第7章 韓国ドラマ映画 
218. ザ・グローリー❷
 
 
 
「ヨンジナ〜 ナ〜 チクム ミラノヤ〜(ヨンジン 私今ミラノよ)
 
今週のKBSワールドの『芸能ライブ+』でコーナーを紹介する男性MCのギャグで思わず吹き出してしまいました。

 

 

『ヨンジナ〜』で始まるソン・ヘギョのナレーションは主人公ムンドンウン(ソン・ヘギョ)が、ナレーターの視点で自分が経験したイジメ(学校暴力)の被害と苦痛、復讐に対する意志を示すために、イジメの首謀者No.1で有るヨンジンに作中度々手紙形式で語る重要なフレーズですが、かなり印象的で視聴者の耳に残ります。

 

 

韓国では、ここに視聴者のセンスが加えられ、上に挙げた様な「ヨンジンア(ヨンジナ)」ミーム(流行語)が各種ウェブサイトやSNSで適材適所に使われたりして、ブームになって居るそうです。
朝鮮語では親しい人に呼びかける時に「ア」や「ヤ」を使いますから、「ヨンジナ〜」とイジメ加害者へ親しく呼び掛けるそのセリフは「反語的」な意味を含んで視聴者の心に大きく響きます。

 

 

この『ハクポク学暴(学校暴力)』被害を扱ったNetflixのオリジナルドラマ『ザ・グローリー』シーズン2の開始を今か今と待ち侘びて居ましたが、3月10日の公開から3日で世界ランキングでトップになったと言いますから、その反響の大きさがいか程か分かります。

 

 

そして何より、ドラマと同時に連日イジメ問題がニュースで流され、大きな社会問題として問題提起されるキッカケになって居ます。
芸能界はもちろん、スポーツ選手、放送界さえ「イジメ論議」に加害者が謝罪する事例を導き出し、政府長官候補者の息子のイジメ問題で、親が窮地に立たされる事態も招きました。

 

 

日本でも韓国でも学校のイジメ問題は待った無しの大きなイシューと言えそうですが、ドラマの影響力は絶大で、社会問題として真剣に取り込む重大なキッカケになりそうです。
この点に限れば、韓国でのこの問題についてレビュー記事❶で語ったのでご参考まで。
 
ドラマレビュー記事❶はコチラ
煙に巻かれた様に、シーズン1の終わりで突如「奈落の底に落とされ」た、私を含む視聴者は100日近く経ってようやくシーズン2にあり付く事が出来ましたが、短期集中で視聴したせいも有り、多くのエピソードを忘却してしまいましたから、こんな事なら毎週1話か2話づつ途切れず見せてくれた方がよっぽど良かったのに…と恨み半分でした。

 

 

もう一度シーズン1を見直せば良いのでしょうが、忙しい毎日、そんな時間的余裕はそう有りません。
どうせなら、前回見ずに今回シーズン1から通しで観た方がストレスフリーで精神的にも良かった事でしょう。
本格的な復讐と共に加害者サイドの逆襲も始まりましたから、手に汗握る展開に一喜一憂しながら視聴する羽目にもなりました。
 
シーズン2を見終えた印象は、話数を減らしてシーズン1で終了した方が名作になったのでは?と言うイメージです。
見ていて作為的なシーンが目立ちました。

 

 

ムン・ドンウンが加害者5人に復讐すると通報して居るにも関わらず、本人たちが被害を受ける状況で真っ先にムン・ドンウンを疑わずに、4人組がお互いを疑うなど。
自分たち同士で疑いに陥って自滅する姿が加害者らしいとも言え、加害者サイドにも元々ヒエラルキーが存在したのでその矛盾が暴発したとも見えますが、出来過ぎなイメージでした。

 

 

チュ・ヨジョン(イ・ドヒョン)が困った時に何でも助けてくれる「ドラえもん」の様な存在だった事も、復讐に偶然が大きく作用した体(てい)で残念な展開でした。
ムン・ドンウンの自殺を止めに来た人がチュ・ヨジョンの母親だった事も作為的です。
何故、どう言うタイミングで接点が有るワケでも無い彼女が救いに来たのか?など、後半に進むにつれてストーリー展開の偶然・手抜き・粗さ・杜撰(ずさん)さが目立ちました。
コレも後半に進むにつれ失速してしまう韓国ドラマの클리셰(クリシェ=ワンパターン)に沿った展開です。

 

 

ソン・ヘギョの、抑えた中に全ての感情を込めた演技、イ・ドヒョンのカメレオンの様な表情、加害者サイドの迫真の演技、特に初の悪役にチャレンジしたと言うパク・ヨンジン役のイム・ジヨンの熱演が目を惹いたので、余計に上記の杜撰なストーリー展開が残念だったと言えます。

 

 

特にイ・ドヒョンについて言えば、先の『五月の青春』レビュー記事でも述べましたが、同ドラマで似た役を演じたので、いみじくもイ・ドヒョンの成長を実感させる重要なドラマになった印象です。
しかしオマケを付け足すなら、ソン・ヘギョとの実年齢14歳差(ソン・ヘギョ41歳、イ・ドヒョン27歳)をドラマ設定年齢では2歳差(ムン・ドンウン37歳、チュ・ヨジョン35歳)にするには少々無理が有りました。
どうしてもソン・ヘギョにはイケメン若手俳優と絡ませたいのでしょうが(笑)。
それでも実年齢11歳差の『イルタ・スキャンダル』程の違和感が無かったのはさすが魔性の女ソン・ヘギョ(笑)。

 

 

ラスト、2人して地獄に堕ちるで無く、次はチュ・ヨジョンの復讐を完全犯罪にて遂げるべく余韻を残した展開にしたのは多少シニカルで、ユーモラスなラストでした。
理不尽な悪に立ち向かうその姿はイ・ジェフン『模範タクシー』の様ですが、まさかシーズン3が制作される事は無いでしょう。
題名が「グローリー」ですからその展開も有り?(笑)

 

 

他にも述べたい事は沢山有りますが、イジメ問題を社会問題として解決すべき課題として顕在化させてくれたこのドラマ、‘20年の『愛の不時着』、’21年の『イカゲーム』、‘22年の『ウ・ヨンウ』を継ぐ、今年度‘23年最大の話題作になる事間違い無しですから、私としてもより深いドラマ分析を行い、今後の場で発表したいと思います。
今回のレビュー記事はその「サワリ」と言う事で、思う事他に有れば随時付け足したいと思います。
では。
<参考文献>
뉴스크라이브 "해외 시청자도 감동한" 더 글로리 시리즈가 이끌어낸 문제 제기의 결과물
나무위키
 
#韓国ドラマ #韓国時代劇ドラマ #韓国映画