7章 韓国ドラマ映画
281.映画 ベルサイユのばら❶
今回は韓国映画・ドラマと無縁ですが、歴史モノと言う事で指が疼(うず)くので、居ても立っても居られず書かせて頂きます。
アニメ映画『ベルサイユのばら』です。
マンガ『ベルばら』こと『ベルサイユのばら』が生誕50周年を迎え(実際には今年2025年は生誕52年)、新作アニメ映画として戻って来ました。
このマンガ『ベルばら』は私が語る必要がもはや不要な程の漫画界の不朽の名作。
TVアニメに宝塚歌劇団のオペラ、実写映画と数々の作品としてリメイクされ、それぞれ今も多くのファンに愛されている作品です。
なので、まずはしばし、原作マンガについて語らせて頂きます。
そもそも私はリアルタイムで原作マンガを楽しんだ者の1人です。言わば歴史の生き証人とでもなった気持ちで誇らしくもあります。
原作が発表されたのが、1972年で私が小学校3年生の頃。2歳上に姉が居たので私も少女マンガを一緒に読んで居ました。
発表紙は「週刊マーガレット」。「ベルばら」は人気連載マンガでした。
とは言っても小学生で、姉も私もそこまでお金が有る身分でもないので毎週買って読むワケではなく、飛び飛びになる事も有りました。
コミックスになって近所の子に貸して貰って読んだりして居ました。
良く言われる様にこのマンガ、少女マンガの枠を大きく壊した画期的なマンガで、それまで無かった「歴史モノ」と言うジャンルを少女マンガに持ち込んで大ヒットしたまさに「歴史的なマンガ」です。
子どもながら「過去のフランスでの壮大なお話し」と言う未知の世界をワクワクしながら読みましたが、後半のフランス革命についておそらくキチンと理解して居たとは全く思えないレベルの理解力だった事でしょう(実際、最後の方は駆け足で難解です)。
しかし、その頃はそれなりに物語に感動し、マンガと主人公たちのファンになりました。
思い出すのは、今は無き日本橋のデパート「日本橋東急」で有料の催事『ベルばらフェア』が有り、1人観に行ってポスターを買って帰った思い出です。主人公4人とロザリーを含め「5人のバラ」と謳われ、(なるほど〜、バラってそう言う意味か〜)と妙に納得した記憶があります(笑)。
今思えば、ウルトラマンや仮面ライダー、マジンガーZなどと共に「ベルばら」にもハマった変な男の子だったワケですが、私に限らず大人や男性にも人気を集めたこの作品がキッカケで、大人や男が少女マンガを読んでも恥ずかしくないと言う風潮が生まれたと言えます(ついでに言えばその後の『エースをねらえ』も一役買いました)。
時は流れ、大学卒業後、東京朝鮮高校に社会科教師として赴任しました。
担当科目はズバリ「世界史」です。
オマケに1年目の1989年はフランス革命200年記念の年。何かとフランス革命が話題になり、「ベルばら」もそのひとつに。
当然私も再度興味を。
お金の自由も有る程度効くので大枚をはたいて中央公論社の「愛蔵版」を購入することに。
ちなみに私は昔からマンガを数多く読んで来たので「ベルばら」に限らず「エースをねらえ」や「マジンガーZ」、手塚治虫の「火の鳥」「アドルフに告ぐ」など多少高価な愛蔵版をせっせと買い求め本棚に飾り、大人読みしまくりました。余談ですが「火の鳥」などは私の世界観形成に多大な影響を与えて居ます。
ある意味「ベルばら」も授業のネタとして再読したワケですが、何度か読み終えると子どもの頃には理解出来なかった事柄が理解出来たと言うか、新たな感想が生まれて来たワケです。
まずは、現在韓国映画・ドラマ時代劇では「ファクション史劇」すなわちファクト(史実)とフィクション(架空)を組み合わせた作品が人気を集めて居ますが、その元祖とも言える作品と言えること。
調べて行くと、書かれている殆どのストーリー、主人公のオスカルとアンドレ以外の登場人物と事件が本当に有った史実で有る事にある種、大きな衝撃を受けました。
