第8章 韓国芸能
102.ザ・グローリー❸・財閥家の末息子❸
 
 
 
Netflixオリジナルドラマ『ザ・グローリー』の人気が熱いです。
4月4日現在も日本のデイリーTOPを独走して居ます。
前回のレビュー❷の最後にも述べましたが、まさしく本年を代表するドラマと言っても過言では無いでしょう。
 
ドラマレビュー❷はコチラ
今後日本でも配信サービス開始しますので、多くの人気を集める事でしょう。
上記2つの作品の共通点は、すべて主人公が復讐を誓い実現する「復讐劇」だと言う点です。
 

 

他に私が視聴して居るホームドラマでも「復讐劇」は大きなウェイトを占めて居ます。
日本でも『半沢直樹』シリーズなどがムーブメントを起こしましたが、韓国ドラマの様なメインジャンルとして固定化されては居ません。
さて、一体韓国でこれほどまでに「復讐劇」が人気を得る理由は何でしょうか?
以前にも簡単に述べた事が有りますが、今回はこのドラマ『ザ・グローリー』を講義で語る事を念頭に、韓国ドラマで「復讐劇」が流行る理由、人々が熱狂する心理を述べて見たいと思います。

 

 

❶まず、一言で「復讐劇」が人気を得るのは、何と言っても視聴して「代理満足」「カタルシス」を感じたいと言う理由でしょう。
貧しい環境、学校暴力などに苦しむドラマの中の人物を見ながら、視聴者も過去に自分が経験した類似経験を思い浮かべ登場人物に感情移入して共感、ドラマの中の復讐に代理満足を感じたいと言う欲求です。
 
❷次に、コレは逆を言えば自分だけが苦しみを感じ、復讐すら出来ない理不尽な境遇に置かれた人々が多い事を物語って居ます。
彼らが「仮想現実体験」をする事により、本人達が抱える他の諸問題も解決してくれる作用をもたらすと言います。

 

 

テレビの前の人々は、実際には職場、対人関係など現実的な理由によりストレスを感じつつも反発しにくい状況に置かれており、ドラマ視聴を通じてのみ自分の立場を補償され、代理満足するしか無い状況下に置かれているのが現実です。
その「仮想体験」を投げてくれて居ると言う事は、視聴者が家に居ながらして『テーマパーク』でジェットコースターに乗りストレス発散すると言うワケです。
 
❸しかして、ドラマで解消するしか無い疎外される苦しみは、韓国の様に「ウリ」と「ナム」(我々と他人)がクッキリ別れて居る社会では尚の事強くなります。
韓国社会では「嫌悪」と「差別」が社会に於いて顕在化しており、自分の関係する集団と他の集団との「優越」比較現象がほとんど社会で蔓延して居ます。

 

 

そして、「カブル甲乙文化」「権威主義」により不平等と差別を擁護する『垂直集団主義』『激しい集団主義』という韓国社会の特殊性も弱者の泣き寝入りを招きます。
マスク着用などに見る日本の「集団主義」もヤリ玉に挙げられる事が有りますが、韓国での『垂直集団主義』は日本でのそれとはおよそ比較になりません。

 

 

基本的に、人権や個人の幸せ追求権よりも韓国社会では「垂直配列」が確固たる社会正義で、社会的不平等や差別が「当然」でよしとされる傾向が多いに散見します。

①コレは儒教精神の伝統、②日本の植民地と軍事独裁を経験、③民主化運動さえも影響され発生させて居ると言う現実、④特に垂直社会で有る「軍隊」への服務が義務である韓国社会の特性上も現れざるを得ない現象です。

一言で分断国家である現実から導かれて居る現象だと言えるでしょう。

 

この様に、あきらめにも似た境遇が日本などとは段違いに存在する事が、制作者・視聴者問わず人々が克服すべき問題解決として「復讐劇」に向かわざるを得ない状況を用意します。
エンタメが社会変革の旗振りの役割を果たして居るのです。

 

 

❹最後に「復讐劇」の様な「マクチャン」ドラマが流行る理由として、単純に朝鮮民族の特徴で有る『フン興』と『ジョン情』『ハン恨』を尊ぶ国民性に起因する事は間違い無いでしょう。
良く言われますが、映画動員数が世界的にもトップクラスで有る事に見られる様に、我が民族は昔から「歌舞」「興奮」を好む、感情が激しい国民性が知られて居ます。
多くのドラマでも低い視聴率をテコ入れする為にワザと「マクチャン」展開に誘導すると言います。
復讐せねばならぬ展開が大きければ大きい程、視聴率は跳ね上がると言う仕組みです。
刺激を好む主婦層目当ての過激な描写と言うワケです。

 

 

『ザ・グローリー』でも顔を覆いたくなる様な陰惨なシーンがコレでもかと続き、果たしてここまで描く必要が有るのか?と批判を受けました。
この様に、刺激を好む国民性を「商業主義」が上手く利用する事で、『復讐劇』のこれ程までの隆盛がなされて居る事が指摘出来ます。
 
『ザ・グローリー』でのイジメ「学暴ハクポク」が実際に有った事、スタッフのPDが過去にイジメを行って居た事実が暴露され論難を呼んで居ますが、現実世界でのイジメやパワハラと言う問題はまだまだ解決には程遠い様です。

 

 

尚、復讐について専門家は、「相手と自分との関係が良くない時、対人関係で相手が期待しただけ自分を尊重してくれず、自分と相手の間の関係が既存の状態から外れる「不均衡状態」に有る時、その不均衡状態を解消するために、我々の脳は絶えずお金と賞賛、感謝など新しい報酬を探す」と述べ、「こうした不均衡を回復するために復讐と言う報酬を受けようとする」と述べました。

 

 

「復讐劇」を視聴する行為でも同様に一部、自己回復が出来る事を物語って居ますが、コレは充分な補償行為では有りません。
ドラマでも復讐は復讐した本人をも滅ぼすと述べて居ましたが、復讐心の余り、自己破滅に陥りやすい事を物語ります。
最も理想的なのは、相手を破滅させる攻撃的な復讐では無く、復讐の感情を原動力に相手に直接的な被害や苦痛を与えず、自分がはるかに成功する事だと言います。
物理的な復讐では無く、自分の人生の成功と言う復讐です。

 

 

そう見れば、社会的に見ると、ドラマによる「代理満足」を得て、日常の自己成功を目指す行為はむしろ現実直視より望ましい『必要悪』なのかも知れません。

 

 

<参考文献>
이 데일리뉴스 복수는 모두의 것… 시청자는 왜 복수극을 좋아할까
헬스조선뉴스 더 글로리' '재벌집' 복수극 인기… 왜 복수에 열광할까 [별별심리]
혐오를 찍어내는 사회
[특집] 왜 혐오의 시대가 되었나?
 
韓国ドラマ #韓国時代劇ドラマ #韓国映画