幼い頃から母親に暴力を振るわれて育ち、小4から不登校で12で母親の紹介で売春を始め、10代で覚醒剤を覚え、21歳でシャブ中でウリの常習犯の主人公・杏(河合優実)が、その希望の無い生活からの更正とその結末まで、実際にコロナ禍の日本で起きた事件をもとに描かれたドラマ映画『あんのこと』

覚醒剤使用の現行犯で逮捕され、取り調べの刑事(佐藤二朗)の誘いで薬物更正者の自助グループの会合に参加し、介護施設の仕事も斡旋してもらい、母親からのDVからも逃れ、顔つきも病んでいた冒頭からだんだん血色もよくなり、薬にも頼らず順調に更正していく姿が描かれるのですが、順調なのも束の間、コロナの猛威によって職を失い、学び場も閉鎖され、助けてくれて頼りにしていた刑事の犯した事件によって自助グループも解散し、積み重ねてきたもの全てを失って世界に絶望するという最後まで救いの無いまま力尽きた彼女の結末には、その悲壮な半生と残酷な世界の現実を突きつけられます。

彼女自身は何も悪くないのに、あの母親の子に産まれてしまったという選択できない境遇で幸せな人生を辿れなくなるという理不尽さの中では、観ている側もここはこうすべきみたいな答えも全く見えないどうしようもない無力感を感じずにはいられません★★★★80点

同じような境遇の子がいたとしても恒久的に助けることなんてできませんが、実際にこういう子がいたことを心に留めておき、自らの恵まれた生活に甘んじること無く前向きに生きなければと思うところです。