第7章 韓国ドラマ映画
125.渋沢栄一と晴天を衝け❷
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今回の記事をどのカテゴリーにするか迷いましたが、取り敢えずドラマ映画欄に(笑)。
今週号の「週刊金曜日」に在日出身の韓国柔道オリンピック代表選手アンチャンリン安昌林選手の記事が載って居ます。
結構長い記事で、生い立ちから現在の彼の立ち位置まで、深く切り込んで居て、彼本人と家族の頑張り、葛藤や苦しみまで多角的に描いて居て好感が持てました。
そして何よりも勇気を貰いました。
右傾化が強まって居る現在の日本で「週刊金曜日」は数少ない進歩的な雑誌で、そのポリシーは徹底して居ると知って居ました。
惜しむはその金額で、これは現在の日本の雑誌全般に言える事ですが、高価です。
知識と教養を得る為にはこれ位の出費は仕方ない事でしょうか。
そもそも、今週号を知ったキッカケは、渋沢栄一が携わった一橋大学で研究して居る「一橋大学が迫る 渋沢栄一と朝鮮侵略」の連載です。
こちらは執筆者が全員一橋大学の現役大学生と院生だそうで、とても頼もしい存在です。
余談ですが、彼らが書いた本『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし」と言う書籍も話題を呼んで居て、早く読みたいとは思って居ます。
今週号は第2回目で、「京釜鉄道」と「京仁鉄道」を取り上げて居て読み応えが有りました。
現在、日本では大河ドラマ「青天を衝け」の影響かちょっとした渋沢ブームが起こって居ます。
前回もドラマレビュー記事で書きましたが、イケメンでありつつ若手俳優の中でももっぱらの演技者として名高い吉沢亮の好演や、以前から続く傾向で有る「イケメン大河」の名の通りのイケメン大量投入の布陣、明治維新を敗北者の徳川の側の視点から描いた斬新な描き方、渋沢栄一自身の人生の波瀾万丈さなどが上手くマッチして、近年稀に見る楽しい大河ドラマに仕上がって居ます。
ドラマは先週、最愛の妻・千代がコレラで亡くなるお話でした。
苦労続きで可愛そうな千代を橋本愛が演じて居て好感が持てたのですが、死に顔がキレイ過ぎてリアル感が半減で没入出来ず残念でした。
韓国ドラマならメイクも表情もホントに病気なのでは?と見間違う程のリアルな演技でドラマの世界に没頭させられてしまうのですが、日本では役者のイメージを損なう事はタブーなのか、およそ病人らしからぬ姿で亡くなります。
大きく見て大した事では無いのですが、最近ほとんど韓国ドラマ映画を観て居るので条件反射的に思ってしまいます。
このブログでも何度か取り上げて居る様に、彼は2024年から新しい1万円札に新たに登場する人物です。
聞けばこれまでも何度か話しは有ったそうですが、ヒゲの関係で偽造防止に難有った為、見送りされて居たとか。
樋口一葉もそうですが、近年では偽造防止技術が進歩し、皺や髭の無い肖像画でもお札に出来る様になった事は誠に喜ばしい事では有ります。
現在、新しいお札の中で最も大きな関心を集めて居るのは彼でしょう。
渋沢栄一は農民のせがれから一橋家の家臣になり、徳川幕府が崩れる直前の1867年万国博覧会が開かれるフランス・パリを訪れました。
産業革命と商工業の重要性を悟った彼は、明治政府の大藏省(現財務省)で5年間働いて辞職、商工業の発展の為に銀行が必要だという判断の下、日本初の銀行である第一銀行(現みずほ銀行)を設立しました。
租税・会計・貨幣制度の近代化を推進し、証券取引所を作り、紡織・鉄道・肥料・ガスなど様々な分野でなんと500社もの会社を作り、日本経済の足場を設けました。
日本最高のホテルに選ばれる帝国ホテルと東急電車、札幌ビール、田園調布造成も彼の業績です。
