本日は紀行です。
令和6年3月8日(金)、3月9日(土)の二日間。
東京へは飛行機で。
まずは車で高松空港まで。
まあ、当初は自分で車を運転して行こうと思っていたのだが、なんと今回は空港まで父母が車で送り迎えしてくれることに。
空港まで行くことで父母もちょっとした旅行気分を味わいたかったみたい。
で、私を送った後も、喫茶店なんかに寄ってモーニングを食べたりと、ついで遊びを楽しんだ模様である。
なにはともあれ、ありがたいことで、おかげで駐車場代が丸々浮いた。
飛行機は高松空港、7時25分発、ANA。
なので5時半頃、家を出発。
平日だが週末にかかる金曜日の朝のためか、空港は思ったより混雑していた。
天気は小雨。
機体はB787、9列シートの大きな旅客機だ。
普段は国際線に使用している機体らしい。
離陸も着陸もとても滑らかで、実に見事な操縦だった。
この日、関東には南岸低気圧がかかっていたため、着陸態勢に入った時揺れるとの情報だったが、実際にはさして揺れなかったし。
この辺りの手際も見事だったなあ。
羽田空港からは、今宵の宿のある東銀座まで京急で。
都営浅草線に直通している電車。
東銀座で降りて、宿に荷物を預けた後、浅草へ。
まずは浅草寺でお参り。
しかし浅草は相変わらず凄い賑わい。
生き生きとした魅力に溢れている。
外国人も多いし。
で、ちょうど昼頃になってお腹が空いてきたので、月島もんじゃ「おこげ」さんというところに立ち寄る。
明太子もんじゃにチーズをトッピングしたのを注文。
1800円。
店内は白木が美しいインテリア。
スタッフが焼いてくれたのを持ってきてくれて食べるのかと思っていたら、なんと目の前の鉄板で焼いてくれるのだった。
10分ほどで焼き上がるが、その手際は見事。
喋りながらの仕事は立派である。
焼き上がって一口食べてみるとこれが美味しい。
明太とチーズと、後、ベースの出汁は何だろう。
とにかく味の焦点がぼやけてない。
そして熱い鉄板の上で焼けていくにしたがって微妙に味変してゆくのも面白い。
量も満足のいく量で。
美味しい昼食、ごちそうさまでした。
が、なんといっても、このもんじゃ焼きの店の特長は若い人がイキイキと働いているところだろう。
今回私は、そんな店で買う側、楽しむ側、口幅ったい言い方になるが支援する側に回っていたわけだが、かつては私も向こう側にいた人間だなと思うと感無量に。
まあ今でも働いている時は、あの若者たちと同じ側に立っている人間なんだけどね。
でも、若さいっぱいに熱心に働く彼らを見ていると、ああこうやって年を重ねるに従って人は立場を変えてゆき、かつての若者は中年になりはたまた年寄りとなって、そうやって世の中は回ってゆくのだなと、そんなことを感じて感慨も一入だった。
その後、本日の浅草訪問のメインである、帯専門店「帯源」さんを訪れる。
ここには名物「鬼献上」という帯がある。
細身で芯が入っていて硬くてよく締まるという帯。
そのため、古典芸能の愛好家やプロに絶大な人気を誇っているそうで(腹から声を出すのにかなりいいらしい)、東京の噺家さんのほとんどが使っているという隠れた名作帯なのだ。
店では帯のことなどを色々聞きながら、一方で今を生きる伝統の継承の難しさや伝統工芸の跡継ぎの不在など、着物業界にまつわるあれこれを店主さんと話し込んだ。
で、鬼献上の緑色のを一本注文。
一ヶ月ほどで出来るという。
楽しみだな。
再び銀座に戻り、しばし散策。
15時過ぎ、ホテルにチェックイン。
ドーミーインプレミアム銀座。
出来て間もないため建物が新しい。
ご覧の通り玄関がすっきりと美しく、ある意味ホテルらしくない高級マンションのような造りである。
こりゃ期待できるな。
シングルルームは東京のホテルにしてはかなり広い。
ベッドも大きいし。
そしてここの売りはなんといっても大浴場。
従業員さんによると天然温泉の湯を運んできて浴槽に入れているという。
その風呂は15時から翌朝10時まで入りたい放題。
他にも夜泣きそばのサービスや湯上りのアイスクリームサービスなど無料のサービスが充実。
部屋もきれいでスタッフも親切。
朝、預けていた荷物は部屋まで届けていてくれた。
感謝。
夕食は銀座の洋食の店「スイス」さんで。
ディナーセットを注文。
サラダにスープ、カニクリームコロッケ、カツカレーのオーダー。
夜はワンドリンクオーダーをということだったので生中も注文。
ちょっと早目に店に入ったので、料理はすぐ出て来た。
