ワンポイントコラム
<韓国朝鮮歴史のトリビア>
221.長編小説 九雲夢クウンモン
以前、朝鮮の人物でキムマンジュン金萬重を紹介させて頂き、彼の著作で有る、「九雲夢クウンモン」と「サシナムジョンギ謝氏南征記」を簡単に紹介しました。
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今回は彼の代表作で有る「九雲夢クウンモン」をもう少し詳しく紹介したいと思います。
以前にも述べた様に、世界的に「チュンヒャン春香伝」の次に知られており、名作として人気を誇って居ます。
長編なので、かいつまんでの紹介になりますが、宜しければお付き合い下さい。
舞台は中国の唐の時代です。
西域から仏教を伝えに来た六観大師が、南岳衡山・蓮花峰に法堂を建てて、仏教の説法を行いましたが、洞庭湖に住む龍王もこれに出席する事になりました。
六観大師は弟子であるソンジン性真を龍王にお礼に送りましたが、そのお返しとして龍王の夫人が、パルソンニョ八仙女(八人の仙女)を六観大師に送りました。
龍王のおもてなしにすっかり酔いが回ってしまったソンジンは、途中で蓮花峰を見て回った 8人の仙女にめぐり会い，優しさにほだされ，情を通じる様になってしまいました。
それからと言うもの、寺社に戻って来たソンジンは、仏門の寂寞さに疑問を感じ、学問に身が入らず怠ける様になってしまいます。
俗世の富と名誉を願う様になってしまった彼の姿を見た師匠の大師は大いに怒り、とうとう八人の仙女と共に地獄に追放してしまいました。
地獄の閻魔大王がこれを憐れみ，特別に赦して彼らを地上の世界へと送り返しました。
ソンジンはその日のうちに、淮南のヤン楊処士の子どもで有る、才気に富むヤンソユ楊少游に生まれ変わりました。
ヤン楊処士は彼が産まれて間もなく神仙に成る為、出家してしまいました。
父なし子として育ったヤンソユは、15歳の時に科挙を受けに行く途中、ファウム和音県に至って、チン秦御史の娘チンチェボン秦彩鳳と出会い、お互い心を通じ合わせ、婚約を誓います。
その頃、クサリャン九士良が反乱を起こして、ヤンソユは藍田山に避難しましたが、そこで道士に出会って音律(音楽)を学びました。
一方のチンチェボン秦彩鳳は父が死に、役人に捕えられて京の官衙に連れて行かれました。
翌年、再び科挙を受けに京に上がったヤンソユは、洛陽の天津橋の詩会に参加し、キーセン妓生のキェソムウォル桂蟾月と縁を結びました。
京の官衙に到着したヤンソユは、母親の親戚であるトゥ杜鍊師の斡旋で、琴を奏でると言う口実で、女官を装って女装し、チョンサド鄭思道の娘、チョンギョンペ鄭小姐にコッソリ会う事に成功しました。
科挙に合格したヤンソユは鄭思道の婿に決まり、チョンギョンペと結婚する事に決まりましたが、チョンギョンペは女性と偽って自分と対面すると言う侮辱を自分に与えたヤンソユへのリベンジとして、侍女で有るカチュンウン賈春雲を天女に化かしてヤンソユを誘惑させて、2人に契りを結ばせる様に仕向けました。
こうして彼は、カチュンウンとも懇(ねんご)ろになってしまいます。
丁度この頃、河北の3人の王が反乱を起こそうと立ち上がりましたが、ヤンソユが節度使として赴き、これらを取り締まり鎮圧しました。
その帰りに、キェソムウォル桂蟾月に会い激しく愛を契りましたが、翌朝起きて見ると河北の名妓(キーセン)チョクギョンホン狄驚鴻でした。
2人の女性と後日を約束して上京したヤンソユは、礼部尚書の任に命じられました。
一方、チンチェボンは京に捕えられて来て宮女になりましたが、ある日、皇帝が施した宴会の席でヤンソユを見て、詩を即興で作り、皇帝を驚かせました。
理由を聞いた皇帝は、チンチェボンとヤンソユの関係を知り、彼女を赦し、皇帝の妹であるランヤン蘭陽王女とチンチェボンは義姉妹の契りを結びます。
ヤンソユは、ある日の夜にランヤン蘭陽王女の笛の音に応えたのが縁となり、王女の婿(むこ)に選ばれますが、彼はチョンギョンペとの婚約を理由に断って、皇帝の怒りを買い牢に繋がれます。
その時、吐蕃の王の軍勢が攻めて来たので、急遽ヤンソユが大元帥になって出陣しました。
彼は陣中で、吐蕃王が送った女性刺客で有るシムヨヨン沈梟煙と縁を結び、ヨヨンは後日を約束し、師匠の元に帰りました。
ヤンソユはペクロクダム白鹿潭で、龍王の娘で有るベクルンパ白凌波を助け、彼女ともまた縁を結ぶ事になりました。
一方その間ランヤン王女は、ヤンソユに婚約を破棄されショックで傷心して居るチョンギョンペに会って、その人となりに感心して、義姉妹の契りを結び、チョンギョンペを第1王女、ヨンヤン英陽王女に据えました。
吐蕃の王の軍隊を破り、帰って来たヤンソユは衛国公に任ぜられ、ヨンヤン王女、ランヤン王女と結婚した後、チン宮女がチンチェボンで有る事を知り、彼女とも同衾し、愛を契りました。
ヤンソユは、故郷に置いて来た老母を訪ね、洛陽に立ち寄ってキェソムウォルとチョクギョンホンを連れて来ました。
戻って来るとそこには、シムヨヨンとベクルンパも訪ねて来て居ました。
彼は何と2妻6妾を率いて一家和楽、ありったけの富貴功名を享受しました。
ある日、誕生日を迎え終南山に上がって歌舞を楽しんだヤンソユは、歴代のヒーローたちの荒廃した墓を見て、ふと人生の無常さを感じ、想いに耽(ふけ)りました。
ここに、件(くだん)の9人が人間の世界の無常感と虚無感を論じ、将来修行して永遠の命を求めようと話しをして居た時、かの六観大師が訪れ問答するうちに、ヤンソユは夢から覚め、師匠の前に居る事に気付きました。
本来のソンジンに戻って、前世での罪を悔い、六観大師の教えを受けますが、そこに8人の仙女が訪ねて来て、彼女らも六観大師の教えを求めました。
ここに、六観大師が説法を施し、ソンジンと八人の仙女は徳を悟り、涅槃(ねはん)の境地に至り、極楽世界に戻って行きました。
(おしまい)
如何でしょうか？
簡単にあらすじを追っただけなので、登場人物が多く、イメージが湧きにくいかも知れませんが、かなり破天荒な内容で、問題作です。
自由奔放な主人公を初め、8人の女性たちもイキイキとした女性として描かれて居るので、現代に於いて映画化・ドラマ化しても面白い事でしょう。
ドラマ「星から来たあなた」が「九雲夢」をモチーフとして書かれ、パロディーと言われて居ます。
ドラマ中にも小説が登場します。
また、韓国では同名のゲームも存在し人気です。
<参考文献>
한국민족문화대백과사전
나무위키
다빈치 지식지도 원문보기
구운몽(김만중) 요약 및 서평
