たとえ話をしよう。
あるところにワインショップがあった。
建物もちょっとこじゃれた石造りの建物で、
ワインの品揃えも海外から直輸入したオンリーワンで、
店員の知識も接客技術も笑顔も問題なく、
むしろ素晴らしいものがあった。
そんな店。
オープンして半年程度はそこそこ繁盛したものの、
一年やそこらで客足は途絶えた。
来てくれるのは
「やはり、ここのワインは最高だね。」
「ここは皆さんが素晴らしいからいつも信頼してくるよ」
といった常連さん。
しかし、それだけでは経営もできないし、
何よりこんなにもおいしいワインを食卓に並べて欲しかったし、
来店してうちの素晴らしい店員の話を聞いて欲しい、とオーナーは考えていた。
そこでオーナーはチラシを作り、ホームページでもお店を宣伝し始めた。
置いているワインの品揃えもさらに厳選し、
店員のサービスレベルもさらに研修を重ね最高のものを目指し、
みんなで汗水たらして夜遅くまで店の配列も考えた。
時には常連さんからの意見を聞くべく晩さん会まで開いて意見交換した。
それは素晴らしい時間だった。
そして、お客様も増えて常連さんも増えた。
結果が出たのだ。
でも、
それはたったの4,5名ほどだった。
ある日大通りの向こう側にレストラン兼ワインショップがオープンした。
店はショッピングセンターの一角だったし、
店員もアルバイトで知識もなく、
置いてあるワインはどこでも買えるものばかりだった。
正直ワイン屋を語って欲しくないレベル。
オーナーは危機感ではなく、憤りを感じた。
馬鹿にしやがって。
ところが、数日後その店は大盛況。
店は常に笑顔のお客様であふれていたし、
近所の食卓にはそこで買ったどこでも買えるはずのワインボトルばかりが並ぶようになった。
オーナーは茫然とした。
いろんな人たちが笑顔でワインを飲んでいる。
満足している。
それこそが自分の求めたものだったはずなのに。
オーナーはフラフラとその店の店員に聞いた。
「あなたたちはどうやってワインの良さを伝えたんですか?」
「そうですね。特に難しいことは言っていません。なにしろボクら知識がないもので」
「でも、あんなに嬉しそうにみんなワインを買っていってるじゃありませんか」
「ああ。ボクらはいつも言ってこう言っています。『ワインはコップで飲んでも全然いいんですよ』って」
あなたはオーナーと同じことしていませんか?
あなたは何かのファンとして常連さんと同じことしていませんか?
それはそれで必要なことです。
それもありです。
でも、ボクはこの話のオーナーが悲しい顔をしている気がしてなりません。
ボクはこのオーナーに笑顔になって欲しい。
だから、ボクはどのグラスで飲むかなんてまずはどうでもいい、そう思うのです。
皆さんはどう考えますか?


