民主党の代表選挙が、いよいよ本格的に始まりそうな気配だ。先日、「ニュース23」の緊急討論で一緒になった前原誠司氏と野田佳彦氏を含む若手候補者一本化調整は、不調に終わった?らしい。渡辺ヨシミさんは、「他党のことなので、あんまりフォローしてないなあ」なんて言ってたが、私はとても関心があります。事実、各候補者の動きや発言を、新聞、TV、インターネット等で、逐一チェックしている。ま、自分の党のことではないので、気楽に見ていられるのは事実だ。




 今日の午後、民主党をよく知る友人から電話があった。「若手の二人も、何をやりたいのかちゃんと伝わって来ないな。候補者一本化の話ばっかりでさー」と言っていた。そりゃあ、早計というものだ。少なくとも(自分が知る限り)前原氏なんかは、しっかりした政治哲学と明確な国家ビジョンを持っている。二人の真価が問われるのは、党首選が始まった後の候補者ディベートでしょう。野田氏からも、具体的にどんな政策が提示されるのか、興味津々というところだ。




 実際、20人以上の推薦人を集めて党首選挙に正式立候補出来る若手候補は、前原、野田両氏のみというのが大方の見方のようだ。それにしても、ベテラン、若手候補者が入り乱れ、えらく賑やかな選挙になることだけは間違いない。自民党では考えられない状況。ちょっと、うらやましい気もする。




 党首選挙の見どころは、何だろう。当然、誰が党首に選ばれるかというのが、与党にとっては最大の関心事だ。が、その他にも、鳩山氏と管氏の勝負がどう展開するか、横路氏がどんな動きを見せるか、若手の野田氏と前原氏がどこまで健闘するか、選挙によって先鋭化するに違いない党内の対立が、党の分裂につながる可能性はないか、いろいろと興味をそそられる点が多い。




 自分が最も注目しているのは、今回の選挙で、党首選の候補として早くから名前の挙っていた枝野幸男氏が、前原氏の支持に回ったこと。TBSの出演者控え室で一緒になった前原氏に、「枝野さんとか、福山さんとかがサポーターで、心強いでしょう」と話しかけると、「いやあ、実は枝野さんとは、日本新党以来、ずっと行動を共にしてるんです。いつか恩返ししないといけない。」と言っていた。さらに、「でも、二人の政治理念、特に外交・安保なんか、かなり考え方違ってません?」と突っ込んでみた。「いや、実はそうでもないんですよ」という答えが返ってきた。




 前原氏とは、「お前が言うな!」という対談本の中で様々な議論を交わした。雑誌「選択」の「日米往復書簡」というコーナーで、同時期に外交・安保のリレー・エッセイの連載を担当したこともある。論理的で、切れ味の鋭い論客だ。あの「頑さ」が、とてもいいと思う。枝野さんとは、政治資金収支公開の論文を共同で発表し、自民・民主若手議員の勉強会にもコア・メンバーとして参加している。頭の回転が早く、柔軟。何より、偉ぶらない人柄がいい。




 それぞれ、民主党の幹事長代理と政調会長代理を務めるこの二人。タイプは違うが、「好きな政治家」のジャンルに入る。最大野党の若手エースとしての活躍には、大いに刺激を受けてきた。(ま、能力でいうと、山本一太のざっと3倍くらいはあるでしょう。)この二人が、外交・安保から経済、社会保障の分野にいたるまで、「政策の共通点」を見つけることが出来たとすると、この前原—枝野を中心としたグループは、かなり面白い政治勢力になる可能性がある。これは、政治的な直感です。その意味で、前原グループの政策ビジョンには、特に注目している。




 野田さんとは一度会っただけだが、なかなか懐の深い人物だと感じた。ベテラン、若手を問わず、かなりの票を集めるかもしれない。選挙でも終わったら、一度ゆっくり話してみたい人物だ。一方、前原氏には、連日、「若手一本化のために降りろ」というプレッシャーがかかっている感じがする。候補者の中では一番若くて、ハンサム。加えて、あれだけはっきりした性格だと、党内の妬みややっかみも、ハンパなものではないだろう。




 別に他党のことに口を出すつもりはない。が、個人的には、前原氏には初心を貫いて頑張って欲しいと思う。だいたい日本の政治史の中で、党首選挙に40代の候補者が二人以上立ったことは、恐らく一度もない。長老支配から脱却出来ていない隣国の韓国でさえ、1970年の大統領選挙では、当時の野党(新民党)の大統領選挙の指名を40代の3人が争ったことがある。(このうち、二人はなんと金大中現大統領と金泳三元大統領だった。)




 TVでもコメントしたように、前原氏と野田氏の出馬は、政界全体にとっても意味のあることだと確信している。自民党の新世代も、負けてはいられない!