和7年度 上水道及び工業用水道Ⅲ-2【水道施設の維持管理におけるDX推進】
【問題】
令和7年1月28日に発生した埼玉県八潮市の大規模な道路陥没事故や、その後に全国各地で発生した水道管の漏水事故を受けて、上下水道施設の老朽化対策が改めて注目されている。これに対して、国は令和7年2月20日のデジタル行財政改革会議において、人手不足への対応等の観点から上下水道DXの推進について議論しており、DX技術を用いた上下水道施設に対する適切な点検・維持管理が望まれている。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1) コンクリート構造物・埋設管路といった水道施設に対する点検・維持管理を実施するうえで、技術者としての立場で、多面的な観点から技術課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対するDX技術を用いた複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3) 前問(2)で示した解決策を実行することで新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
【解答例】
1 水道施設の点検・維持管理に関する課題
(1)技術者の減少への対応
少子化による人口減少、ベテラン技術者の高齢化により現場の担い手が減少し、水道施設の点検・維持管理の質の低下が懸念されている。こうした観点から、水道施設の点検、保守、清掃、調査、運転管理等の維持管理の省力化を進めることが課題となっている。
(2)水道施設の老朽化への対応
水道施設の老朽化が進むことにより、全国各地で管路の漏水や道路陥没、広域断水等の事故が発生している。こうした観点から、水道施設の点検・調査の高度化を図り、情報の収集、蓄積、分析を行い、その結果を更新計画に反映することが課題となっている。
(3) 頻発化・激甚化する自然災害への対応
地球温暖化に起因する気候変動により、豪雨災害が頻発化・激甚化し、取水場の浸水、配水池の法面崩壊、水管橋の損壊等の事故が発生している。こうした観点から、水道施設の遠方監視制御、被災地での迅速な点検等、災害の早期復旧に資する危機管理体制を確立することが課題となっている。
2 最重要課題に関する解決策
前述のうち、技術者の減少への対応は、水道事業体だけではなく民間企業においても喫緊の課題であり、DXの推進が有効な手段であることから、これを最重要課題と位置付けその解決策を示す。
(1)管路の点検・維持管理におけるDX推進
送配水施設の管路において、流量計、水圧計、漏水センサーを設置する。これにより、点検の省力化を図るとともに、管路の流量、圧力、漏水音を常時監視で、管路の漏水、ポンプ設備や減圧弁の故障等を自動的に検知し、事故の早期復旧を行う。また、給水装置においてスマート水道メーターを設置し、戸別の給水量データを蓄積・分析することにより、管路の漏水調査等の効率化を図る。
埋設管路の点検において、人工衛星とAIを活用した漏水調査を行う。人工衛星から照射した電磁波と管路に関するデータを解析することで、漏水の可能性が高い地域を特定し、現地での路面音聴装置等による漏水調査の省力化を図る。広いエリアを対象にした漏水調査が可能であり、近隣事業体が共同で実施することにより維持管理費を縮減できる。
水管橋、添架管等の露出管路の点検において、ドローンを活用する。ドローンを遠隔操作し、管路を撮影した画像を確認・解析することにより、目視確認が困難な場所における点検の効率化を図る。
(2)構造物の点検・維持管理におけるDX推進
配水池等のコンクリート構造物において水中ロボットや水中ドローンによる清掃・点検を実施する。水中ロボットで底盤の堆積物を除去し、水中ドローンで内壁のクラック調査を行うことにより、点検の効率化を図る。とりわけ1池構造の配水池は、バイパス配管を使用せず不断水で清掃・点検を実施するため、作業時間の短縮とバルブ操作に伴う赤水や濁水の発生を防止することができる。
また、基幹浄水場において、中央監視制御装置に標準的なプラットフォームを採用し、データの連携性・拡張性を確保した上で、システムを高度化する。これにより、複数の取水場、浄水場、配水池及び送配水管に関する各種データを集中的に管理し、維持管理の効率化を図るとともに、浄水場の運転管理の省力化や無人化を実現する。
3 新たに生じるリスクと対策
前述の解決策により、水道施設の維持管理の省力化を図ることができる。
一方で、デジタル技術には、システム障害や通信障害、不正プログラムの侵入、不正アクセス等により、水道施設の機能停止や誤作動、データの改ざん・漏洩といった潜在的なリスクが存在する。
このため、システムの脆弱性を定期的に調査し、セキュリティ対策を適切に実施するとともに、重要機器の分散配置や多重化が必要である。
また、こうした一連の取組みをPDCAサイクルにより継続的に改善するとともに、DX推進と並行して広域連携、官民連携を進めることにより、効率的・効果的な事業運営を行う必要がある。
【出題された背景や狙い・解答に繋がるポイント】
この問題のリード文は、「デジタル行財政改革会議」について言及しています。この会議は、令和5年10月の閣議決定により立ち上げられたもので、デジタル技術を活用した公共サービスの維持・強化を通じて社会変革を実現することを目的としています。同会議は年4回程度開催されており、第9回(令和7年2月20日開催)では、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を踏まえ、上下水道インフラの老朽化に対応するため全国自治体でのDX技術実装の加速化することを明言しました。また、国土交通省は令和6年12月、関係省庁、地方公共団体及び学識者等で構成される「上下水道DX推進検討会」を設置しました。この検討会では、持続可能な上下水道システム構築に向け、上下水道DXの方向性及び取組みとして、①業務の共通化、②情報整備・管理の標準化、③DX技術の普及促進、④現状可視化を掲げ、令和7年6月に最終とりまとめを公表しました(図1、図2参照)。このように近年、国が積極的にDXを推進していることが当該テーマの出題された背景になっています。
問題文(2)は、水道施設の点検・維持管理における課題をデジタル技術によりどのように解決するか問うものです。「上下水道DX推進検討会」の最終とりまとめでは、上下水道施設のメンテナンスの高度化・効率化に資する技術として、人工衛星を使った漏水調査、ドローンによる施設点検等が示されています。こうした技術を具体的に説明することが、解答を作成する際のポイントになります
【当該テーマについて上記以外で勉強するべき事柄】
DX推進に関する試験問題は、令和4年度の必須科目で「DXの活用に関する課題と解決策」、令和5年度の選択科目Ⅱ-1で「スマート水道メーターの利活用方法」が出題されています。当該テーマについて勉強する場合は、これら解答作成に必要な情報を収集・整理しておけばよいでしょう。
DX推進は、事業の基盤強化を実現する上で必要不可欠な取組であることから、今後の試験対策としては、事業の基盤強化に着目し、「適切な資産管理」、「広域連携」、「官民連携」を体系的に説明できるよう内容を整理しておくと良いでしょう。特に、「適切な資産管理」については、単独のテーマとして出題された実績がないことから、重点的に勉強することをお勧めします。具体的には、①水道施設の維持・修繕、②水道施設台帳の作成・管理、③水道施設の計画的な更新、④事業に係る収支見通しの作成・公表について内容を整理しておくとよいでしょう。
【参考資料】
・デジタル行財政改革取りまとめ2025(令和7年6月13日 デジタル行財政改革会議)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/pdf/torimatome_honbun2025.pdf
・最終とりまとめ(令和7年6月6日 上下水道DX推進検討会)
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001893223.pdf
・上下水道DX 技術カタログ(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply_sewerage/jyouge_dx/index.html
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