第7章 韓国ドラマ映画 
209. ドラマファジョン華政❷
 
 
 
さて、ドラマ『ファジョン華政』のBS放送65話が無事終了しました。
以前、視聴中断前にレビュー記事❶を書いて居るので、続きの記事を書くか書くまいかとっても悩みましたが、やはり区切りと言う意味も有るのでレビュー記事❷を書かせて頂きます。
 
ドラマレビュー記事❶はコチラ
途中までDVDレンタルで鑑賞し、億劫(おっくう)になって中断して居たこのドラマ、Blue-rayのおまかせ録画が拾ってくれたおかげで最後まで観る羽目になりましたが、第一の感想は「やっと終わってくれてヤレヤレ」です。

 

 

元は全50話ですがBSでのTV放映の為CMが挿入され、なんと65話まで伸ばされて居ました。
無料なのでCMの挿入は致し方無いとも言え、どうせビデオ視聴で飛ばしながら観るのでリモコンの操作が面倒な事以外文句は有りません。
 
レビュー記事❶にも書きましたが、このドラマは豊臣秀吉の侵略戦争で有る『壬辰倭乱』終息から中国での『明清』交替期の混沌とした時代をバックに
 
①光海君クァンヘグンの執権
②クーデター「仁祖インジョ反正」
③「リグァル李适の乱」
④チョンミョ丁卯ホラン胡乱
⑤ピョンジャ丙子ホラン胡乱
⑥ソヒョン昭顕世子の悲劇とポンリム鳳林大君(ヒョジョン孝宗)の即位
 
と言う朝鮮王朝でも激動の時代を描いて居るので、作り様によってはかなり骨太な、大河ドラマにも比肩するスペクタルロマンになると思われました。

 

 

事実、同じ時代を描いたドラマ『チュノ推奴』は全くのヒュージョン史劇でありながら視聴率は勿論、評論家、一般視聴者共に2010年代を代表する名作と高く評価されて居ます。
その件についてはこのブログでも幾度か言及して居ますので、機会があればご覧頂きたいです。
 
チュノレビュー記事はコチラ
一方のドラマ『ファジョン華政』は往年の名作『チャングムの誓い』他のイ・ビョンフン監督の一連のヒュージョン史劇を制作したMBCの制作と有って、現在の韓国でのフェミニズムの高まりの中で、女性の役割を浮き彫りにしようとする意図で制作が企画されたと見る事が出来ます。

 

 

その主人公に白羽の矢が当たったのが、この時代の「生き証人」とも言えるチョンミョン貞明コンジュ公主(王女)
ソンジョ宣祖と後妻の王妃との間に生まれた唯一の嫡女ですが、その後光海君に殺されたヨンチャン大君の実の姉で、光海君の異母妹に当たります。

 

 

ここで簡単に彼女の半生を。
 
彼女は宣祖‧光海君‧仁祖‧孝宗‧顯宗‧粛宗と、6代に渡る朝鮮国王と時代を共にして82歳まで長生きしましたが、「悲運の王女」と言う名が相応しい程の悲運の持ち主です。
 
1603年生まれの彼女チョンミョン公主(王女)が6歳の時、父王宣祖が亡くなり、それまで仲の良かった光海君クァンヘグンとも疎遠になってしまいました。
 
その5年後、外祖父のキム・ジェナムが彼女の実の弟で有るヨンチャン大君を擁立してクーデターを企てたとする「ケチュクオクサ癸丑獄事」が起こり、ヨンチャン大君は地位を剥奪されその後暗殺されました。
 
この時、母方の祖父・叔父たちまで連累され殺されるなどして、母方はほぼ全滅しました。
その歳11歳です。
その上12歳で天然痘を患い、世間から隔離された世界で過ごしました。

 

 

そしてその5年後、自身も母親(宣祖の王妃)と共に庶人に降格され、共に徳寿宮に幽閉されました。
彼女はその歳16歳でした。
 
彼女はこの頃、普通なら結婚して居る年齢(16歳)になっても結婚も出来ず、約5年間もの間、生活必需品や生活費もキチンと支給されない貧困の中、西宮で死んだように閉じ込められて過ごしたと言います。

 

 

ドラマの題名となった『ファジョン華政』の文字はこの幽閉時代に母親を慰める為に描いた大小の書芸のひとつで、彼女は父王宣祖に勝るとも劣らずの達筆だったとの事。
「ファジョン華政」の文字が彼女の唯一残った作品との事ですが、女性らしからぬ重みの有る運筆が、彼女の人格を雄弁に語って居ます。
 
『仁祖インジョ反正パンジョン』で光海君クァンヘグンが失脚し仁祖インジョが王に上ると彼女ら母女は5年ぶりに幽閉を解かれ復帰しました。

 

 

その歳21歳、今で言えば婚期を殆ど逃した年齢だった彼女は、インジョ仁祖の号令で許嫁(いいなずけ)の居たホン・チュウォン洪柱元を半ば強制的に娶りました。
ドラマでは演じたソ・ガンジュンと幼き頃より純愛を育んだ姿が描かれましたが、もちろんフィクションで、付け加えれば好青年のソ・ガンジュンとは正反対にホン・チュウォンは名門の豊山洪氏出身で自己の権勢を大いに振るう小人輩だったと言います。

 

 

