第7章 韓国ドラマ映画
199.ドラマ シュルプ❹親子鑑定『合血法』
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2022年後半の大ヒット史劇ドラマ「シュルプ」で自身のチマ(スカート)を掴み、その裾を風で切りながら疾風の如く駆け巡るかの如く王子の将来の為に尽力する(まさにチマパラム:教育ママ)王妃役のキム・ヘスを追い掛けるべく、私も必死にドラマに追いすがり走って居ます。
とは言え、ドラマの中を走るワケには行かないので、TV前で家事をしたり、ランニングマシンで走りながら視聴して居ます(冗談)。
現在12話まで接近。
12月4日に堂々クライマックスを迎えるこのドラマにあともう一息と言う所まで来ました。
とうとうムン・サンミン演じるソンナム大君(テーグン)が見事(と言うか定石通り?)世子セージャの座を射止めました。
それにしても世子の服装だと何と凛々しい事か…
とにかく韓服ハンボクはカッコいいです。
今更ですが、私も結婚式で着れば良かったか?なんて(笑)
パク・ポゴムもキム・スヒョンも、そしてジュノも世子(そして王様)役を経て絶大なる人気を獲得しましたから、ムン・サンミンもそのレールに乗る事間違い無いでしょう。
そもそも韓国ではとうに彼の人気爆発が止まらない様で、CM依頼が絶えず、彼の新鮮な姿がお茶の間を賑わして居るそうです。
さて、ドラマのレビュー記事を書こうとするとイチャモンが後から後から浮かんで来て、「そんなに文句があるならレビュー記事書くな」と言われそうですが、『一言居士(いちげんこじ)』としては言わずに居られません。
いちいち全部は言えないので、一言だけ言うなら「このドラマは現代感覚と歴史感覚を行ったり来たりして居る」とだけ纏めましょう。
ドラマの進行上、歴史的感覚と現代的感覚を都合の良いところだけ摘んで行き来して居ると言う風です。
残念なのは彼が世子に選ばれた過程で、「チャングムの誓いの料理対決」の様に誰が観ても明快でスカーッとする結果で選出されなかったのが悔やまれます。
この件(くだり)は所詮フィクションなのですからもう少し面白く出来た筈では?
いっその事、全部の世子でクイズ大会を開催して、可愛い太っちょの王子などのトンチンカンな答えで笑わせてくれたり、賢いポゴム君の冴える答えも聞きたかった様な。
ちょっと中途半端な気がします。
そして結果も一捻り欲しかった様な。
例えば彼が儒生達の前で、
Q: 心中しようとした親の責任を問う問いに
A: ソンナム大君が答えた内容は子どもの権利を考えるべきで厳罰に処すべきと答えますが、
この答弁は人権が叫ばれる現代人の意識で、家父長制がモットーだった朝鮮王朝時代にソンギュングァン成均館の儒生たちに支持されるワケは有りません。
意外性を狙うにしてももう少し納得行く答えを用意して欲しかったような…
期待ハズレが残念ですが、私が期待し過ぎ?(笑)
この事にしても、以前の女装して女の子になりたがるケソン大君テーグンに王妃が母親として理解を示すのも皆、現代的感覚で有って、あの時代にジェンダーフリー問題を国母で有る王妃(母親)が理解を示すとは到底思えません。
勿論、現代的感覚でドラマを構成する事が現代人への戒め、教訓を与える上で有意義な試みで有る事に疑う余地は有りませんから野暮を承知で申すワケですが、なるべく文句が出ない作りにして欲しいモノです。
今日はこれら諸問題からひとつだけ、「親子鑑定」に関する話題を述べたいと思います。
韓国ドラマに欠かせない素材、まさに必殺ワザが「出生の秘密」です。
劇に緊張感を吹き込むために親子鑑定をする場面がたくさん出ます。
今回「シュルプ」では王宮内で親子鑑定を要求すると言う非常に「不遜」な場面が描かれました。
王妃の「不義の子」を疑うなどまさに「不義・不忠」、史実ならあの大臣は八つ裂きの刑に遭った事でしょう(笑)。
とにかく、ココでようやくソンナム大君が生まれて外で育てられたワケが解明したと言うワケです。
では、この場面で描かれた親子鑑定が全くの虚偽かと言うとそうでは有りません。
これは『合血法』と言って実際朝鮮王朝時代に親子鑑定に使用された方法です。
1438年、世宗期に発刊された朝鮮時代の法医学書『新註無寃錄シンジュムウォンロク』には、親子を確認をする方法として『合血法』が登場します。
これは二人の血を水が入っている器の中に同時に落とし、親子ならば血が一つで凝結し、そうでなければ凝結しないと見る鑑定法でした。
この方法は明の時代に中国から導入された方法で、現在の血液型による赤血球と血清の凝固原理からみると、あまりにもとんでもない方法なのですが、日本でも濡れた衣(きぬ)を着せて罪人の有罪無罪を占った(なので冤罪を濡れ衣と呼ぶ)様に、前近代的・迷信的な手法だったと言えるでしょう。
コレは英祖時代に実際にあった「親子確認訴訟」に採用され、原告側に不正事実が有りそれ以外の理由で訴訟が終了してしまった為結果は分かりませんが、ひとつの方法として確立して居たと見るべきでしょう。
他にも『敵骨法』と言って、父が亡くなった時、父の頭蓋骨の上に子供の血を落として浸透すると実父で、そうでないと実父ではないという判断を下す方法も存在しました。
現在の目で見ると非常に非科学的な手法だと言えますが、当時かなり信憑性のある検査だったのでは無いでしょうか?
余談ですが先に挙げた朝鮮王朝時代の『新註無寃錄シンジュムウォンロク』、そして1748年、英祖期に改訂された『增修無寃錄チュンスムウォンロク』は法医学書ですが、上記の非科学性は無きにせよ、当時の捜査レベルの高さを推定する事が出来る、非常に科学的な内容の書籍でした。
この書籍を基に朝鮮王朝時代には実証的で科学的な捜査が行われた模様です。
話しは戻り、ドラマでは王妃が大臣側の不正を見抜き事無きを得ましたが、もし不正が無ければソンナム大君が実子では無いと証明されてしまうの?とゲスの勘繰りをしてしまう私は充分韓国ドラマ「不義・不忠」ですか?(笑)
12話ではセジャビン世子嬪カンテク揀択が始まりました。
悪役チャンフィ演じるウィソン君側では性懲りも無く立ち向かうそうですから、今後の展開に要注目です。
またしばらく後、出没します。
では。
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<参考文献>
친자 확인, 조선시대에는 피를 물에 떨어뜨려서‥
한국경제 한경닷컴 [천자 칼럼] 친자 확인
재미있는 조선시대 일상수집/조선시대 일상
조선시대 실제 벌어진 [친자확인 소송]과 [친자확인 검사]
한국민족문화대백과사전 신주무원록(新註無寃錄)
한국민족문화대백과사전 증수무원록(增修無寃錄)