サラダ、スープときて、カニクリームコロッケの登場。
まずは一口。
旨いっ。
サラサラでありながら、キラキラとしたコクのある良い油を使っている感じと言えば分かるだろうか。
実に心地よい油感とサクサクの衣。
そこにクリームコロッケの濃厚が絡んで。
そしてカツカレー。
なんとこの店はカツカレー発祥の地らしい。
その本場のカレーはカレールーの味の深みが半端ない。
もちろんカツも絶品。
ああ、幸せ。
追加で赤ワインも注文して。
そしてホテルに戻って、大浴場に。
お湯は限りなく黒に近いチョコレート色。
なんでも千葉県の天然温泉からお湯を持ってきているみたい。
浴場の更衣室のロッカーはコインの要らないカギ式。
風呂に入ったのも時間が早かったせいか、独り占めの状態でとてもゆっくりできた。
ホテルの館内は寝間着とスリッパのまま移動できる。
これも嬉しいところ。
そして風呂上りのアイスを頂いた後、部屋に戻る。
寝心地のいい大きなベッドでぐっすり眠る快楽。
幸せだなあ。
明けて翌朝、ホテルの朝食。
朝食はバイキング形式。
品数も多く高級感があり味もいい。
朝食には珍しい刺身なんかもある。
後はからあげ、エビフライなんかも。
野菜類も充実していて。
味噌汁や納豆、梅干しもある。
食べて元気の出る美味しい朝食。
さて、この日3月9日、土曜日は今回の旅の最大の目的地である呉服屋「銀座もとじ」さんへ。
11時開店だが、その1時間前から、辻が花の大家、小倉淳史先生のギャラリートークがあるという。
店の人から事前に話を聞いていて参加を申し込んでいた筆者である。
辻が花とは応仁の乱の後から江戸時代に入る前まで約260年ほど全盛を誇った絞り染めの技法のことだそう。
しかし江戸時代に友禅が登場して以降はぷっつりとその伝統は途絶えたという。
簡単に着物に絵を描ける友禅が出るまで、絵付けの着物の代表格として辻が花はあったらしい。
しかし筆で絵を描く友禅と違って、絞り染めで絵を描く辻が花は、とても難しく手間がかかるという。
小倉淳史先生はそんな幻の技法を現代に甦らせた方。
小倉淳史先生の父親で染色家でもあった先代からその技を受け継いだという。
先生の話は辻が花の歴史や名前の由来から始まって、具体的な技法の解説、作品の紹介、みどころなどへと進む。
しかし、聞けば聞くほど辻が花の技法の高度なことに驚かされる。
最終的な染め上がりを計算して糸で布を縛る作業は数学的でさえあり、まるでパズルや詰碁、詰将棋のような緻密な作業である。
後、出来上がった作品から縛っていた糸を切る作業がまた大変らしく、間違って糸と一緒に布を切ってしまうことがしばしばあるそう。
そのため、弟子に教える時は布を一緒にハサミで切ってしまう時の感触をまず手に覚えさせるという。
ちょっとした感覚の違いなんだそうだが、それをまず覚え込ませるところから修行は始まるらしい。
まあ職人の世界というものは誠に厳しいものである。
作品解説では、橘をあしらった女物の着物を紹介されていた。
淡い黄色の地色がなんともいえず上品で。
そこに橘を辻が花で染め抜いてある。
その得も言われぬ雅にうっとりすることしばし。
いかにも京都の作家さんらしい。
ギャラリートークの後は、昼食を挟んで着物を注文。
店で色々反物を見せてもらったり試着したりしながら、至福のひとときを過ごした。
まさか銀座でこんな買い物ができるなんてね。
20代の頃は想像もつかなかった。
こんなどうしようもない私を、ここまでにしてくれた周囲の皆さんに改めて感謝。
だから皆さんも今、苦しいからといって人生簡単に諦めちゃダメですよ。
10年20年辛抱していたら、思いもかけぬ扉が向こうから開いてくるもんなんですから。
そして羽田空港に向かい、帰りの飛行機に乗って無事帰宅。
とても充実したいい旅でした。
安全運行に務めてくれたANAの皆さんに感謝。
同じく高松空港、及び羽田空港の皆さんに感謝。
美味しい昼食の月島もんじゃ、おこげさんに感謝。
最高の帯、浅草帯源さんに感謝。
粋な銀座の洋食、スイスさんに感謝。
至福のひととき、大浴場と大きなベッド、美味しい朝食のドーミーインプレミアム銀座さんに感謝。
貴重なお話、小倉淳史先生に感謝。
素敵な着物体験、銀座もとじさんに感謝。
その他、今回の旅でお世話になった皆さん方に感謝。
そして今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。