そんな中、母親(宣祖の王妃:その間死亡)が仁祖インジョを呪ったと言う陰謀論が宮内に流れました。
仁祖は沈黙を守りましたが、既に亡くなった王妃の代わりに、宮内で彼女チョンミョン公主が批判の矢面に立つ羽目になり、苦しい日々が続きます。
彼女は連累(れんるい)を避ける為、自分が政治に何の関心も無いことを示そうと一切の目立った行動を絶ち、優れていると評価されていた書道もやめ、他人の視線を引かない様に絶えず行動せざるを得ませんでした。

 

 

しかし、年を取り病気になった仁祖は病気を自分への呪いのせいにしようとし、事件の背後としてまたもや彼女チョンミョン公主に目を付けたのです。
 
彼女は10代の頃西宮に閉じ込められて過ごしたのみか、30代と40代を幽閉時代よりもっと不安に過ごさなければなりませんでした。

 

 

彼女はもう文章を一切書かず、裁縫だけに没頭して静かに過ごしました。
名門の豊山洪氏の家系に嫁いだ上に仁祖の牽制を受ける状況で、文章を論じたり両班たちと交流しては、疑われる危険が大きかったのです。
 
仁祖の死後、後を継いだ次男のヒョジョン孝宗(鳳林大君)も、その後のヒョンジョン顯宗も彼女への牽制を止めませんでした。

 

 

やっとその後のスクチョン粛宗になって彼女への迫害は終わりを告げましたが、彼女は1685年に享年82歳で波乱万丈な一生を終えました。
若くして横死した弟と違って、彼女は朝鮮の王女たちの中で一番長生きした王女でした。
しかし、高宗コジョンの娘で大韓帝国時代の悲劇の王女と称される「ラストプリンセス」こと「トクへ(トッケ)オンジュ徳恵翁主」と並び、悲劇の王女と称されて居ます。

 

 

ここまでお読みの方でドラマをご覧になった方は、彼女のドラマでの描写が史実とは正反対な事に驚かれるかも知れません(笑)。
よくここまで正反対に描けるモノだと感心する程、ドラマでの叙述はメチャクチャです(笑)。
闊達(かったつ)で勝気、思った事は直ぐに口にし、危険を省みません。
一歩間違えばトラブルメーカーとも言えそうな行動で、戦場にも男装をして出征する始末。

 

 

前回も述べましたが、日本に渡り火薬の技術を身に付け、ファギトガム火器都監の中心人物として朝鮮王朝の為に働きます。
 
全ての朝鮮王朝の歴史的事件が彼女を中心に回ります。
反乱を犯したリグァル李适も、国王インジョ仁祖さえも彼女の耳の痛い「忠言」に耳を貸さざるを得ません。

 

 

ソヒョン昭顕世子ポンリム鳳林大君(ヒョジョン孝宗)も彼女と手を組んで国家を安泰にすべく、最大のヴィランで有るカン・ジュソンに立ち向かいます。
しかし、そもそもそのカン・ジュソンなる大臣は仮想人物で、歴史的に実在しません。
ドラマでは仁祖インジョの悪事や失政を全部彼に背負わせましたので、とても都合の良い人物だと言えます。

 

 

ドラマでは歴史的事件は事件で事実のみ扱い、因果関係や結末など重要な事実は全て無かった事にしてしまいました。
特に後半、朝鮮王朝の歴史で重大な分かれ道になった父王仁祖インジョと息子ソヒョン昭顕世子の対立(と仁祖による毒殺)も無かった事にして、ただ奸臣かつ最大のヴィラン、カン・ジュソンが世子を毒殺した様に描きました。

 

 

この様に全ての人物が仮想人物(悪徳大臣)と対決する構図に持って行き、歴史的事実を全て無視したメルヘンドラマに仕立ててくれました。
「ヴィランのカン・ジュソンを倒して悪の根源が無くなり、朝鮮王朝は幸せになりましたとさ。おしまいおしまい。」と言った類いです。
およそ歴史ドラマとは言い難い単純な構造です。
まるで「水戸黄門」ですね(笑)。

 

 

チャングムの様な実在したかも知れないけれど活躍ぶりが不明な人物であれば、空想を膨らませ色んな行動を描けます。
しかし、この時代にコンジュ公主(王女)が政治で力を発揮する設定は余りに無理が有り、これを強行してしまったせいで、登場人物の性格と行動は完全に破綻してしまいました。
朝鮮国王で三大暗君のインジョ仁祖にしても前後の行動がマルで合いません(笑)。

 

 

コレを史劇だから大目に見ろと言うのは少々気が引けます。
折角、「リグァル李适の乱」「ピョンジャ丙子ホラン胡乱」など、戦闘場面にお金を掛けて制作して居るので、勿体ないと思えました。
 
オマケに付け加えるならば主人公のチョンミョン公主(王女)を演じたイ・ヨンフィの表情が乏しく、いつも同じ顔をして居るのが眼に付きました。

 

 

史劇の場合、日本でもそうですが、演技力が重要です。
主人公がもう少し魅力的で有れば、このドラマもう少し共感出来たであろう事、違い有りません。
65話と言う長い時間、返してくれとは決して言いませんが、やはり限られた時間、視聴するドラマは選ぶべきで有ると言う教訓を我々夫婦に残してくれました。
 
以上、ドラマ『ファジョン華政』レビュー完結です。

 

 

<参考文献>
한국민족문화대사전
나무위키

 

#韓国ドラマ #韓国時代劇ドラマ #韓国映画

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