(※掲載順が前後します。)




チョン・ジョンべ議員(新千年民主党)

5月4日(土)12時~14時




 5月4日の朝。在韓国日本大使館の友人夫妻と、ホテルのレストランで朝食を取りながら懇談。昼は与党のチョン・ジョンべ議員と久々に再会し、こちらも夫妻でランチをともにする。美味しい韓国料理をつつきながら、じっくり話をすることが出来た。




 著名な人権弁護士でもあるチョン・ジョンべ議員とは、4年前にキム・ミンソク議員等と始めた与党間の日韓若手議員交流(「バクダンの会」)の最初の会合で知り合った。実は数カ月前にも与党の若手・中堅議員グループの一員として来日していたが、その時は日程があわず、すれ違いになってしまった。「今度はしっかり会えて良かった。バクダンの会合に参加した韓国側の若手議員は、皆元気に活躍している。ミンソクはソウル市長選に立候補した。シン・ギナム議員やチュ・ミエ儀員(女性)も、民主党の副委員長(8人)に選ばれ、与党の幹部としてリーダーシップを発揮している。」チョン議員が嬉しそうに、仲間の近況を話してくれた。




 今回、チョン議員にどうしても会いたかった理由がある。与党新千年民主党の大統領候補になることがほぼ確実と言われていたイ・インジェ氏を破って、彗星のごとく登場したノ・ムヒョン氏をスターにしたのは、民主党が全国規模で初めて行った候補者決定のための予備選挙だった。




 民主党内からは、前回の大統領選挙で健闘し、大本命と言われていたイ・インジェ議員を含む7人がこの予備選挙に名乗りを上げた。その時、誰も注目していなかったノ・ムヒョン陣営に加わった与党の国会議員は110数名の党所属議員のうち、たった一人だけ。それが、弁護士時代から同氏と付き合いのあったチョン・ジョンべ議員だったというわけ。当然の流れとして、チョン議員はノ・ムヒョン氏の側近(政務のアドバイザー)としてこの選挙を戦うことになった。




 ノ・ムヒョン氏は、これまでの大統領候補とは全くタイプが違う。権威主義的で、家柄や学歴を重んじる韓国社会、特にエリートの多い韓国政界にあって、貧しい農家に生まれ、高校しか出ていないというのは異色だ。金大中大統領も商業高校出身だが、時代状況が違う。高校卒業後に独学で勉強し、司法試験にパス。やり手の弁護士として名前を売り、国会議員にまでのぼりつめた。出身地である釜山市長選挙を含め、これまで5回の選挙に臨み、そのうち3回落選。それでも、常に一貫した行動、筋の通った哲学を持ち続けてきたことが、国民の共感を呼んでいるようだ。




 ちょっと心配なのは、本人がどのような国家ビジョンや政治哲学を持っているのか、これまでの主張を整理してみても、いま一つはっきりしないこと。特に、外交については未知数、というか、韓国にとって最も重要とされる米国、日本に対する見方が明確でない。だいたい、これまで訪日経験は一度だけ、米国には一度も行ったことがないという、韓国では希有な政治家だ。




 そのノ・ムヒョン候補の側近であるチョン氏と話すことで、民主党大統領候補の対日観を探るヒントを得たいと考えていた。対日関係については、「基本的に金大中大統領の路線を引き継ぐことになるので、対日政策は変わらないだろう。米国については、従属的な関係があるとすれば修正していくことになると思うが...。」という話だった。ノ・ムヒョン氏は、一言でいうと、自分に正直で、しかも「原理・原則をけして曲げない人物」だそうだ。




 ノ・ムヒョン氏の性格を示す面白いエピソードを聞いた。与党の大統領候補予備選挙で争ったイ・インジェ氏は、このまま民主党にとどまるかどうか微妙な状況。それでも通常の政治家なら、大統領候補に決まった時点で(どうせ党を出るに決まっていると思っていたとしても)一応はライバルを訪ね、同じ与党として結束と強力を呼びかけるのが普通のこと。しかしながら、ノ・ムヒョン氏はイ・インジェ氏のもとを一度も訪ねていないとのこと。「そんなことをしてもムダ」だと思っているらしい。




 いずれにせよ、選挙戦はこれからが本番。これから7か月の間には、様々な展開が予想される。韓国の大統領選挙の投票率は7割を超える。韓国の人々は、「変化」と「安定」のどちらを選ぶのだろうか?