本日は、発売まであと少しの一迅社文庫アイリス9月刊の試し読み、第2弾をお届します(〃∇〃)
試し読み第2弾は……
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…13』

著:山口 悟 絵:ひだかなみ
★STORY★
乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。破滅フラグをなんとか回避し魔法省で地道に働いているのに、出戻り悪役令嬢が破滅するゲーム続編は進行中! その上、続編の攻略対象者で以前仲良くなった友好国のセザール王子がソルシエに留学してくることに。続編の情報はほとんどないものの、これってゲームのイベントなのでは!?ーーそう考えた私は、彼を避けようとするけれど!?
大人気破滅回避ラブコメディ★波乱続きの第13弾!!
劇場版アニメ、2023年12月8日(金)全国ロードショー!!
コミックゼロサムにて、イラストのひだかなみによる長編コミック版も大人気★連載中!! コミカライズ①~⑨巻大好評発売中! スピンオフコミック全③巻も大好評発売中!
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「それで、何が問題なのですか?」
エテェネルの国王はどうやらちゃんとした人のようで、こちらから女性が望めば可能、無理強いはしないということを了承しているなら、問題はないと思うのだけど。
「……そうですね。問題は特にないのですが……」
ジオルドがまた口ごもった。
なんだか今日のジオルドはいつもと少し様子が違う。
「……あの、カタリナはエテェネルの王子とはどのような関係なのですか?」
しばらく口ごもってジオルドが口にしたそんな問いに私はきょとんとしてしまった。
「えっ、どんな関係って……」
近隣諸国の会合で身分を知らないまま少し仲良くなった人で、そのあと誘拐事件で助けられた人だ。
そして率直に言えば乙女ゲームの攻略対象とその邪魔をする悪役令嬢の関係だけど、それは私だけが知る事実だから口にはできない。
「え~と、そのちょっとした知り合いですかね?」
とりあえずそんな風に答える。
「えっ、ちょっとした知り合いですか? 親しい友人とかではないのですか?」
ジオルドがなぜか驚いたようにそう聞き返してきたので、こちらも驚いてしまう。
「えっ、いえ友人とまでは……」
セザールを使用人と思っていた時なら友達と言えたかもしれないけど、相手が他国の王子様と知ってしまえば気軽に友達と言っていいのかわからなくなる。
そんなことも考えてのちょっとした知り合いという表現だったのだが、ジオルドはなぜかほっとした様子で息を吐いた。
「あの、ジオルド様?」
ジオルドの一連の様子の意味がわからず、心配になりその顔を覗き込むようにすると、
「いえ、エテェネルの王子とカタリナの交流会での様子を見て親しい友人なのかと思い込んでしまっていたんです。だからエテェネルの王子が今回、ソルシエへ婚約者候補を探しに来ると聞いて慌ててしまったんです」
どこか気まずそうな顔をしてそんな風に言った。
「?」
私とセザールが親しい友人だとして、セザールが婚約者候補探しに来るのがなんでジオルドが慌てることになるのかしら? わからず頭にはてなを浮かべる私に、ジオルドは困ったように眉を少し下げた。
「エテェネルの王子がソルシエの女性を選び声をかけ、その女性がそれを良しとすればエテェネルへ嫁ぐことを許すとこちらは伝えました。無理強いしてはいけないだけで女性が許可すればよいということです」
「はい」
あっ、そっかそういうことで、乙女ゲームⅡで主人公と恋に落ちて祖国に連れて帰るみたいになるんだ!
そんな風に瞬時にゲームの展開を予測できて『賢いな』と自分で自分に感心している私をよそにジオルドは話を続ける。
「国の代表としてきている方なのであえて婚約者のいる女性に声をかけるということはしないと思いますけど……しかしカタリナがエテェネルの王子と親しいならあるいは、声をかけられる可能性もゼロではないかもしれないと思いまして」
「!?」
ここでようやく私はジオルドがセザールの留学で慌てた理由に気が付くことができた。
セザールが私と仲良しで、もしかして私がセザールの婚約者候補になるのではないかと思ったということか!
