第7章 韓国ドラマ映画 
131.ドラマファジョン華政❶
 
 
 
 
 
ドラマ『緑豆の花』を見終わり、その勢いでTSUTAYAの新しい目の史劇ドラマを探しました。
1番新しいドラマは朝鮮王朝末期の高宗の時代を描いた『雲と風と雨』でしたが新作なので水曜割引き110円にはなりません。
 
定価で借りる気にはならなかったので他に私が観るに値するドラマを探しましたが、最近の作品が無かったので、少々古くは有りますが、気になって居た『秘密の門』と迷い、まずはコチラのドラマにしました。

 

 

このドラマ、Facebookのグループで他の方が絶賛してらっしゃった事も有り、好きなクァンへグン光海君を描いて居る事も有り、そこそこ真面目なドラマで、私がレビュー記事を書く事が出来そうだと言う意味合いも有って、全50話と気が遠くなりもしますが気張って観覧する事にしました。
 
ドラマ『ファジョン華政』はこのブログでも何度か取り上げて居る、朝鮮王朝時代の3大暗君筆頭、宣祖の嫡流の王女として生まれ、宣祖治世末期から光海君『インジョパンジョン仁祖反正』を経て「チョンミョホラン丁卯胡乱」「ピョンジャホラン丙子胡乱」の混乱を生き抜いたチョンミョン貞明コンジュ公主(王女)の生涯を描いたドラマです。

 

 

オマケに彼女が長崎の硫黄鉱山で火薬製造を学び、朝鮮王朝に戻って『ファギトガム火器都監』で活躍すると言うトンデモ無いフィクションを付加しました。
 
ちなみにドラマタイトルになった「華政ファジョン」は幼い頃から達筆で知られ、女性らしからぬ達筆家として名を鳴らした彼女、チョンミョン貞明コンジュ公主の書いた真筆で、唯一残って居る作品だそうです。
 
華政ファジョン』の字の意味は読んで字の如く「輝く政治」を意味し、彼女の長い生涯の願いを込めたと見られますが、ドラマタイトルに出る文字も彼女の残した字をそのまま使用して居ます。

 

<タイトル文字>

 

その意味でジャンルは「ヒュージョン史劇」ですが、最近流行りの「ファクション(ファクト事実+フィクション)史劇」と言うよりは「ファンタジー史劇」要素がより強いドラマと言えるでしょう。
 
このドラマ、彼女チョンミョン貞明コンジュ公主を主人公にしては居ますが、裏主人公としてクァンへグン光海君を擁して居て、彼を『絶対的な善者』として描く事に腐心して居ます。

 

<チャスンウォンの光海君クァンへグン>

 

以前、彼について記事を多く書きましたが、それまで『インジョパンジョン仁祖反正』により王位を追われ、生涯流配地で廃王として幽閉されたクァンへグン光海君は、第10代王ヨンサングン燕山君と共に朝鮮王朝2大暴君と罵られて居ました。

 

 

しかし、近年の研究で彼のプラス部分を見直すべきとの機運が盛り上がりました。
そのキッカケのひとつが2012年に発行された『光海軍肯定論』を集大成したハン・ミョンギ教授の著書『クァンへグン光海君〜卓越した外交を繰り広げた君主』でした。

 

 

私もこの本を偶然読み、彼の壬辰倭乱の時の活躍を始め、「大同法」施行や対『後金(清国)』政策など、暴君とは相反する面貌を見る事が出来、底知れぬ感動を覚えました。
勿論、内政に関しては多くの間違いを犯して居ます。
上記の書籍でも1/3は彼の偏執的な「王宮建築」癖や過度な猜疑心による粛正などを批判して居ます。

 

 

あくまで「功過」両面で論じる事が重要と言えます。
 
しかし、ドラマでは過度なクァンへグン光海君擁護が見えます。
人気イケメンスター俳優チャ・スンウォン光海君クァンへグンに配役したせいか、彼の治世上の愚策は全て部下の成した事として処理し、彼を稀代の聖君かの様に祭り上げる展開が見られます。

 

 

この様な偏った描写は、一種の歴史歪曲とも言え、ドラマ・映画では慎重さが必要では無いでしょうか。
 
クァンへグン光海君『聖君』化はソ・イングク主演『王の顔』にも散見され、危なさを孕(はら)んで居ましたが、そちらはドラマがクァンへグン光海君「黒化」以前、つまり暴君としての顔を大きく見せる前の段階で終了した為、さほど気にはならず、彼のプラス部分アピールとして一翼を担う事が出来ました。
 
ドラマレビュー記事はコチラ

 

しかし、このドラマでは彼の「黒化」時代がメインで描かれる為、一方的な「聖君」化は視聴者に誤ったクァンへグン光海君観を与える事に繋がりかねません。

 

 

現在5話まで視聴完了しましたが、面白いドラマ展開の中にもそんな危うさを感じました。
 
ドラマのあらすじを。
 
時は1608年。
朝鮮第14代王・ソンジョ宣祖の次男、光海君(チャ・スンウォン)は嫡子ではないという理由で16年もの間、明に正式な世子と認められず、父からも冷遇されている。
光海君の心を癒してくれるのは、幼い異母妹のチョンミョン貞明コンジュ公主だけだった。

