技術士合格法(7.1:解答の構成) | 技術士を目指す人の会

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勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

●文章の構成

 文章には構成があります。いろいろあると思いますが、代表的なのは以下の3つでしょう。

 

「起・承・転・結」

「序論・本論・結論」

「前文・主文・末文」

 

3つのうち最もメジャーなのが「起・承・転・結」。小学校の国語の授業で習います。多くの物語がこの構成をとっています。

「起」は物語の導入部分。物語の舞台となっている時代、場所等を説明します。「承」では、主人公が登場して物語がスタートします。「転」は主人公を取り巻く環境が一変します。何らかのトラブルが発生してその対処にあたります。そして「結」は最終的にそのトラブルがどのように解消されたのか、或いはなぜ解消されなかったのかを説明します。

例えば、童話の桃太郎を使って「起・承・転・結」を考えてみます。

 

❶起:お爺さんとお婆さんが住んでいた。

❷承:川から桃が流れてきて、桃の中から男の子が誕生。桃太郎と名付けて育てる。

❸転:鬼が村を襲う。桃太郎は犬、猿、雉を仲間にして鬼退治に向かう。

❹結:桃太郎は鬼退治に成功した。宝物を持って帰った。

 

このようにストーリーを展開すると、読み手を強く惹きつけることができます。

(少し話はそれますが、いろんな特技を持った仲間を集めて敵と戦う、そして宝物を持って帰るというストーリーは、ワンピースと同じですです。桃太郎という童話が優れていることがよくわかりますね。)

起承転結を上手く使いこなせば、メッセージ性の高い文章を作ることができます。

しかし、資格試験の解答を作るために、ストーリー性が豊かな文章は必要ありません。「起・承・転・結」はハードルが高すぎます。お勧めしません。

次に、「序論・本論・結論」。ビジネス文書を作る際、最も一般的に使われている構成です。この構成はとても説得力があります。

まず、「序論」で問題を提起します。「本論」で問題の原因、解決策の内容を提示します。「結論」では、その解決策を実施するべきことを宣言します。

例えば、先ほどの桃太郎を使って「序論・本論・結論」を考えてみます。

 

❶序論:鬼が村を襲う。被害が発生した。

❷本論:鬼への対策が必要である。2つの案がある。

    案1は鬼から逃げる。ただし、鬼が追ってくる可能性がある。

    案2は鬼と戦う。ただし、鬼は強いので負ける可能性がある。

    鬼に勝つためには強い仲間が必要である。

❸結論:桃太郎は犬、猿、雉を仲間にした上で鬼と戦うべきである。

 

このように展開すると、文章に説得力をもたせることができます。

ただし、「序論・本論・結論」という構成は、主張が強すぎます。これは試験ですので、採点官は模範解答を見て採点するはずです。この構成に沿って、強い主張を含む答案を作った場合、模範解答と内容が合致していればいいのですが、ちょっとしたズレがあった場合、強い主張をすればするほどに、採点官からの評価が低くなります。

また、この構成は本論と結論で同じ内容を繰り返して言及しています。解答用紙は限られています。少ない文章で重複部分があるのはあまりよくないです。

最後に、「前文・主文・末文」です。

「前文」を言い換えると、はじめに、プロローグです。概要、背景、経緯等を述べます。「主文」は、具体的な取組、対策、結果等について詳述します。「末文」を言い換えると、おわりに、エピローグです。今後の展望等を述べます。

例えば、先ほどの桃太郎を使って「前文・主文・末文」を考えてみます。

 

❶前文:鬼が村を襲う。被害が発生した。

❷主文:鬼への対策が必要である。2つの案がある。

    案1は鬼から逃げる。ただし、鬼が追ってくる可能性がある。

    案2は鬼と戦う。ただし、鬼は強いので負ける可能性がある。鬼に勝つためには強い仲間が必要である。

    そこで、桃太郎は、犬、猿、雉を仲間にして鬼と戦った。その結果、鬼退治に成功した。

❸末文:将来、新たな鬼が攻めてきた時に備え、武力を確保するとともに村の周りに壁を作る必要がある。

 

「前文」は概要、背景、経緯等ですから、「過去」にスポットをあてます。「主文」は、取組、対策、結果等ですから「現在」で、「末文」は今後の展望等ですから、「未来」について書いています。時系列で書くことができるメリットがあります。

ただし、「主文」のボリュームが大きくなります。

このように文章の構成には3種類あります。それぞれ、長短があるわけですが、技術士の筆記試験の解答は、「前文・主文・末文」で作るのがおススメです。

 

●前文・主文・末文の使い方

従前の技術士試験では、筆記試験に合格した後、受験生は体験論文を作成・提出していました。体験論文の記述項目は、①概要を述べた上で、②立場と役割、③課題及び問題点、④技術的提案、⑤技術的成果、⑥現時点での技術的評価及び今後の展望を述べることになっていました。試験官は、体験論文を読んで、受験生が技術士としてふさわしい専門的応用能力を身につけているかどうか判断していたわけです。

このことは、体験論文の記述項目に沿って、特定のテーマを論じれば、専門的応用能力を発揮できることを意味します。

先ほどの①~⑥までの6項目、「過去」、「現在」、「未来」の3つに分類できます。

   過去 = ①概要

現在 = ②立場と役割・③課題及び問題点・④技術的提案・⑤技術的成果

未来 = ⑥技術的評価及び今後の展望

 

そして、①~⑥を少しシンプルにすると以下のような3つの構成になり、これが「前文・主文・末文」になるわけです。

   前文 = 概要

主文 = 課題と対策

末文 = 今後の展望

 

「前文」は、出題されたテーマやキーワードの内容を簡潔に説明します。そのテーマがクローズアップされている背景についても説明します。「主文」は、メインです。そのテーマが抱える課題と課題を解消するための技術的な対策を提案します。「末文」は、将来的な展望を述べます。

これが技術士記述試験の解答における基本フォーマットになります

 

●情報の体系化で解答を作成することができる

「前文」で概要、「主文」で課題と対策を書くことを推奨しましたが、概要→課題→対策の展開ってどこかで見たことありませんか?

6.5情報を整理する目的で説明した整理項目を思い出してみてください。「現状・課題・対策」というのがありました。これって概要→課題→対策ですよね。

つまりです、「現状・課題・対策」の内容を文章化すれば、解答の「前文」と「主文」が完成するわけです。

さらにです。6.6 情報整理の応用編の「WHY思想」を思い出してください。5回WHYという自問自答を繰り返した後、最後のHOWに答えるというものです。最後のHOWの答は、そのテーマを包括した幅広い視点で将来展望を述べてります。

つまりです。「WHY思想」で導き出した結果を文章化すれば、解答の「末文」が完成するわけです。

下図のように、情報の体系化で整理した情報を用いて「前文・主文・末文」で文章を作れば、技術士記述試験の解答の基本フォーマットが完成するわけです。

 

 

 

 

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