友達もいない街。
家族からも疎外された私。
大好きだったK先生からも迷惑な存在にしかなれなかった私。

もうここにいる理由なんて無かった。
家族が寝静まっている午前4時を出発の時に決めた。
徹夜でその時を待った。
母親の財布から最後のお金を抜いた。
私を警戒している母親の財布にはもう一万円しか入っていなかった。

一万円と携帯と3日分程度の着替えを持って家を出た。
自転車を使えば駅までは僅かな距離だが丁度始発が出る頃だろうと思って歩いて行った。

駅に着くと丁度始発が出る頃だった。
2960円分の切符を買った。
特急券は買えそうにないから各駅停車に乗る。
大きな街に向かえば何とかなると思っていた。
行くあての無い私には各駅停車で時間を潰すにはまだまだ足りないくらいだった。

TVなんかで見たことは有るけれど行ったことが無い大きな街に着いた。
時刻はもう昼に近かった。
大きな繁華街を歩いた。
以前に利用した事があるのと同じチェーン店のネットカフェがあった。
とりあえずそこへ入った。
ネットカフェは年齢確認の身分証明が必要で私の年齢では夜までには退室しなければならなかった。
ホテルも私の年齢では泊めてはもらえないだろう。
カップラーメンを食べながらPCを開いて住み込みの仕事を探した。
要自動車運転免許とか資格が必要なところは削除して16才~可という文字を見つけては片っ端から電話して面接希望を伝えた。
けれど保証人が必要だとか両親の連絡先が必要だとかで面接すら取り合ってくれないところばかりだった。
私は自分自身の無力さを思い知らされる結果となり、結局何の対策も取れないまま退室の時間をむかえてしまった。

夜の繁華街を彷徨う事になった。
まだ塾へ通う学生が行き交う時間帯は大丈夫だったけれど、深夜に近づくにつれ大人しか歩かない時間に突入すると通行人からジロジロ見られる様になるくらい私は浮いてしまう存在になり、繁華街には居られなくなってきた。

自販機でジュースを買い公園へ行った。
繁華街に近い公園だったからカップルとか犬を連れた人とかが歩いていて人通りはあるのだけれど、公園は暗くて何だかだんだん怖くなってきた。
中学生の頃の友達を頼ろうかとも考えだけれど友達の親がうちの親に連絡をしてすぐに連れ戻される展開が見えたのでやめた。
ここにも長くはいられない。

深夜1時頃、また私は繁華街を歩いていてた。
ビルとビルの間に人が一人通れるくらいの隙間があった。
そこへ入ると奥の方にはふたが付いたゴミ箱が並んでいて、ここなら誰かに見つからずに過ごせそうな気がした。
もう昨日から徹夜で彷徨っていた私は疲れてしまい着替えを入れていたバッグの上に体育座りをしてひざに顔を埋める状態でうとうとしていた。

そう言えば家を出てからK先生の事を思い出したりもしなかったなって気がついた。
人間て生活に切羽詰まると恋愛の悩みも吹っ飛ぶんだななんて考えて、ちょっと可笑しくなった。

とにかく疲れきっていて私はこの辺りから記憶が飛んだみたいに眠りに落ちていた。