本日は落語鑑賞記です。

 

 

2023.4.23 (日) 「落語 林家たい平・桂宮治 二人会」、三豊市マリンウェーブ、全席指定3800円、13時開場、14時開演。

人気テレビ番組、笑点メンバーの二人、全国的な人気を誇るその二人が、今回どんな高座を見せてくれるのか楽しみだ。

 

13時過ぎ会場に着く。

駐車場は軒並み満車だったが、それでもまだ何とかとめられる場所はあった。

で、車を降りて会場入り口まで行くと完売御礼の文字が。

当日券の販売はなしとのこと。

さすが。

筆者が行くライブ会場で完売という文字を見たのは実に久しぶり。

 

入り口でチケット半券に名前と電話番号を書いて提出。

席は前列五列目の右の方。

上席だな。

 

14時、5分前から寄席囃子が館内に響く。

いいねえ。

その後、14時に定刻通り開演。

 

まずは前座から。

林家さく平さんと言ったか。

なんと、たい平さんの長男だそう。

まず、つかみでそのことに触れ、師匠である父よりイケメンだと言って笑いを取る。

その後、噺に入ってゆくのだが、今回やってくれた噺は「転失気」。

前座の人がよくやる噺だ。

 

物知りが自慢で、知ったかぶりの悪弊が抜けない気位の高い和尚さん。

その和尚さんが体調を崩して医者に診てもらう。

ところがその医者が診察の終わりに「テンシキ」はありますかと和尚さんに問う。

和尚さんその場はなんとか適当に胡麻化したものの、しかし本当はその「テンシキ」の意味がさっぱり分からない。

それで仕方なく小僧の珍念を呼び出して「テンシキ」の意味を探らせる。

 

ところが誰に聞いても分からない。

どころか皆「テンシキ」の本当の意味を知らずに色々と適当に取り繕って頓珍漢な会話を繰り広げる。

そんな大人たちの迷走ぶりを笑う噺。

 

ちなみにこの日聞いた、さく平さんの噺ではオチが「ヘでもない」になっていたが、以前聞いた噺では、「奈良・平安の」になっていたように思う。

まあ演者さんの工夫によって色々なパターンがあるのだろう。

 

その後、宮治さんが登場。

マクラの時間を長く取って、色々な話で笑わせてくれる。

学校訪問の落語会の難しさや刑務所慰問の落語会の緊張感溢れるやりとりなど、苦労話を面白おかしく。

後は、最近出版されたという自筆の本の話なども。

当意即妙の受け答えで器用に話す姿からは想像できないが、本来は引っ込み思案で人間関係が苦手なのだとか。

そういう人が噺家になって色々な出会いを糧にして今に至るという内容を書いてある本だそう。

 

噺は「番町皿屋敷」。

御存じ怪談ものの決定版。

それを落語にして面白おかしい噺に仕上げている。

でも一方では怪談らしく、低く抑えたトーンから本格的に不気味に話していく様はさすがの話芸。

そして十分怖がらせたその後でトーンが一段上がり、面白話へと転換してゆく。

そのトーンの上げ下げの絶妙感。

いやあさすがだなあ、やっぱり上手いわ。

あっぱれ、若手落語家の期待の星。

面目躍如の圧巻の高座。

 

15分の休憩後、後半へと。

 

後半最初は再び前座から。

たい平さんの一番弟子、林家あずみさん。

女の人だ。

三味線を持って舞台に出てくる。

一体何をやってくれるのかと思ったら、三味線漫談だそう。

 

噺家さんにとっての普段の仕事場である寄席の裏話などを中心に。

例えばこんな感じ。

林家ペー師匠と一緒の時、師匠がテレビに出ていたことを話題にして感想を述べると1000円くれるそう。

さらに師匠のツイッターに、いいねを押すと3000円くれるとか。

それで会う度に適当なことを言って金をもらうことに。

するとそこにいた師匠のたい平さんも列に並んで1000円もらいに来たとか。

あんだけ稼いでいてまだ目先の1000円が欲しいかとかなんとか。

ウソかホントか分からないこんな話で笑わせてくれる。

 

まあ、あずみさん、正直話芸はまだまだそれほど上手くはないのだが、三味線や歌はなかなかのものだった。

邦楽も生で聞くとやっぱりいいものだなあと。

 

そしてお待たせしました。

大トリのたい平さん。

 

たい平さんもマクラの時間をたっぷりとって笑点の裏話を存分にやってくれる。

例えば、小遊三師匠の宿泊ホテルはルームサービスがあるそうなのだが、そのルームサービスとやらはドアに付けられた小さな小窓からカツ丼が出てくるやつだとか。

また、コロナ禍でリモート笑点の時のこと。

居並ぶ師匠方のモニターに映る様が皆一様に着物姿で上半身だけの画だったそうで。

まるで遺影じゃないかとか、あはは。

さらには、故歌丸師匠が善光寺でタクシーに乗った時、大勢のファンが押し寄せてきてタクシーが見動きが取れなくなったそうで。

それでタクシーが警笛を鳴らしたのだが、その音が長いプアーンと言う音。

まるで葬式の時の霊柩車の発車音じゃねえかと、とほほ。

 

こんな風に爆笑エピソードがこれでもかというほど次から次へ。

その後、本格的な噺に入っていく。

噺の主人公は吉原の花魁。

その花魁に岡惚れして吉原に通い詰める田舎の金持ちの爺さん。

だが、野暮な客なので会いたくないとワガママをこねる花魁。

そこでなんとか会わずに済ますため、渾身の嘘をつくのだが。

 

ところが嘘をつけばつくほど、事態は深みへとはまって行く。

最後は花魁が死んだことになって、花魁恋しの爺さんが有りもしない花魁の墓参りに行くことに。

そんな風に段々嘘がエスカレートしてゆく様を、たい平さんが文字通りの熱演。

口跡は鮮やかで微塵も淀みがない。

そして嘘が嘘を呼ぶことで生じてくる圧倒的な笑いの渦。

その緊張と緩和の華麗なる対比。

いやあ、見事なもんだねえ。

さすが。

 

しかし宮治さんもたい平さんもほんと噺が上手。

たっぷりと笑わせてもらった二時間強。

落語って本当にいいもんですな。

 

 

最高の噺を聞かせてくれた林家たい平さん、桂宮治さんに感謝。

前座で場を暖めてくれた、林家さく平さん、林家あずみさんに感謝。

最高のひと時を演出してくれた三豊市マリンウェーブさんに感謝。

その他、関係者の皆さん方に感謝。

今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。