朝の国会対策委員会全体会議に出席し、そのまま午前9時からの外交防衛委員会へ。受刑者(犯罪を犯して刑に服している者)移送条約について、自民党を代表して質問に立った。




 日本政府が参加を決めたこの条約は、外国(裁判国)で服役している受刑者を、母国(執行国)に移送する手続きを定めたもの。その主旨は、受刑者の社会復帰を円滑にするということ。ヨーロッパを中心に移民が激増するという時代的背景もあり、85年に発効した。アジアでは日本が最初の加盟国となる。受刑者が裁判を受けた国と母国との間に刑罰の大きな差がなければ、両国政府、本人の同意を前提に、残りの刑期を母国で務めることが出来るようになる。




 全会一致の条約ということで、与党が確保した時間は15分のみ。条約の背景や哲学についてまず川口外務大臣に答えてもらい、残りの時間を使って映画の話をした。「昨晩、この条約の中身をチェックしながら、学生時代に見たある映画を思い出しました...」というくだりから、「各国の政情や文化によって、刑務所の環境や受刑者に対する取り扱いには大きな違いがあるということを痛感しました。」という流れに持っていった。こんな「いい加減な」質問をするのは、ラテン系の山本一太くらいだろう。




 映画のタイトルは、「ミッドナイト・エクスプレス」。監督は、知る人ぞ知る硬骨漢アラン・パーカー。「ミシシッピー・バーニング」のような人種差別を扱った社会派の作品から、マドンナを主演に抜擢した「エビータ」のような音楽を全面に打ち出した映画まで、幅広いジャンルを手がける才能豊かな映画監督だ。1978年に発表されたこの作品は、その年の米国アカデミー賞の各部門にノミネートされたが、結局、脚本賞と作曲賞の二部門のオスカーにとどまった?と記憶している。ちなみに、この年のアカデミー賞作品賞は、マイケル・チミノ監督の「ディア・ハンター」だった。




 ストーリーは実話がもとになっている。主演のブラッド・デイビス演じるアメリカ人青年が麻薬を密輸しようとして(確か、チョコレートの板状になったハッシッシを身体に巻き付けて税関をすり抜けるという手口を使って)失敗し、トルコの空港で逮捕され、裁判で4年間の懲役を言い渡される。イスタンブールの刑務所に服役することになり、劣悪な環境の中で苦しみながら、いよいよ刑期終了をむかえようとしたその時(一か月前だったと思うが)、ある事件により当局から一方的に裁判を取り消され、新たに終身刑?を宣告されるという最悪の展開になってしまう。そこで彼は脱獄を決意し、米国に逃れるという話だった。ミッドナイト・エクスプレスというのは、囚人仲間では「脱獄」を意味する。




 映画が、当時のトルコの刑務所や裁判の状況についてどこまで正確に真実を伝えているかは分からないが、看守の囚人に対する暴力(特に同性愛者によるレイプ)や囚人同士のケンカ、刑務所内の腐敗(ワイロ)等の状況が、実にリアルに描き出されていた。主人公の青年が、ガラス越しに恋人と面会するあの衝撃的なシーンや、主人公自身が精神異常をきたすギリギリの状態まで追い詰められていく緊張感は、今でもはっきり脳裏に焼き付いている。「この条約があったら、彼も刑期の半分以上を母国の刑務所で過ごすことが出来たかもしれない」と結んだ。




 条約の質疑を終わり、全会一致で採択。それにしても眠い。こんな「ミッドナイト・エクスプレス」(深夜特急)みたいな生活を続けていたら身体が持たない。どっかでこの生活パターンから脱出(脱獄?)しなければ...。




追伸:

1)昨晩のJICA若手との懇親会は楽しかった。JICA若手の皆さん、ありがとう!10数年ぶりに訪ねた「ねこや」のママが、「あんた、昔と全然変わらないわね。」と驚いていた。(喜んでいいものか。)この店で最後に歌った「涙をふいて」を熱唱する。あー、気持ち良かった。




2)最近、気がつくと得意のローリング・ストーンズではなく、中島みゆきの「地上の星」(プロジェクトX主題歌)とブロンディーの「コール・ミー」を口ずさんでいる。なぜだろう??




3)ふと時計を見ると、午後7時20分。先ほど総理官邸から国会対策の部屋に戻ってきた。小泉総理、ここはしっかり覚悟を決めて、突っ走ってください!