本日は落語鑑賞記です。

 

 

落語会は高松であるのでまずは電車で高松へ。

久しぶりに乗車するが、電車代がかなり値上がりしていてびっくり。

まあ車社会の地方の宿命か。

鉄道を利用する人が減る→利用料金が上がる→その結果ますます利用する人が減る、の悪循環。

 

 

しかし環境問題のためには鉄道の利用促進は必須。

何とかならないものだろうか。

 

 

9時50分発の快速サンポート号。

30分ちょいで高松に着く。

速い。

こういう鉄道のちょっとした良さ、どうしたら皆さんに伝わってゆくだろうか。

 

 

高松駅から三越に移動。

昼飯は高松三越6階のレストランで。

メニューは色々と迷ったのだが、ナポリタンにライスを付けて注文。

また、電車で来ているので調子に乗って白ワインもお願いした。

 

 

美味いモン食って、軽く一杯ひっかけて、〆に落語を聴く。

最高の展開である。

お料理は十分ほどで出てくる。

 

 

ナポリタン。

旨いっ。

麺の茹で加減はグダグダではないものの、通常のアルデンテよりは柔らかく茹でてある印象。

ソースはケチャップ感が濃くて、でも何だかそれがとても美味なのである。

 

 

コク、深み、酸味の加減がバツグン。

王道を踏襲しつつ、程よい現代感がある。

正にこういうのが食べたかったというような味。

ごちそうさまでした。

 

 

その後、喫茶店に入って時間を潰して、13時半過ぎ会場入り。

すでに大勢の人でにぎわっている。

「柳家喬太郎独演会」、令和6年2月18日(日)、香川県県民ホール・小ホール、全席指定一般3900円、13時15分開場、14時開演。

 

 

それではここで柳家喬太郎さんのプロフィールを簡単に紹介。

1963年、東京生まれ。

1989年、柳家さん喬に入門。

1998年、NHK新人演芸大賞受賞。

2000年、真打昇進。

2006年、文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。

2014年、落語協会理事に就任。

 

 

開場はほぼ満員。

筆者の席は右側の前目。

かなりの良席だ。

感謝。

開演5分前になると寄席囃子が場内に。

粋だねえ。

 

 

トップバッターは喬太郎師匠の弟弟子という、柳家やなぎさんから。

まくらで軽く地元ネタなんかを織り交ぜながら。

やがて本題に入る。

新作落語だろうか。

高校を卒業して東京へ出て行く女の子の噺。

 

 

母親との切ない別れの後、恋人との別れに入るのだが、なんと別れを言いに来たのは彼氏本人ではなく代行役だという見知らぬオジサン。

そのオジサンとのやり取りで笑わせて行く噺。

しかしその大切な別れの時に代行を頼んでしまうという彼氏がまた、とんでもないダメ男で。

そのダメっぷりがやがてサゲへと繋がってゆくのだが。

 

 

やなぎさんはその落語をよく演じてくれていて面白かった。

ただ一つ気になった点は主人公の女性の描写。

後で出てくる喬太郎師匠の女性描写の妙と比べると明らかに質が落ちているのが分かった。

そこだけは残念だったのだが、しかし全体としては充分に楽しめた。

古典だけじゃない新作落語の面白さに改めて目を見張らされた一席。

 

 

そして喬太郎師匠の登場。

まくらでは学校への出前公演の苦労話など。

笑いに来ている寄席のお客さんと違って、落語に全く興味のない生徒を相手にする苦労を面白おかしく。

実にひょうひょうとした味わい。

そしてベテランらしい自由。

 

 

本題の噺は、昼寝の際に見た夢の中で会った絶世の美女にまつわる噺。

その美女と夢の中でコトの寸前まで行くのだが、そこで女房に起こされる男。

師匠の女性表現の巧みさに舌を巻く。

とにかく上手い。

後、一度話した筋をもう一回たどる時、本題の話を一切せずに相槌だけで筋を見せて行ったりする、その様も見事だった。

さすがの芸。

 

 

江戸の噺家さんらしい深みとコク。

随所に挟まれる笑いの部分と純粋に聴かせる部分との対比の巧みさ。

眠りに入ってゆく男の表現におけるたっぷりとした間の絶妙さ加減。

いやあ、落語会前半だけでこの出来ですぜ。

 

 

15分の休憩後、後半。

後半最初は紙切りの芸から。

林家二楽さん。

この紙切りの芸、すごいのは紙を切っている間、ずっと身体を動かしながら喋りながら切って行くこと。

見ていると紙を切るのにけっこう時間がかかるのでその間、お客さんを飽きさせない工夫なのだろう。

 

 

しかし出来上がってくる作品の描写は、喋りながら切ったとは思えない精緻さ。

一体、この域まで到達するのにどのくらいの修練を要しただろう。

気が遠くなる思いがする。

また紙切りだけでなくトークも上手い。

 

 

それから、客席からのリクエストに答えて何でも切るというのもすごかった。

私の隣の席に座っていた人が、初音ミクを切って下さいとリクエストしていて、一体どんなのが出来上がるだろうかと思っていたら、まあ出来上がりを見てビックリ。

TV画面の中にツインテールの髪型の初音ミクが描き出されていて、そしてこちら側からはそのTVを眺めている人が。

ああ、こういう風に構成するのかと。

まさに、客の注文以上に一手間加えた期待を上回る出来であった。

 

 

そして本日のトリはやはりこの方、喬太郎師匠。

まくらは短めで、すぐに本題に入る。

舞台は江戸時代。

江戸の街を練り歩く屑屋。

屑を有料で買い取るという変わった商売。

その屑屋が、ある落ちぶれた侍の家で古い仏像を有料(とは言っても安価)で譲り受ける。

そこから始まるマジカルストーリー。

 

 

その仏像を別の侍(裕福な)が買って。

すると仏像の中から大金が出てくる。

それで元の売主にその大金もろとも返還しようとするのだが。

しかし双方受け取らず。

何よりも筋目、節度を重んずる男たちの熱い静かなやり取りに厳かな感動を覚える。

いかにも江戸らしい侍たちの男気溢れる人情噺。

大金を前にしても節度を失わない侍たちの心意気が素晴らしい。

 

 

さらにやり取りは続き、段々やり取りされる額とお宝が大きくなっていく。

落ちぶれたとはいえ、そこは当時の支配階級たる侍。

何気なく出してくる品物が実は相当なお宝だったりして。

その噺を喬太郎師匠は最初、柔らかく語りだして、そして次第にトーンを上げてゆく。

侍同士の語りの部分では重々しく威厳のある様を。

そして笑わせる場面では一転して人間の煩悩の様を面白おかしく。

 

 

また声を張るところと抑えるところのさじ加減が絶妙。

柔らかい語り口の中にコクとキレとメリハリがある。

そして口舌は全体に滑らかで耳に心地よく、時に応じて耳に刺さりもする。

まさしく江戸落語の至芸。

たっぷり堪能させてもらった二時間強。

柳家喬太郎師匠の落語、見て絶対に損はないです。

最高の時間でした。

 

 

安全運行に務めてくれたJR四国の皆さん方に感謝。

美味しい昼食の三越さんに感謝。

最高の落語、柳家喬太郎師匠に感謝。

前座の柳家やなぎさんに感謝。

至芸、紙切りの林家二楽さんに感謝。

香川県県民ホールさんに感謝。

その他、この日お世話になった皆さん方に感謝。

そして今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。