特に「首飾り事件」などは当時フランスを揺るがし、王妃マリーアントワネットが処刑される大きなキッカケになってしまった大事件だったこと。彼女はワケも分からず犯罪者たちに利用されてしまっただけなのですが、「印象操作」が如何に怖いかを物語る代表例とも言えます。
「ベルばら」から派生して、著者池田理代子さんが本作を執筆するキッカケになったツヴァイクの著名な伝記『マリーアントワネット』も読みました。
他にもフランス革命に関わる図書を読んで行く過程でまさに私は「フランス革命通(ツウ)」になりました(笑)。
フランス革命を詳しく知った上で再度「ベルばら」の最後部を読めば尚更、「ベルばら」の世界とフランス革命を理解しやすい事間違いなしです。
実際、今ではオペラ歌手としても名声を得ている著者、池田理代子さんの著者コメントに、コミックスの8巻でオスカルとアンドレが死んだ後、編集部に「あと10週で連載を終了して下さい」と注文を出され、フランス革命とマリーアントワネットの最後の生涯部分がかなり駆け足になってしまい残念だったと言う文言が有りました。
確かにそれまでのマンガの流れに比べコミックス9巻の1冊の分量で革命の経緯と結果を叙述するには少々ムリが有った気がします。
コレは、今回もパンフレットで述べられていた様に、当初マリーアントワネットを一番の主人公に据えて書き出したマンガが、架空の人物と言う事で描き易い事も有り段々と男装の麗人オスカルの人気と共に彼女に重心が動き、その主人公が亡くなってからは「後日談」的な描き方にならざるを得なかった結果と言えるでしょう。
実際、歴史を替える事も出来ないので史実を淡々と描くほか有りません。
もひとつ厳しい事を言うなら、著者も決して歴史の専門家で無いので、そこまで深く掘り下げて歴史を描くことが出来なかったとも言えます。
なので当然ですが、フランス革命を理解する上で「ベルばら」が有効ですが、深く理解するには専門書の助けが必要です。
その上で、ファクション史劇として映像で革命の経緯を描いてくれて居る事、歴史に対するメロドラマ風な興味を抱かせてくれる意義にその価値を求める事が出来るのでは無いでしょうか?
少女マンガから出発して歴史大作に駆け上がってしまった本作品ですが、著者はその後ロシア革命を描いた『オルフェウスの窓』でいよいよ少女マンガの枠に収める事が出来ず、連載途中で月刊誌に連載を変更する事を余儀なくされ、その後は大人向きの歴史マンガを何編か発表しました。
「コリア社会歴史ライター」の私としては、以前歴史本編でも述べましたが、朝鮮の近代の歴史、特に明成皇后(ミョンソンファンフ:閔妃ミンビ)の生涯を中心に彼女と我が国の悲劇を『漢陽ハニャンのムクゲ(木槿)』とでもタイトルを付けて、大院君、高宗、金玉均、金弘集などと一緒にマンガ化して貰えたら良いのに…なんて空想したりするワケですが。
客観的に描く事が出来るヨーロッパの歴史と違い、日本が当事者として犯した世界に類を見ない蛮行、まさに朝鮮語で言うところの『天人共怒천인공노チョニンコンノ』な蛮行、夜半の宮殿に100人もの浪人で押しかけ、王妃である明成皇后(ミョンソンファンフ)を弑害した『乙未事変』をクライマックスにしてファクション史劇マンガを描くなど、到底ムリであろうと重々承知です。
その上で思うことは、韓国最悪の歴史歪曲ドラマ『明成皇后(ミョンソンファンフ)』で無しに、「ベルばら」風『明成皇后(ミョンソンファンフ)』ドラマが作られ世界的に大流行すれば、せめて今よりは日本の人も近代の歴史を理解して、隣国とより良い関係を築くことが出来るのでは?と注文を付けつつ本記事のオチとしたいと思います。
映画について語るつもりが原作を語るだけで長くなってしまいました。
仕方が無いので2回に分けます。再度お付き合い下さい(笑)。次回こそは映画について語ります。
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