「まさか、確かに面識はありますけど、そんな婚約者候補に選ばれるような関係性ではありませんよ!」
私は顔の前で手をぶんぶんと横に振りつつそう力説した。
むしろゲームでの関係性としては敵対する立ち位置なので、あんまり接したくない気もするし、そもそもの前提としてあちらの方が私をそんな風に思えないと思う。
立っているだけで美女が寄ってきそうな美形で、女性経験も豊富そうなセザール。そんな彼が城の庭に寝っ転がっていた女を恋愛対象に見るとは思えない。
「私にセザール様を惹き付ける魅力があるとは思えません。絶対に婚約者候補に声がかかるなんてありえませんよ!」
私はやや鼻息荒く自信満々にそう言い切った。
そんな私を見てジオルドはなんだかむっとしたような顔をして言ってきた。
「カタリナはこういったことにいつも自己評価が低いですが、あなたはとても人を惹き付ける魅力を持っているんですよ、もう少し自覚してください」
そんな言葉にびっくりして、先ほどより早く手と首をぶんぶんと横に振った。
「な、何を言ってるんですか、そんなことないですから、過大評価しすぎですよ!」
「そんなことありませんよ。実際、あなたに惹き付けられている者が今、あなたの目の前にいるではありませんか」
ジオルドがこちらに顔をぐいっと寄せてそんなことを言ってきた。
「目の前にって……」
そこまで呟いて意味がわかった。
そうだこの物凄く美しい王子様は私のことを好きだと思ってくれているのだ。
そのことを思い出すと同時に顔に一気に熱があがってきた。これはきっと顔が赤くなってしまっているだろう。
そんな私をじっと見つめながらジオルドは続ける。
「僕はカタリナという人に物凄く惹き付けられてしまっています。エテェネルの王子だっていつ僕のようになってしまうのではないかと気が気ではありませんよ」
熱い視線と言葉を受けてさらに顔に熱が集まっていく。思考がまとまらない。
「そ、そんなことないです……ジ、ジオルド様がマニアックすぎるだけですよ!」
思わずそんな風に叫んでいた。
「マニアック?」
ジオルドが不思議そうに首をかしげた。
あっ、マニアックはこの世界にはない言葉だったかも。
「あ、その、変わった趣味ということですよ」
私はそう言いなおした。
「変わった趣味ですか? そんなことはないと思うのですが」
「か、変わってますよ。普通ならもっと可愛くてちゃんとした子がいいと思います」
それこそ乙女ゲームの主人公マリアのような子を好きになるはずだ。
「その普通というのがわかりませんけど、カタリナは可愛いですよ」
真顔でそう返されて返答に困り、口をはくはくとさせてしまう。
そんな私を見てジオルドがにんまりとした。
そしてどんどんと距離を詰めてきて、気が付けばすぐ目の前に綺麗な顔があった。
「ようやくこんな風に意識してもらえるようになって嬉しい限りです」
そう言うとジオルドは目を閉じた。まつ毛が長いなと見惚れているうちに綺麗な顔がどんどんと近づいてきて――。
バターンと大きな音がして扉が開かれた。そして、
「義姉さん、危ない!」
という叫びとともにぐっと後ろに引っ張られた。
「こんなところで、何してるんですか!?」
私を腕の中に抱えながらキースがジオルドに向かってそう叫んだ。
最初の一瞬こそ驚いた顔をしたジオルドは、すぐに状況を理解したようで黒い笑顔を作った。
「何って婚約者との交流を深めていただけですよ。それよりキース、あなた今日は夜会に招待されていませんでしたか? それにしては帰りが早すぎませんか?」
「仕事がなかなか終わらなかったので夜会は断らせてもらったんです……ってなんで僕の予定を知ってるんですか!? はっ、まさかそれを知っていてあえてこんな時間にやってきたんですか? なんてあくどい」
「何を言ってるんですか、あくどいのはあなたの方でしょうキース。婚約者同士の交流をこんな風に邪魔するなんて配慮が足りなすぎますよ」
「婚約者同士の交流なんて言ってどうせ、義姉さんがぼーっとしているところにジオルド様が迫って良からぬことをしようとしていただけでしょう!」
「良からぬこととは失礼ですね。婚約者として必要な触れ合いをしようとしていただけですよ」
私を間に挟んだままこのようなやり取りがはじまってしまい。私は居場所はともかく、完全に蚊帳の外となってしまった。
いつもの二人のやり取りをぼんやり見ていると落ち着いてきて顔の熱もしだいに引いていく。
なんというか、前世からも合わせて恋愛経験皆無だったのにここにきて美しすぎる王子様に本気で愛をささやかれるとか心臓がもたない。
やがてなんやかんやと二人が言いあううちにジオルドが帰宅しなければならない時間となった。
二人がこんなふうに言いあいを始めると長くて、よくこんな風になることが多い。実は二人はすごく息が合っていて仲良しなのではないかと思う。
ジオルドは帰り際、私に微笑みそして小声で、
「念のためにエテェネルの王子が留学中はあまり城近辺には出入りしないでくださいね」
と言い残していった。
「それで義姉さん、本当に何もされていないの?」
ジオルドを見送った後、キースが険しい顔でそう聞いてきた。
「な、何もされてないわよ。……強いていうなら突然、顔が近づいてきて、その、口が触れそうになったけど、その前にキースがやってきたから……」
少ししどろもどろになりつつもそう答えると、キースは大きなため息をついた。
「やっぱり危なかったじゃないか、義姉さんは危機感がなさすぎるよ。だいたい年頃の男女が二人で密室にいるなんて―――」
キースはすっかりお説教モードに入ってしまった。なんというかキースは見た目だけは色っぽい美青年だけど、中身は完全に世話焼きのお母さんって感じだよな。
ゲームでは女の子をとっかえひっかえのチャラ男だったのに、何がここまで彼を変えてしまったのだろう。キースのお説教を聞き流しながら、ぼーっとそんなことを考えていると、
「義姉さん、ちゃんと聞いてる?」
「は、はい」
お母さんじゃなくてキースからダメ出しが入り慌てて返事をする。キースレベルになると私が聞いていないのもこうして見抜いてきたりするんだよな。
しばらくしてようやくお説教が終わり、ほっとした私にキースが、
「そういえば、ジオルド様がこんな時間にくるなんて珍しいよね。何かあったの?」
と質問してきた。
「あのね。ジオルド様はエテェネルの王子様が留学してくることを教えにきてくれたのよ」
私はそう言って、ジオルドから聞いた話をキースにも伝えた。
話を聞き終えたキースは少し考え込むような様子を見せ、
「留学の件はいいとして、婚約者はこちらで探すというのは気になるね」
そう言った。
「あれ、キースも気になるの? なんで?」
「なんでって、エテェネルの王子って交流会で義姉さんが親しくしていた人だよね。ないとは思うけど、義姉さんを婚約者にとか声をかけられたら大変だから」
キースの答えは先ほどのジオルドと同じものだった。
~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~
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