【6月】とにかく「がんばらない」ことが大事な6月 | 場面かんもく相談室「いちりづか」

場面かんもく相談室「いちりづか」

場面緘黙専門のオンライン相談室

「6月は冬眠」

くらいのつもりでもいい。

 

 「話す練習」も大事ですが・・・ 

6月は1学期の折り返し地点。

4、5月とは違い「6月だからこれ!」というのはありません。

 

もちろん「話す練習」が進んでいたら、PDCAサイクルで見直す時期ではあります。

 

でもそれ以上に大事なのは「元気に過ごすこと」

長い6月をしっかり乗り切って、夏休みまで持ちこたえましょう。

 

 6月がしんどい理由 

新年度になって4月から頑張って学校に通っていても、この時期に息切れする子は多いです。

それにはちゃんと理由があります。

 

まずは誰もが知っているとおり、6月は祝日がありません。

有給休暇がとれる大人と違い、子どもは「疲れた」と言ってもなかなか休ませてもらえません

(休んではいけないという法律はないのですが、誰もが休むべきでないと思っているため)

 

気候の影響も大きいです。

気温が高くなり、湿度も高くなります。

梅雨に入れば雨が続きます。

大気が不安定になると気圧の変化が起きやすく、苦手な子はこれだけでももうダメです。

嗅覚に過敏のある子にとっては、学校の「におい」も苦手です。

(こういった感覚の問題は、大丈夫な人にとってはなかなか気付きづらいものです)

 

学校の学習活動も本格化してきます。

中でも、緘黙症状のある子の多くが苦手とする「プール」

学校によってはここに「運動会」をもってくるところもあります。

運動会は集団行動が強制され、先生も普段より厳しくなります。

宿泊学習などの学校行事もあったりします。

行事があればスケジュールが変則的になり、見通しが持ちにくくなります。

不安の強い子には「普段と違うこと」だけでも大きなストレスなのです。

 

ですので、ここはとにかく無理しない、がんばりすぎないことが大事です。

安定して学校に通えていれば、それだけでもう十分だと考えましょう。

あたかも「冬眠」のように、活動量を減らして、必要最低限のことをやっていけばよいのです。

 

私の好きなことば。

「無事之名馬」(ぶじこれめいば)

 

 ダメになるまで頑張らせてはいけない 

日本の学校教育では一般的に、不安症や抑うつのような精神疾患への理解が足りません。

 

心身の不調を訴えて登校を渋っている子を、叱咤激励して学校に行かせようとしてしまいます。

子どもが「これ以上ダメ」という明らかなメッセージを出しても、なかなか大人に届きません。

これは「うつは甘え」と言っているのと同じ発想です。

 

「頑張れるところまで頑張ってみようよ」

 

その結果、本当にダメになるまで頑張らせてしまいます

そして、ダメになってから慌てて対応するのです。

 

ですので、そうなる前にしっかり予防的な対応をしましょう。

 

日本の学校教育は、少しくらい「苦手」「辛い」と言っても休ませてもらえません。

個人的には、子どもも年に10日くらいは自主的に休める日を作ってもいいと思ってます。

大人の有給休暇と同じです。
金曜日に学校を休んで連休にして、ディズニーランドに行けばいいんです。

(そして労働基準監督署が各校を回って「子どもにちゃんと休ませてますか」と確認する)

 

でもそれをするのは保護者にとっても勇気がいることです。

ですのでもっと現実的な対応を説明します。

 

 「個別の指導計画」「合理的配慮」で予防する 

緘黙症状や感覚過敏のある子がどうしても苦手な活動は、どう対応したらよいでしょう。

 

「○○の活動は苦手だから代わりの方法をお願いします」

とお願いしても、なかなか学校に個別的な対応をしてもらえません。

 

そこで大事なのは「計画的にやること」です。

担任の先生に立ち話的にお願いするのではなく、しっかり計画を立てて合意を形成しましょう

 

そのための方法は2つあります。

・「個別の指導計画」に対応を明記する

・「合理的配慮」を学校に申請する

 

1つ目の「個別の指導計画」は、特別支援教育の対象になっている子限定の方法です。

(詳しくはこちらなど、関連する記事をご覧下さい)

 

2つ目の「合理的配慮」は、特別支援学級等の利用の有無に関わらず、誰でもできます。

合理的配慮については、このブログでまだ解説を書いていませんでした。

外部ページですがこちらで場面緘黙の症状がある子への合理的配慮について解説してあります。

 

個別の指導計画や合理的配慮に明記されたことなら、学校側は必ず遵守してくれます。

行き当たりばったりでやるのではなく、事前に学校としっかり連携して、計画を立てましょう。

 

 例)「プールに入れない」という子への合理的配慮 

緘黙症状のある子で、「プールが苦手」という子は多いです。

こういう場合の対応について考えてみましょう。

 

※もちろんプールが好きな子もいますので、全員がそうという訳ではありません。

(何でもそうです)

 

プールに入れない理由は人それぞれです。

・人前で着替えができない

・水着を着たくない

・見られるのが嫌

・水の感覚が苦手

・消毒の匂いがダメ など。

 

ワガママや甘えではなく、障害や疾患の特性により「できない」のです。

このようなケースではどのような「合理的配慮」ができるでしょうか。

 

こういう時によくやる学校側の対応は「プールに入れなければ見学でもいいですよ」

プールの時間は、着替えないでプールサイドで見学。

6、7月のプールの時間はずっと見学。

 

これは、はっきり言って「ダメな対応」です。

なぜなら教育効果が0だからです。

熱中症になってしまう子もいます(これはかなり「場面緘黙あるある」です)。

 

そこで、その時間をもっと有意義な「学習活動」に使う方法を考えましょう。

特別支援学級を利用している子なら、別の学習活動を行う方がよいでしょう。

これは立派な合理的配慮と言えます。

教室で黙々と漢字ドリルをするのだって、プールサイドで見学しているよりはマシです。

 

私のお勧めは「図書室で自習」です。

もちろん学校なので、誰かが見ていないといけませんから、できないこともあります。

学校の先生はヒマではありません。

ですので図書室ではなく保健室でも校長室でも、どこでも構いません。

学校側にとって「実施に伴う負担が過重でない」方法を考えましょう。

 

そしてこれを、個別の指導計画や合理的配慮の合意事項として、文書で残しておきます。

このようにして、できないことや苦手なこと、過度な負担を1つずつ解消していきましょう。

 

とにかくがんばりすぎずに長い6月を何とか乗り切ること。

あと35回くらい学校に行けば夏休み。