詩

 

   「死者の書」

 

長い長い旅路の末

不治の病

それでも家では明るくしてくれていた

 

久しぶりに戻る我が家

でも もう姿形はない

私はまるで透明人間

誰の目にも見えない

 

それでも煙と明かりと梅の匂いに誘われて

ここまでたどり着いたよ

 

お父さん お母さん ありがとう

私はとっても幸せでした

家に帰るといつも笑い声が絶えなくて

ひたひたと迫る死の足音も

ほんのひととき忘れることができた

 

またこうやって時々帰ってきます

もう肉体も目に見えるしるしも何もなくなってしまったけれど

 

ただいま お母さん

 

 

      和歌

 

新しい 朝の眼で見る 古ぼけた

機械油の なまめかしさよ

 

旋盤工場の朝を詠んでみました。

 

 

      俳句

 

おかしれえ 奴に会いたき 春の午後

 

 

本日も最後まで読んでくれてありがとうございます。