小泉総理と自民党郵政族の間でギリギリまで攻防が続いていた郵政関連法案も、一部修正の上、衆院を通過する見込みになった。具体的には、信書便法案は原則無修正で、郵政公社法案は法文修正することで合意したとのこと。




 小泉首相が、自民党総務部会の「郵政公社の経営形態見直しの議論は4年間行わない」という要求を一蹴したことは当然だろう。だいたいこんな変化の早い時代に、政治家が「...の問題は...年間話し合わないようにしよう」などということ自体、全くのナンセンスだ。




 小泉さんが、「むしろ民間の参入を妨げる不完全な法案ではないか」とか「こんな法律のために解散なんてことになったら愚の骨頂だ」といった必ずしも的外れでない批判を受けながらも、この法律にこだわった理由はよくわかる。郵政事業民営化が長年の総理の持論だったことは間違いないが、今回の戦いには別の側面もあった。




 すなわち、この法律をめぐる議論には、国民の変わらない意識、官と民の関係、族議員と業界、党と政府の二重権力構造といった自民党の古い体質が凝縮されていた。こうしたものこそ、まさに小泉総理が壊すと宣言した旧来の政治文化だった。小泉さんにとっては、極めてシンボリックな戦いだったはずだ。




 さて、今回の総理対郵政族という構図の中で、最も男を上げた?のが「政界の一寸法師」と呼ばれる荒井広幸衆議院議員(自民党総務部会長)だった。考え方や立場は違うものの、小泉総理を相手に一歩も譲らなかった胆力は大したものだ。さすがは元早稲田大学雄弁会幹事長。地盤も看板もないところから、知恵と行動力でのしあがってきた叩き上げの苦労人。同世代の二世議員とはモノが違う。素顔は、ユーモアセンス抜群のチャーミングな人物です。




 山本一太自らゲストを務めたセミナー「新世代総理宣言」の最終回。ラジオ短波のディレクターとアシスタントの武田あかり氏が、こっそり、荒井広幸氏や河野太郎氏を含む数名の同僚議員の激励メッセージを収録し、ラジオのパートで流してくれた。荒井氏のメッセージは、「このセミナーは素晴らしい。山本一太さんと私は7年前、自民党総裁選挙で小泉純一郎候補を応援した同志です。無二の親友です。現在の小泉純ちゃんは、ちょっとやりすぎだけど...」という内容だった。




 郵政事業、特に郵便事業に対する荒井氏の哲学は、7年前の総裁選挙の頃から一貫している。特定郵便局長からの反発で、小泉純一郎候補の推薦人集めが難航すると見るや、「郵政事業民営化については反対だが大局に立って小泉を応援する」という姿勢を示しながら戦うという奇抜な戦略を編み出したのも彼だった。荒井氏お気に入りの料理屋の二階で、企画担当として二人で小泉陣営の宣言文や戦略の原案を練った。ちなみに当時山本一太は、初当選して二か月しか経っていない状況だった。




 荒井代議士とは同じ44歳。かたや政界のプロと永田町のアマチュア、抵抗勢力と改革派と立場は違っても、どこかでお互いを意識し、認めあってきた。ここ数年間、守旧派のイメージに埋没した感のあった荒井氏が、小泉改革への異論を唱えて政治の表舞台に踊り出てきた。ようやく出て来たなーという感じで(正直言って)嬉しかった。政局で激しく対立することはあっても、個人的な友情は大事にしていきたいと思っている。




 それでも、はっきり申し上げたい。「荒井広幸どの。あなたは間違っている」と。荒井さんたちのやり方では、日本という国は間違いなく凋落していく。どんなに立派な理屈をつけても、問題の先送りとしか思えない。結局のところ、現状を維持し、既得権益を守るという呪縛にとらわれた考え方だ。もっとも、「抵抗勢力」という言い方には違和感がある。むしろ、「小泉改革の路線と違う国家像、社会システムを目指す人々」と表現すべきだろう。




 皆、気がついているだろうか。こうやって総理と党が内輪もめをしている間にも、国民の気持ちがどんどん自民党から離れていっていることを。ポスト小泉は小泉しかない。小泉改革が失敗した時、少なくとも今の自民党はないだろう。野党に転落するか、それとも政界再編の中でその歴史的役割を終えていくことになるだろう。




 「新世代総理宣言」セミナーではないが、今回の郵政バトルは「終わり」ではなく、新たな、より熾烈な闘争への「始まり」だgat。改革に反対する皆さん。小泉純一郎首相の内包する「狂の紋章」(小泉DNA)を侮ったら、大変なことになりますよ!