『転生したら悪役令嬢だったので引きニートになります4』を試し読み♪ | 一迅社アイリス編集部

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本日も6月2日発売のアイリスNEOの試し読みをお届けいたしますクラッカー

試し読み第2弾は……
『転生したら悪役令嬢だったので引きニートになります4~エリートな従僕子爵の執着が激しすぎる~』

著:藤森フクロウ 絵:八美☆わん

★STORY★
最期まで最愛の娘である自分の幸せを願って逝った父グレイル。突然の別れに意識を失ったアルベルだが、最恐魔王の死、そして王家の証であるサンディスグリーンの瞳を宿す自身の存在は、大小問わず貴族たちの野心を煽り、さらなる混乱を招く火種となっていく。彼女を守るためキシュタリアたちが策を巡らすそんな折、サンディス王国の老王ラウゼスから、同じ色の瞳を持つアルベルへ手紙が届く――。
無自覚系天然タラシな悪役令嬢アルベルの一代記、風雲急を告げる第4巻!

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「グレイル様が死んだ……?」
 薄汚れた黒いローブを深く被った仮面の人物は頷く。老人とも老婆ともとれる、しわがれた声で紡がれる言葉は低く訥々として聞き取りづらい。
 この人物との出会いは繁華街の大通りから少し奥まった場所にある露店だ。
 露店なので、時々場所が変わっていたり、店自体開いていなかったりする。
 攻略対象へのプレゼントや、好感度アップアイテムを売っているのでレナリアは学園にいた頃から、足しげく通っていた。
 この店の『愛の妙薬』があったからこそ、パラメータ不足はあっても好感度でゴリ押せた。
 最初は数枚の銅貨で買えた薬だったが、最近は金貨を要求する。だが、他の店では手に入れられないため背に腹は代えられない。
 しかも、この『愛の妙薬』は常習性というか、中毒性がある。これがないとグレアムは言うことを聞かないどころか最近では正気も怪しい。グレアム以外にも、これを使って従わせている者たちは多い。これがあるからこそ、貴族すらレナリアに傅いている。
 だが、最近は取り締まりも厳しく、レナリアも追われていることもあり入手が難しい。
 それに、この商人はただの露店商ではない。雑貨屋のような商売だと思っていたが、何でも屋に近い。欲しいといえば惚れ薬どころか奴隷から、国際的に禁止されている呪具、暗殺依頼までどんな後ろ暗いものまでも商売として扱っている。
「カイン・ドルイットと相打ちしたそうだ」
「信じらんない! なにグレイル様を殺しているのよ、あの愚図! アルベルティーナを殺してって言ったのに!」
 カインに使わせた魔力増強のアイテムもそうだ。
 大枚をはたいて購入したそれは、精神や肉体を変質させてしまうが、その代わりに莫大な能力を得る。
 いくらアルベルティーナが強くても、厳重に守られていてもこれなら殺せると聞いて、一番魔力の強いカインに使わせたというのに。
 なのに結果はカインが死んで、レナリアの目当てのグレイルも道連れ。なのに殺害対象であったアルベルティーナは生きている。最悪だった。
 折角、ドレスを我慢して王城に入れるよう手配したのに水の泡だ。薬を売りさばいて得た資金の大半をこの作戦で使ってしまった。
「ラティッチェ公爵はアルベルティーナ嬢を溺愛しているのは周知のこと。同じ場所に居合わせて、庇ったのだろう」
「なんでそんな場所で……っ」
「今までアルベルティーナ嬢は、厳重な警護と結界に守られていた。あれは一流の暗殺者の侵入も許さず、魔法使いを何人派遣しても解除できない強力なモノ。待ち続けてようやく出てきた。謁見の間に出てきたあの時以外は、狙いようがなかった。カインを差し向けたのはそちらの指示のはずだが?」
 ぐ、とレナリアは黙る。
 とにかく、アルベルティーナが出てくるのを教えろと催促していた。早くあの女を始末したかったのだ。
 レナリアはどうしようもなくアルベルティーナが気に食わなかった。
 どんなに調べても幼い頃に誘拐された悲劇の令嬢、病弱な深窓のご令嬢、領民のために善政を尽くす聖女のような令嬢、王族に理不尽に虐げられた哀れな令嬢であり、減刑を呼び掛けた慈悲深い令嬢と毒婦らしい評価がない。どれもこれも、レナリアの知っているアルベルティーナの姿ではない。
 キミコイで初代悪女。シリーズで最もわかりやすく純粋な悪だった。淫蕩で奔放な『悪姫』。聖女だの、慈悲深いだのとは無縁の悪女。それがアルベルティーナなのだ。
 その女が、最近王族に加わるなどというとんでもない噂まで出てきた。
 レナリアが王妃になったあと、あんな女が近くにいるなんて目障りに程がある。
「あの女は死ぬべきなのよ! そうじゃないと、私が公爵夫人にも王妃にもなれない! なんで、なんであの女ばっかり! 許さない! あんな女が生きているせいで!」
 グレイルがレナリアの下に来なかった。レナリアに愛を囁かず、あの美しさを堪能することもできなかった。どのように閨で楽しませてくれるか、楽しみだったのに。
 アルベルティーナは疫病神だ。あれがいるから上手くいかない。
 当たり散らし甲高く叫ぶレナリアを、無言で見ている仮面の人物。
 ちらり、と後ろに控えていた男を見る。彼はその視線の意図を汲み取り、背中を壁から離して一歩前に出た。男は血錆のような赤毛に金にも銀にも見える底光りするような炯々とした瞳。目つきが悪いが、顔の造作自体は整っている。背が高く、しなやかな鋼のように鍛えられた褐色の巨躯。百九十センチは優にありそうだ。麻のタンクトップに、黒くゆったりとしたズボン。腰のベルトに長さも形状も違う武器を数本ぶら下げている。足元は皮を鞣した簡易な靴を履いていた。
「……なに、その男」
 ずっといたのに、今更レナリアは気づいたらしい。ぶすくれた表情で、怪訝そうに青い瞳を向ける。
 過ぎた不満を叫んでいた姿は醜悪だったが、大人しくしていれば愛らしい顔立ちがわかる。
 レナリアにしてみれば、落とす気満々でいた、抜群の財力と権力を持つ絶世の美形がいなくなったのだ。不機嫌極まりない。代わりに出てきた男の顔立ちはなかなかだが、眼光が鋭く粗野さが目立つ。レナリアの判断基準は顔と金だ。
 男は顔立ちこそ悪くないが、ど真ん中ほど好みではない。だが、お菓子ばかり欲しがって会話の成り立たないグレアムの代わりに、侍らすにはちょうどいい。
 最近は貴族ばかり相手にしていたので、この手の美形もたまには悪くない。
 一番好みなのはグレイルだが、ちょっとしたつまみ食いにはよい。
 グレアムは宰相子息なので金蔓にはもってこいの家柄と人脈を持っている。まだ捨てるには早い。
「これはなかなか使える男でな。あの魔王公爵さえいなければ、大抵の者は暗殺できる」
「……へえ、いいじゃない」
 歪なチェシャ猫のように口角を上げるレナリア。狡猾で厭らしい表情だ。
 これ、と呼ばれた男は不躾な視線にさらされながらも獰猛に嗤った。

~~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~~~

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