのぞき、すべて将来を嘱望される30—40代の新進気鋭の論客ばかりだ。現職の大臣から、閣僚経験者、野党の政調会長、党首選挙に立候補した代議士まで、実に多彩な顔ぶれになった。同僚、先輩議員から、ピカピカの一年生までいる。政治家としていろいろな意味で自分より優れているか、もしくは、より大きな可能性を持った人だけを選び、直接会ってセミナーへの出演をお願いした。最終回は総括も兼ねて、(僭越ながら)自分自身もゲストの席に座らせてもらった。




リーダーの条件は、政策に精通していることだけではない。人間的魅力や突破力、権力闘争に勝ち抜く覚悟も、重要な資質だ。この7年間、国会議員として政治活動をともにしたり、国会活動や政局での行動力や存在感、人望等を身近に拝見する中で、選りすぐったメンバーだ。その意味では、よくマスコミなどで発表される、政治評論家やジャーナリストが選ぶ未来の政治リーダー候補リストより、はるかに正確で、説得力のある面々になったと自負している。




毎週、木曜日の夜8時30分。アーク森ビル36階のアカデミーヒルズのホールでセミナーが始まる。参加者は、ビジネスマンや企業経営者、官僚、欧米やアジアの若手外交官、ジャーナリスト、学生等。人数は、40ー50名程度に限定した。東京のゴージャスな夜景という舞台装置が、毎週、通常の政治セミナーとは違うリラックスした雰囲気を演出してくれた。




到着するや否や、ゲストには「内閣総理大臣」と書かれた赤いタスキをかけてもらう。最初の30分はそのままラジオのトーク番組になり、残りの約1時間が参加者との議論にあてられる。出演いただいた国会議員には、それぞれ約1時間半、思う存分、自分の思いを語ってもらった。どんな政治哲学を持っているか。政治家になったきっかけは何か。明日総理大臣になったらまず何をやるか...。番組の最後には必ず「総理大臣になって、○○○するぞー!」と叫んでもらった。各ゲストから、「尊厳ある国家」「自立した国家」「多様な価値観を受け入れる国」「優しさとゆとりのある国」「あたり前の国」等々、若手議員の考える様々な国の姿が示された。




29人のゲストとの議論を終え、改めて我々新世代の議員に共通する長所と短所を噛みしめている。強みは、何と言っても、旧世代に比べて政策に明るく、国際感覚があり、明確な国家ビジョンを持っていること。しがらみも少ない。最大の弱点は、政策を実現したり、政局を動かしたりするための突破力が相対的に劣っていること。新世代が克服しなければならない点は多々ある。それでも、我々の世代にも、リーダーとして十分にこの国を引っ張っていける能力と覚悟を持った人材がいることを、確信することが出来た。




本書「もし総理になったら-次世代リーダー29人の提言」(仮題)には、セミナー「新世代総理宣言」での発言をもとに、これから日本という国の舵取りをしていく政治家29人の国家ビジョンや政策、政治理念が収められている。この一冊から、日本という国の未来像が見えてくる。この本が、日本の政治に興味を持つ研究者や各国の対日政策関係者等にとって貴重なデータ、すなわち日本の将来を考える重要なヒントになることは間違いない。さらに、日本復活の可能性を内外に向けて発信し、同時に政治の世代交代を促すメッセージになることを願うものです。




ここ数年、音楽を通じて政治のメッセージを届けるというユニークな政治キャンペーンを続けてきた。本書の出版にあわせ、世代交代をテーマにした自作のラップを収めたCD「ジパング復活(仮題)」も同時期にリリース、発売されることになった。本と一緒に鑑賞いただければ、また別の意味で、新世代政治家の感性を感じとってもらえると思います。さらに、同書は韓国でも出版される計画が進んでいる。英訳の企画も検討中だ。この本を通じ、日本の次世代リーダーを世界に紹介する機会を一層広げていきたいと考えている。




この本の出版にあたり、企画を通してくれた角川書店の宮本○○氏、また、政治セミナーを一緒にプロデュースしてくれた磯井○○氏、工藤○○氏をはじめとする森ビル・アカデミーヒルズ関係者の方々、ラジオ短波担当ディレクターの宮崎○○氏、毎回セミナーの運営を手伝ってくれた学生・社会人のボランティア・スタッフの皆さん、そしてセミナーで毎回アシスタントを務めてくれた武田あかり氏に、この場を借りて心から感謝申しあげます。




さて、この29人の中から、新たに何人の大臣が、そして一体何人の総理大臣が生まれるだろうか?