本日は展覧会レビューです。

 

 

2021.2.27 (土)。

まずは車で高松へ。

展覧会の前に腹ごしらえを。

今日の昼食は、高松兵庫町にある老舗喫茶店「皇帝」。

タイムランチ、890円。

メニューは、から揚げ、焼肉、しょうが焼き、ハンバーグ、とんかつなど十種類ほどから選べる。

他にスパゲティやカレー、ピラフも。

いずれもワンドリンク付。

 

 

筆者はハンバーグ定食を注文。

店内は外から見るよりはるかに広く、うっすらと暗く落ち着いた雰囲気。

昔ながらの喫茶店の風格を感じる。

椅子なども使い古されてはいるが座り心地はいい。

ただ、最近では珍しく喫煙OKの店なのでタバコが苦手な方は要注意。

 

 

十分ほどでお料理が出てくる。

重箱に入った弁当風のしつらえ。

ハンバーグは三種類のトッピングの内、チーズを選択した。

まずは一口。

美味なるソースとチーズとひき肉が絡まって濃厚な旨味が口いっぱいに広がる。

絶品だね、旨いじゃない。

付け合わせのサラダのドレッシングの味もいい。

 

 

これでコーヒーも付いてくる。

喫茶店なのでコーヒーはもちろん美味しい。

少し苦みの勝った味。

美味しい昼食をありがとう。

 

 

そして展覧会。

「野口哲哉展 - THIS IS NOT A SAMURAI」、高松市美術館、会期 2021.2.26 (土) から 3.21 (日) まで、月曜休館、開館時間 九時半から十七時 (入室は十六時半まで) 、ただし金・土は十九時閉館、料金 一般1000円。

 

 

それではここで野口哲哉さんのプロフィールを。

1980年 香川県生まれ。

2003年 広島市立大学美術学部油絵科卒。

2005年 同大学院修了。

2016年 香川県文化芸術新人賞。

 

2014年 野口哲哉展-野口哲哉の武者分類図鑑、東京練馬区美術館、アサヒビール大山崎荘美術館。

2015年 THE HISTORICAL ODYSSEY、羽田空港国際旅客ターミナル。

2018年 中世より愛を込めて、ポーラミュージアムアネックス東京。

 

 

鎧と人間をテーマに現代性や人間性を問いかけるという今回の展覧会。

樹脂やアクリル絵具を使っての彫刻作品を中心に絵画も絡めて展示されている。

 

地元香川高松出身の若手作家。

将来楽しみな逸材だ。

 

 

結論から先に言うと、展覧会の印象は「楽しい」の一語に尽きる。

作家さん本人は、展示品の解説などで繰り返し、芸術は楽しいだけではいけないと書いているのだが。

なので楽しいだけではなく、鋭い批評性や皮肉やスパイスといった要素を大事にしているとのことだが、たしかに哀しみの感情ペーソスに富んだ作品も散見される。

しかしそれらの作品のどれをとっても、毒気は極めて希薄で、見ていてとにかく楽しい。

 

 

ということは、その極めて明るい楽しさこそが、この作家さんの資質ではなかろうかと。

こう言うと或いは本人は嫌がるのかもしれないが、しかしもう少し年齢を重ねると、この天から与えられた資質を誇らしく思える日が来るかもしれない。

毒気やスパイスを効かせても、なお消えない感じのよさや品のよさ、そして洒落たユーモア。

せっかくだから、この才能を今後はフルに生かしていってはどうだろうか。

 

 

後、感じたのは天性の絵の上手さと造形感覚の巧みさである。

ここではお見せできないのが残念だが、古い日本画風に作られた絵は本格的な出来栄えで、本物の古典作品を使って肝心のところだけ手を変えて展示してあるといっても通用するくらいの完コピーである。

なんせ古い絵に特徴的な紙の染みや汚れまでリアルに再現してあるのだから。

 

 

日本画だけでなく、洋画の素養もある。

実際、洋画風に描かれてあるコーナーでは、ヒエロニムス・ボスやブリューゲル風、ピエロ・デ・ラ・フランチェスカ風、レンブラント風、フェルメール風、カラヴァッジョ風と多彩な完コピーぶりを見せている。

どれも非常に上手で全く卒がない。

文学で言えばパスティーシュ(文体模倣)の楽しみがそこにある。

よく上手なピアニストなどが、誰々風のピアノと言って巧みに弾き分ける芸などを披露したりするがまさにあんな感じである。

 

 

もうすでにここに紹介した写真などで伝わっているとは思うのだが、絵画だけでなく彫刻の方も素晴らしい。

間近で見ると、鎧の作り込みの本格さに感嘆する。

人間の造形も髭やすね毛など、一本一本植毛してあってその労力たるや凄まじい。

そしてそのような本格的な作り込みから醸し出される限りないリアリティー。

是非、これは美術館に足を運んで生で体感してもらいたいところである。

 

 

そして作者が繰り返し述べているのが、本当に描きたいのはサムライではなく鎧の下にいる「人間」だということ。

普遍的な感情と知性の機微を見せる「人間」そのものを描きたいのだと。

その感じはなんとなく私にも分かる。

色んな映画や文学、学問などに触れていると、洋の東西を問わず人間には共通する部分があるように感じる。

もちろん違うとこもたくさんあるのだが。

それでも根っこのところは変わらないのだ。

 

 

以上、駆け足で見てきたが、ここに書けなかったこともたくさんある。

それは是非ご自分の目で確かめてきて欲しい。

彫刻作品などは一体仕上げるのに丸一ヶ月ほどかかるそうで、そのリアルな作り込みの凄さはまさに圧巻である。

典雅な美の世界を堪能できた午後のひとときであった。

感謝。

 

 

 

美味しい昼食の喫茶「皇帝」さんに感謝。

最高の展示を見せてくれた野口哲哉さんにありがとう。

その作品を私たちに伝えてくれた高松市美術館に感謝。

その他、お世話になった関係者の皆さんに感謝。

高松の街の皆さんに感謝。

今日も最後まで読んでくれたあなたにありがとう。