ワンポイントコラム
287.4月15日太陽節
 
 
 
 
今年も4月15日が来ました。
我が家に取ってはミックスツインズの誕生日と言う事も有り、『我が家最大の祝日』です。
昨年は1月に成人式が有りました。
その3カ月後には21歳になりましたから、4月誕生日は何かと得です(笑)。

 

 

この日は他にも歴史を辿ると世界的に沢山の出来事が有り、幾つか述べると
❶アメリカ大統領リンカーン暗殺(1865)
❷近代オリンピック-第一回アテネ大会開催日(1896年)
❷タイタニック号沈没(1912年)
❸東京ディズニーランド開園日(1983年)
❹韓国セウォル号出港(2014年:次日4月16日沈没)
など、大きな事件が多々有ります。

 

 

しかし、その中でも韓国・朝鮮に取って重大な日と言えば共和国の『太陽節』でしょう。
キム・イルソン金日成誕生日です。
今回はこの太陽節について簡単に見たいと思います。

 

 

「太陽節」は金日成主席の誕生日を記念する日で、キム・イルソン主席逝去3年後の1997年7月8日、朝鮮労働党中央委員会、党中央軍事委員会、国防委員会、中央人民委員会、政務員の5つの機関が「チュチェ主体年号」の使用とともに『太陽節』に格上げさせる事を共同決議し、命名されました。

 

 

ここで共和国での4月15日の祝日制定課程を見ましょう。
 
まずキム・イルソン主席生誕日が祝日と制定されたのは彼の誕生日50周年の1962年で、まずは臨時祝日として指定されました。
1956年の8月宗派事件、1958年の「崔昌益国家転覆陰謀」事件を通して延安派とソ連派を壊滅させ軍部を完全掌握した後の制定でしたが、キム・イルソン主席の「唯一思想体系」が確立する1968年以前と言う事も有り、慎重に事を進めたと言えるでしょう。
1968年、正式に公休日に指定されます。

 

 

そして、1974年に中央人民委員会(国会)で「民族最大の祝日」に公式に制定されました。
 
『主体63(1974)年4月10日、朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会(当時)は、全朝鮮人民のひたむきな念願と忠情の心を込めて、偉大な首領が創始した人類解放、階級解放、民族解放に関する永生不滅のチュチェ主体思想をこの地に輝かしく実現し、彼が私たちの革命と世界革命発展に築いた不滅の業績を子孫万代に輝かせるために、偉大な首領が誕生した4月15日を民族最大の祝日と宣言した。』と有ります。

 

 

この年は息子のキム・ジョンイル金正日が党中央委員会第5期総会で「唯一の後継者」として正式に選出された年で有り、彼の、国家権力の末端から主要機関に至るまで広範かつ細かく直接監視、制御する事が出来る指揮系統を創出、これをベースに独自の政治的影響力を大きく拡大した年です。
金氏一家の権力私有化の陣頭指揮がこの年を以って始まりましたが、それと軌を一(いつ)にするモノだったと言えるでしょう。

 

 

それに先立つ事2年前の1972年、キム・イルソン金日成生誕60周年を記念し彼の偶像化が始まり、今に続く金日成の本格的な個人崇拝がこの時を起点に始まりましたが、その完成形とも言えます。
 
 しかして、キム・イルソン主席逝去3年忌の1997年7月8日、朝鮮労働党中央委員会、党中央軍事委員会、国防委員会、中央人民委員会、政務員が共同発表した「キム・イルソン金日成同志の革命生涯と不滅の業績を長く輝かせることについて」決定書にて、「金日成同志がチュチェ主体の太陽として高く湧き上がった1912年を元年として主体の年号を使う。
金日成同志が誕生した民族最大の祝日である4月15日を太陽節として制定する」としました。

 

 

 当時、キム・ジョンイル金正日国防委員長「首領様は尊号そのものが太陽だ。
したがって、首領が誕生した4月15日は太陽節と命名しなければならない」と述べたと伝わります。
ちなみに、キム・ジョンイル金正日国防委員長の生誕日2月16日は後に『クァンミョンソン光明星節』と命名されて居ます。
 