彼は彼の著書「論語と算盤」に見える様に、「論語」に基づいた健全な商業倫理を強調し、「道徳経済合一説」の精神を拡散させました。
「道徳と経済は互いに反するのではなく、クルマの二輪のように互いに頼りながら転がってこそ、真の資本主義が完成される」と主張しました。
多くの企業を作っても株式会社の真の概念に基づいて、私有化しませんでした。
現在、日本で政治と経済における倫理が問われて居る中で、彼の資本主義倫理観は日本を代表する倫理観として君臨して居ます。
NHKでは、日本が飛躍的に成長した1970~1980年代に比べて政治・経済・社会的に萎縮した状況で、彼の存在をクローズアップし、新しい時代を開いた彼の気概を日本の老若男女に浸透させる意図を以って、今回の大河ドラマを成功に導いて居ると言えるでしょう。
一方、日本で尊敬に値する人物が我が国でどの様な役割を果たしたかと言うと、ほとんど鏡映しの様に反対に映ってしまうのが残念です。
渋沢栄一も例にもれなく、朝鮮の立場から見て、日本帝国主義が富国強兵策の一環として朝鮮を植民地にする上で、経済侵奪の尖兵として活躍した過去が有ります。
渋沢は、1902年明治政府が朝鮮で使われる貨幣発行を許可した時、10ウォン、5ウォン、1ウォンの貨幣に登場して旧韓国に知られ始めました。
第一銀行を創業した彼が自分の顔が入った貨幣を朝鮮に流通したのです。
この紙幣は事も有ろうか近代朝鮮で発行された初の紙幣だったので尚更歴史に残ってしまいました。
これは我が国に於いて、彼の最大の失策の一つとして記録されており、朝鮮社会に否定的なイメージを深く刻印させました。
今週の「週刊金曜日」の記事にも有りましたが、彼は朝鮮でも鉄道・貿易に関連する各種会社を設立し、日本の植民政策を支持する役割を果たしました。
韓国で電力産業を掌握する目的でガス・電気・電車を供給する「日韓ガス電気株式会社」を設立、同社は京城電気に改名され、現在の「韓国電力」の前身になりました。
他にも「京仁鉄道合資会社」と「京釜鉄道株式会社」の社長を務め、京仁線と京釜線付設権を買収して敷設しました。
京釜線の敷設では、戦争遂行のために狭軌(1067mm)を主張する陸軍参謀本部と日本政府の意見を無視して、大陸鉄道直通がもたらす便益を考慮して、信念に基づき標準軌(1435mm)を選択し、これによる工事の遅延と追加予算投入で予算を圧迫しました。
結局、京釜線は日露戦争後に完工されましたが、南満州鉄道との互換性が容易だったので、便益を追求した彼の所信が正しく、大陸侵略の大いなる遺産となりました。
この件については今週号の「週刊金曜日」に詳しく載って居るので一読される事をお勧めします。
朝鮮での鉄道敷設事業は、ネトウヨに限らず、日本の政治家でさえも主張する「日本の植民地による朝鮮発展論」の重要な根拠のひとつにもなって居ますが、「週刊金曜日」では旧大韓帝国政府に対する不平等条約、土地の強制収奪、朝鮮労働者に対する過酷な搾取などを具体的に挙げて居て、彼がこの鉄道を敷設した目的を彼自身の言葉で綴って居ます。
即ち、「日本の穀米などの食料、そして日本産の繊維衣料を朝鮮で安価に販売する為である」と、直接日本の発展の為で有ると謳って居ます。
この様な認識を現代の我々もしかと認識する必要が有ると思われます。
真の「日・朝・韓親善」はこうした正しい認識から出発するのだと、今週号の「週刊金曜日」を見てまたしてもつくづく思い知らされました。
大河ドラマでもその様な一面が描かれれば、日本の国際化の為の新たな視点として画期になると思われますが、望むのは無理と言った所でしょうか?
<参考文献>
週刊金曜日 11月26日刊
나무위키
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