第7章 韓国ドラマ映画 
113. 黎明の瞳(ひとみ) 여명의 눈동자 ❸
 
 
 
 
 
前回のレビュー記事❷はコチラ

 

何も知らない方にこんな事を言ってしまうと誤解されそうですが、ウリハッキョ即ち朝鮮学校で、以前には「思想教育」が盛んでした。
 
 
『キムイルソン金日成元帥の革命歴史」と言う科目が小学1年生から存在し、彼の幼い時代からの革命活動・歴史を習いました。
その科目が1番重要な科目としてウリハッキョで君臨して居たのです。
1980年代までのウリハッキョの教育に今尚トラウマを持つ人たちも多く存在します。
 
 
オマケを言うと他の科目、例えば日本語も英語も革命歴史の翻訳授業の様な物で、とってもつまらない科目でした。
1977年から路線変更になり、やっと日本語・英語の授業らしくなりました。
「坊っちゃん」などは中学教科書に載っており、夢中になって読みました。
 
 
「革命歴史」も2000年代になり、キムジョンイルの教えでやっと方針が替わり、小中学校では科目自体が無くなりました。
高校でも「現代朝鮮歴史」と名称を変え、キムイルソンの革命活動だけで無く、現代朝鮮の歴史を包括的に教える様になりました。
 
<現代朝鮮歴史の教科書>
 
私は小さな頃から歴史が好きだったので朝鮮大学校の歴史学部に入りはしましたが、思想教育の延長の様な「革命歴史」が嫌いで、授業が存在する為履修しない訳には行きませんが、なるだけ避けて、敢えて「ノンポリ(政治知らず)」で通しました。
大学まで来て「御用学問」を研究させられるのは苦痛で、真っ平御免です。
 
<映画 ウリハッキョ>
 
勿論、教師になった時も「革命歴史」の教科は避けました(笑)。
忌避したと言った方が良いやら?
 
しかし、こうしてささやかな抵抗はした物の、「三つ子の魂百まで」とは良く言った物で、小さい頃から繰り返し習い過ぎたお陰で、授業内容を空んじる位しっかり覚えて居ます。
キムイルソンの「お言葉」や業績を一字一句も間違えず丸暗記させられたので、年代から業績から「歴史的意義」に至るまで未だに覚えて居るのです。
 
<有名なポチョンボ戦闘>
 
昔の儒教の教育では有りませんが、「反復は力なり」とでも言いましょうか?
とにかく、良くも悪くもしっかり身に付いて居ます。
 
革命歴史では「南朝鮮」即ち韓国の歴史も多く学びます。
共和国に同調して、祖国統一と民主化の為に、韓国で軍事・傀儡(かいらい)政権と戦った人民の歴史を主に学ぶのです。
4.19人民蜂起、韓国で言う所の「4月革命」なども具体的に学びます。
 
<映画 南部軍>
 
しかし、唯一学ばなかった歴史が有ります。
それが、今回の重要なキーワードになって居る
『南部軍』です。
「南部軍」とは1948年のリョース麗水軍人暴動以降、1950年代(正確には1964年まで)に智異山・太白山など韓国の山岳地帯を中心に韓国政府を相手取り戦ったパルチザン勢力「人民遊撃隊」です。
 
 
一部共和国の支援を受けて戦いもしたのですが、共和国の「革命歴史」からは存在しなかったかの様に無視されて居ます。
 
私がその存在を知ったのは1990年代韓国で巻き起こった「南部軍」ブームによってでした。
 
それまで軍事政権だった為に歴史のタブーだった「南部軍」の存在が民主化により解禁され始め、ブームを呼んだのです。
火付け役になった小説「南部軍」「太白山脈」はベストセラーになり、映画化もされました。
 
 
資料を見ると韓国ではかなり研究が進んで居て、体型的な理解が可能になって居ます。
 
それ程に重要な存在だった彼ら『南部軍』が何故共和国の「革命歴史」から排除されて居るかと言うと、一言でアメリカのスパイとして処断されたパクホニョン朴憲永、リスンヨプ李承燁ら南朝鮮労働党(南労党)の指揮下に置かれた存在だったからです。
 
<リヒョンサンの陵>
 
彼らをアメリカのスパイとして抹殺した共和国の主流派から見て、彼らは同じく抹殺されるべき存在なのでしょう。
唯一、南部軍のリーダーリヒョンサン李鉉相のみが革命烈士陵に、済州島4.3蜂起のリーダーキムダルサム金達三が愛国烈士陵に祀られて居ます。
 
