電車から降りると眼鏡が曇る。
この時期になると思い出すのは、町田洋さんの「惑星9の休日」だ。その画の線の少なさは、あふれる光を連想させる。
夏は好きだ。
明るい光は……
潮風の香りにたまらず、海へ飛び出していったことや、
歳の離れた従姉妹たちに連れていってもらった、山の上にあったプールや、
自転車がブームになる遙か以前に、自分の給料で初めて買った本格的な自転車で、友人と山奥を走ったことや、
そんなものを連れてくる。
「砂の都」という作品では、記憶でできた都が砂漠を流れていく。明るい光であふれた砂漠を。
惑星9は義理の弟にやってしまった。
砂の都は珍しく何度か読んで売った。
シーブリーズを一本買った。
いつも、それがなくなる頃に夏は終わる。