この時、現在共和国が使用している、共和国式年度表記法で有る「チュチェ主体年号」も初めて採用され、キム・イルソン金日成主席が生まれた年の1912年をチュチェ主体元年(1年)とし、西暦と併記する形で使用開始しました。
今年2023年はチュチェ主体112年と表記されます。

 

 

民族最大の祝日と有って、共和国ではお祭りムードが賑やかに漂います。
共和国全域で文化芸術公演、親善行事などの祝賀行事が開かれ、連日ニュースが全国に流れます。
 
ピョンヤン平壌市青年公園野外劇場での舞踏会、マンギョンデ万景台学生少年宮殿とピョンヤン平壌学生少年宮殿の芸術サークル員たちの総合公演、平壌美術祝典、キムイルソン金日成花展示会、切手展示会、ピョンヤン国際マラソン大会、映画祭が開かれるなど、祝賀公演・祝賀行事が目白押しです。

 

 

中でも最も有名な行事は『4月の春の親善芸術祝典』で、韓国でも良く知られて居ます。
1982年から毎年開かれてきたこの祝典には、共和国の有名文化芸術人だけでなく、外国の芸術団体や芸能人などが招待されます。
2000年〜2002年には韓国の歌手キム・ヨンジャさんが韓国歌手で初めて招待されて公演を行いました。

 

 

金日成主席の誕生日100周年だった2012年からは『4月の春の人民芸術祝典』と隔年開催されて居ましたが、コロナ19が広まり2020年はイベントを開催しませんでした。
一昨年2022年はオンラインで祝典が開催され、外国の芸術家たちが送った公演映像を「朝鮮芸術」のウェブサイトや朝鮮中央テレビに放映する方式で10~20日まで開催されました。
コロナ禍が収まりを見せている今後の祝賀イベントに注目です。
多分KBSニュースで共和国の模様が流れるでしょうからその映像を見ることにします。

余談ですが、韓国の報道で2024年に入り共和国で『太陽節』と言う呼称が消え『4.15』と言う呼称になったと言う報道が有りました。
金正恩政権が自己の権威高揚の為に、相対的に祖先の記念日を格下げする作業に入った可能性は有ります。それだけ自身の政治的影響力に自信が高まった証左と言えるかも知れません。

 

 

しかしながら、この日を中心に朝鮮半島の南北間に軍事的緊張感が漂う事も事実で、共和国が自己の軍事力を誇示するために太陽節100周年の2012年と105周年の2017年に『太陽節周年閲兵式열병식(軍事パレードMilitary parade)』が開かれるなど、軍事的誇示も行われました。
 
2017年に開かれた「太陽節105周年閲兵式」では新型ICBM、最大射程4,000kmのファソン火星ミサイル改良型、新型地対地弾道ミサイルと地対艦ミサイルなど新型戦略兵器が大勢登場し、朝鮮中央TVを通じて世界中に公開されて居ます。

 

 

現在、朝鮮半島では昨年3月に韓国・在韓米軍による、米空母やB52爆撃機を交えた空中・海上訓練、そして5年ぶりの大規模な上陸作戦などの大々的な軍事演習「フリーダム・シールド」が行われ、共和国指導部を標的にした特殊作戦の訓練など、20種もの大規模な野外機動訓練が共和国の反発を呼びました。

 

 

共和国でもそれに対抗する形でミサイル発射実験を頻繁に行っており、先日も弾道ミサイルを発射しました。
4月25日の「建軍節」に向かい、更なる軍事パフォーマンスが予想されます。
 

 

この様に近年、いつに無く朝鮮半島での軍事的緊張と戦争再開の懸念が高まって居ますが、朝鮮半島が核戦場に陥る事態を防ぐべく、お互いに挑発的行動を自制し平和への交渉テーブルに真摯に赴く姿勢がつとに求められます。
 

 

<参考文献>
우리민족끼리  태양절
한국민족문화대백과사전
김일성 생일이 ‘태양절’인 이유?
 
#韓国ドラマ #韓国時代劇ドラマ #韓国映画