 

<チョンミョン公主(王女)>

 

そんな中、宣祖が崩御。
次期王の擁立をめぐり、朝廷は俄(にわ)かに慌ただしくなる。
骨肉の争いを望まない光海君は、ヨンチャン永昌テーグン大君と貞明公主を守るとインモク仁穆テ–ビ大妃(シン・ウンジョン)に誓い、15代王に即位。
 
しかしその後、永昌大君は無念の死を遂げ、仁穆大妃は慶運宮に幽閉される。
一方、宮殿から逃げ出した貞明公主(イ・ヨニ)は倭国へ。
奴隷として長崎の硫黄鉱山に売られ、ファイという名で男のふりをして過酷な日々を生き抜いていた。

 

 

数年後、朝鮮通信使がやってくる事を知ったファイは、祖国に戻るキッカケをつかもうと江戸に向かい、ホン・ジュウォン(ソ・ガンジュン)と出会う。
彼は幼い頃に貞明公主を守れなかった後悔を胸に抱きつつ、光海君が設立した「火器都監(ファギトガム)」で働いていた。
ファイは硫黄の闇取引を手助けし、ジュウォンと共に朝鮮に帰国。
ついに家族の仇である光海君と対面するが…。
 
(引用 BSテレ東 ホームページ)

 

<チョンミョン公主のイ・ヨンフィ(ヨニ)>

 

なるほど、そんな感じで進行して行くのですね。
ドラマでは光海君ヨンチャン永昌テーグン大君の暗殺に関与して居ないかの様な描写になって居ますが、史実では厳然として関わって居ます。
 
ドラマでは不安定な状態で即位したかの様に描かれましたが、当時、光海君は戦争時に逃げた国王宣祖を尻目に戦って実績を積んでおり、臣下たちにも2/3以上の支持を得て、彼の地位は盤石でした。

 

<制作発表会>

 

勿論、明の世子冊封の認可が降りないと言う不運は有りました。
しかし、それは明国国内の事情(同じく明国皇帝が嫡男以外の王子を後継に望んでいた為、朝廷内で紛争が有った)で冊封が認められなかったので有り、その問題が片付いた後には、サッサと国王の冊封許可が出て居ます。
 
ドラマでは過度に光海君クァンへグンを窮地に追いやる事により、その後の彼の偏執狂的な猜疑心を肯定して居る様に見られます。

 

 

また、王女が日本に渡航して火薬術を覚え、朝鮮王朝の火器の発展に寄与すると言うストーリーもぶっ飛んで居て、史実ではそんな努力が不要な程、高麗期から我が国の火薬術はかなり優れておりました。
 
勿論、鳥銃(火縄銃)の軽視と未発達により、陸地戦で日本軍に当初遅れを取った事は事実ですが、李舜臣リスンシンの水軍が日本に優位を保ったのも火薬武器、主に大砲の存在が大でした。

 

 

その後、『降倭(日本軍の帰順兵)』の出現などにより火縄銃が量産されると、朝鮮王朝軍は何の不自由も無く日本軍と対等に戦闘出来ました。
明から火薬が貰えなければ火薬の補給もままならないと言う描写は明らかに誤謬で、光海君を「聖君」化する為の「詭弁」的装置に他なりません。
 
これは、光海君の治世に「火銃庁」「火器都監(ファギトガム)」に変更した事実をオーバーに描く為の装置として使用した模様です。

 

<ヨンチャン大君と>

 

これらの他にも考証無視は多々有りますが省略させて頂き、また出没する時に述べさせて頂きます。
 
マイナス面ばかりが目立つ記述になってしまいましたが、良かった点も多々有ります。

 

 

最近では舞台を過去に借りただけの恋愛物のファンタジー史劇、ロマンス史劇が盛況で、歴史歪曲批判を避ける為かパラレルワールドとして描く事も多く、私がわざわざしゃしゃり出る幕の無い、軽〜い史劇が増えて居ます。
そう言う史劇だとバカバカしくてコメントのしようが有りません(笑)。
 
内容は歪曲だらけで有れ、骨太で真面目に作られた史劇はやはり見応えが有ります。
どんな宮中陰謀も真実に見えて来るから不思議です。
そして演じる役者により、歴史人物の新しい人物像が生まれます。
チャ・スンウォンの悩める光海君クァンへグンも中々の造詣です。

出演する俳優も知った顔が多く、史劇ドラマとして安心感が有ります。

 

 

歴史歪曲だらけな設定不満は横に置いて、ファンタジーとしてのストーリーを楽しむ事にします。
まだまだ先は長いので、先に進んだ都度、再度出没させて頂きます。
ご興味のある方はDVDや配信サービスでリリースして居ますので、よろしければご視聴ください。
では。

 

 

 

<参考文献>
나무위키

 

#韓国ドラマ #韓国時代劇ドラマ #韓国映画

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