<リヒョンサン>
 
その内、もう少し私自身勉強を深めて、この「南部軍」について記事を書きたいと思います。
 
歴史の空白に置かれた彼らの存在を思うと、とても哀しくなります。
 
ドラマは❸朝鮮戦争篇でこの「南部軍」を真正面から描きました。
 
 
最後の❸戦争篇のあらすじを。
 
朝鮮戦争が勃発し、スパイ活動の罪で死刑判決を受けたユン・ヨオクはソウルに進撃した朝鮮人民軍によって刑務所から釈放されました。
ヨオクは人民裁判に遭い、竹槍で処断され瀕死の重症を負ったチャン・ハリムを見つけ、ピョンヤンでハリムを助けた女性軍人ミョンジの力も借り、彼を匿い助けます。
 
 
ソウルの自宅に共和国の軍服を着たチェ・デチが彼女を訪ねて来ました。
デチは一緒に何処かに行って暮らそうと誘いましたが、彼女は彼と一緒に長くは住めない事を看過し、共に暮らす事を拒否し去ります。
 
ミョンジハリムを送った後、ヨオクは避難の途に着きますが、途中米軍の空襲により息子のテウンを失います。
 
 
彼女はショックから立ち直り、戦争孤児たちを集め、故郷の近くの町、全羅北道スンチョン順天で暮らします。
 
ミョンジと避難の途に着いたハリムはプサン釜山の避難村に落ち着きましたが、外国に行こうと誘うミョンジの誘いを断り、乞われた戦闘警察隊に入隊し、パルチザンの討伐に向かいました。
 
 
一方、ヨオクと別れたデチは連隊長としてラクトンガン洛東江の決戦に参戦しますが、アメリカ軍のインチョン仁川上陸によって戦線は崩壊し、退却を余儀なくされます。
 
 
デチ始め敗残兵は北へ撤退中に、チリサン智異山人民遊撃隊「南部軍」の説得を受け、パルチザンに合流します。
しかし、智異山の「南部軍」は次第に窮地に追いやられて行きました。
 
 
ある日、パルチザンに食事を施した事で住民の告げ口を受けたヨオクは討伐軍に逮捕されましたが、それを知ったハリムにより釈放されました。
ハリムはそこでデチの存在を知る事になります。
 
討伐軍の攻撃を受け、瀕死の重症を負ったデチは偶然ヨオクの家に運ばれます。
 
 
必死に看病するヨオクに迷惑を掛けられないと、重症を負ったまま山に帰ったデチを追って山に入ったヨオクは誤射に遭い、デチの腕の中で絶命しました。
 
死を予感したデチは最後にハリムとの面談を望みます。
 
最後にハリムの独白でドラマは終了します。
 
 
(ナレーション)
 
その年の冬。
智異山の名前も知らない谷に、私が愛した女性と私が決して憎む事が出来なかった友人を埋めた。
彼らが逝って私は残った。
残った者には残された理由があるだろう。
それはおそらく希望だと名付けられないだろうか。
希望をあきらめない人だけがこの無情な歳月に勝てるから。
 
(おしまい)
 
 
前置きが長くなってしまったので、簡単に終えますが、このドラマでは朝鮮現代史の重要な事件がその都度紹介され、当時の記録フィルムと一緒にナレーションが流れます。
 
まるでドキュメンタリーの様な濃厚な作りで、このドラマに強いリアリティーを与えて居ます。
激しい場面の応酬で、一時も眼を逸らせません。
 
 
主人公たちの切ない人生が胸を打ちます。
特にチェ・シラの身体を張った演技がフィクションとは思えず、生々しく思えます。
当分、「黎明の瞳」ロスに陥りそうです(笑)。
小説「南部軍」「太白山脈」を読もうか真剣に悩みます。
 
と思っていたら、KBSニュースで小説「テベクサンメク太白山脈」の紹介ニュースが放送されました。
よろしかったらご覧下さい。

 
ドラマのOSTも40万枚売れた大ヒット作となったそうですが、哀しい調べが耳を離れません。
 
DVDの最終巻に収録されて居る全体のあらすじビデオメーキング映像に当分世話になりそうです(笑)。
 
 
本当にI.H さん、この様な秀逸なドラマを観させて頂き本当にありがとうございました。
 
 
 
<参考文献>
나무위키
 
#韓国ドラマ #韓国時代劇ドラマ #韓国映画

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