「おつー!」
「カツーン!」
 ビールグラスの音が響きます。
 本日もカレンさんちの小さなバル開店です。
「いやー!のぞみくん!やっぱりいいもんだねー!オリンピック!酒がうまい!」
「そうですね。カレンさん。日本人選手の活躍を観られるだけで力をもらえますよね。で、今回は冬の旬、アンコウです」


「あんこー?てば、これ、あんこう鍋用じゃない?これをどーツマミにするのよさ?」
「はい。まずはアンコウの身を水気をとって塩コショウして小麦粉をまぶします」


「ふうん。塩こしょーにコムギコね。じゃあ、もう『ムニエル』じゃん」
「ちょっとちがいますね。今回は『ムニャイア』にします」
「なに?むにゃいあ?え?」


「『ムニエル』はフランス料理でバターを使うんですが『ムニャイア』はイタリア料理なのでオリーブオイルを使うんです」
「ふうん。そなんだー


「小麦粉をまぶしたアンコウをオリーブオイルで揚げ焼きにすると…」


「『アンコウのムニャイア』の完成です」
「おー!うまそー!」
「お味はいかがですか?カレンさん」



「うんうん!これアンキモなんだけど!前に食べた
フォアグラとやっぱ比べちゃうけど、こっちのほうがアッサリしてて食べやすいねー!身のほうもコラーゲンプルプルなのに表面カリサクッ!こりゃうまい!やっぱバターよりオリーブオイルのほうが、あたしら日本人には合うかもしれないねー!」
「それはよかった。で、カレンさん。おめでとうございます」
「はい!ありがとうございます!て?なんだっけ?」
「え?あの男子フィギ…」
「わかってるわよ!羽生くんと昌磨くんでしょー!もー!ケガでどうなるかと思ったこともあるけど、やっぱ見た目クールだけど中身アツイオトコ、羽生くん。完全復活したわよね!ショートでのドヤ顔が印象的だったわー!
「そうですね。ショートもフリーもほぼノーミスでしたものね」
「昌磨くんもよかった!フリーでコケちゃったけど、そこはまあ、ゴアイキョ。で、わたしの思ってたとおりに羽生くんが一番いい色のメダルで昌磨くんが次にいい色になったよねー!気分サイコー!」
「そうですけど、カレンさんが予想していたネイサン・チェン選手はメダルに手が届きませんでしたね」
「そうなのよ。ショートは『ネイサン、誤算、散々、ごくろうさん』だったけど、フリーは四回転を5回成功させて、しっかりとツメアト残したわよね。けどまあ若いんだから次のオリンピックでがんばってもらえばいいんじゃないの?」
「はい。その逆の立場なのがフェルナンデス選手でしたね
「そーなのよー!フェルちゃん!26才!どー考えても最後のオリンピックだものねー!でも意外!あんなに世界選手権で勝ってるフェルちゃんもオリンピックで初メダルなのよねー!」
「はい。この三人が表彰台で抱き合ってる図は、なにか感慨深いものがありましたね
「そうよねー!羽生くんとフェルちゃんは同じオーサーコーチの兄弟弟子。羽生くんにとっても昌磨くんは弟みたいなもんだから、次男三男長男でメダル独占てな感じよねー!」
「そうなんです。あと思ったのはフェルナンデス選手以外、上位の選手は国籍は違えども日本や中国の東アジア系の選手ばかりなんですよね」
「それはやっぱり、体型とかがあってんじゃないの?4回転が当たり前になってきてんだから。日本人や中国人の選手に。まあ、これからも男子フィギア界の中心になってくんじゃないの?かれらが。けど、忘れてはいけないことがひとつあるわ!」
「なんですか?」
「田中刑事くん!三人目の代表!18位だけど!フィギアデカもがんばりましたってことよ!メダルとるだけがエライんじゃない!デカにもデカなりの自分のオリンピックがあったんだから!あと他のもろもろの選手らにもね!そう思わない?」
「ですね」