4章 韓国朝鮮の文化ー12
南北朝鮮の国花
今回は国花について見たいと思います。
ちなみに日本では国花は制定されておらず、桜や菊が国を代表する花と言われて居ます。
まず韓国の国花ですが、韓国でも国歌同様、憲法に指定は有りません。
なので、あくまで慣習によりますが、木槿ムクゲ(無窮花무궁화)が国花とされて居ます。
木槿ムクゲ(無窮花ムグンファ무궁화)はアオイ科の耐寒性の落葉低木で、花は一重・八重など多様で、花の色も白・ピンク・赤・紫など多様であり、カラフルな模様の花を咲かせる花です。
花が7月から10月までの約100日間、長く咲くので韓国朝鮮では無窮花と言う名前で呼ばれる様になったとされます。
学名はHibiscus syriacus L. (ハイビスカス、シリアクス)です。
そう言えば何となくハイビスカスに似てますね。
原産地は中国ですが、古くから朝鮮に伝わり、平安時代に日本にも伝わり、日本でも愛される花です。
韓国では品種改良などにより、200種類もの品種が有るそうです。
漢字では木槿、槿花と書き、木槿花とも書きます。
その他、舜花、花奴、薫華草などの名前も持ちます。
花言葉は「信念」「新しい美」「恋のとりこ」などで、韓国ではその名の通り『限りない』です。
ちなみに韓国やハングルの『ハン』とはひとつ、大いなる、限りないなどの意味が有りますが、それに一脈通じて居ると言えます。
韓国での花言葉とは異なり、花は朝に咲いて夕方になる花(朝開暮落花)として『朝槿』と言い、短命を象徴する花として中国では否定的に見るそうです。
しかし、ひとつの花が萎(しお)れても、新しい花が繰り返し咲くので、何事にも挫けない我が民族の民衆の気象を表すとして、我が国の代名詞として「槿域クンヨク」や「槿花郷クンファヒャン」と言う雅名:雅号が有る事を、第1章の記事で書きました。
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朝鮮半島に古くからムクゲが多く育つと言う中国の文献記録は多く、最も古い記録は「山海経」が挙げられます。
この本は、紀元前8~3世紀の春秋戦国時代に書かれた地理書と伝えられ、東晋の郭璞がそれまでの記録を総合、整理した物です。
この本に「君子の国に薫華草あり、朝に咲き夕方に散る(君子之國有薰花草朝生暮死)」という記録が有ります。
君子国は古朝鮮を指し、薫華草がムクゲを指すとされます。
この様に、古くからムクゲが我が国に有った事を知る事が出来ます。
新羅時代の文献にも多く出現し、朝鮮王朝、世宗の時代のカンフイアン姜希顔が著した朝鮮最古の花草図鑑「帳養花小錄」にも「我が国には、タングン檀君が建国する時、ムクゲ木槿花が初めて出て来た為、中国でも我が国を『ムクゲの国(クンヨク槿域)』と呼ぶ」と有ります。
朝鮮王朝の王室花を梨の花にした事で、一時縁が遠のきましたが、近代になって国歌を創作する時に「ムクゲ三千里華麗江山」と言う一節が入り、民衆に広く我が国を象徴する花として認識される様になったと言います。
日本の「ダルマさんが転んだ」の朝鮮版で「ムグンファの花咲きました♪」が有ります。
ドラマの題名にもなって居ます。
<ドラマ ムグンファの花咲きました>
余談ですが、世界を風靡したドラマ「イカゲーム」の最初のゲームになった事から認知度が一挙に増しました。
朝鮮では漢字で無窮花・無宮花・舞宮花(全て読みはムグンファ)などと使われて来ましたが、この漢字は中国・日本では使われません。
この語の由来としては2つ説が有り
❶木槿モックンが訛(なま)って「ムグン」と言う純朝鮮語になり、それに漢字を当て嵌めたと言う説、
❷ 純朝鮮語(固有語)でムウゲ무우게、 ムゲ무게、 ムガン무강、 ムガン무관、ムクゲ무구게などと呼ばれたのが変化したと言う説などです。
この内の『ムクゲ무구게』が日本語の読みで有る『むくげ』の語源になったとも言います。
ムクゲは育て易く、アブラムシを寄せ易い為、前近代には田畑の害虫除けに、畝に多く植えたそうです。
逆に言えばアブラムシが付き易い為、観賞用には害虫予防が必須だと言います。
斯く言う我が家の近くにもムクゲが植えられており、南国情緒タップリで長い期間咲き乱れるムクゲを見る度に、祖国を見るかの様な錯覚に囚われます。
それ程、日本でも一般に愛される花だと言え、古くから松尾芭蕉の俳句などにも登場します。
韓国ではこのムクゲが近年、普通に見る事が少ない事から、国花をチンダルレ(ツツジ)に変更すべきではとの意見も出てる事も記して置きます。
次に共和国の国花を見たいと思います。
共和国の国花をツツジの花と思っている人が多いですが間違いで、共和国の国花はモクランコッ목란꽃です。
共和国でも韓国と同じように、解放以後1964年頃までムクゲが共和国の国花でしたが、モクラン木蘭の花に変更されました。
共和国の『朝鮮語大辞典』(2007)には、「モクランコッ」は「木蘭の花。芳醇で美しい白い花で朝鮮の国花。金日成主席が自ら名付けた花の名前である 」と有ります。
モクラン木蘭の花はモクレン木蓮、山モクレンとも呼び、学名はMagnolia sieboldiiで、日本語ではオオヤマレンゲ大山蓮華です。
朝鮮半島では自生種として、咸鏡北道、両江道などの高山岳地帯を除いた海抜1400m以下のすべての地域に広がっており、中国と日本などにも分布して居ます。
オオヤマレンゲ(ハムバッコッ함박꽃)とも呼ばれる広葉樹の高木で、5〜6月に6〜9個の白い花びらに黄色の雌しべ、紫の雄しべの直径7-10㎝の花が咲きます。
そして10月頃に芳醇な匂いの実をなします。
韓国の「国語大辞典」(1992年)にも「白モクレン」を「木蘭モクラン」とも呼ぶと有ります。
江原道カンルン江陵地方では、昔から白い山モクレンをモクラン木蘭と呼ぶそうです。
一説に依ると1964年5月、金日成主席が黄海北道の保養所に立ち寄った時に、満開の山モクレンの花を見て、この木の名前を「モクラン木蘭」(=木に咲く蘭)と呼ぶ方が良いとした事に由来したと言われて居ます。
共和国がモクラン木蘭の花を正式に国花に指定したのは、1991年4月10日と有ります。
モクラン木蘭の花はムクゲと共に、古くから朝鮮を象徴していた花の一つで、南北朝鮮の人々が好きな花のひとつだったと言われており、ソウル光化門駅の前にも花が咲いて、市民の耳目を捉える事が多いそうです。
何と無くムクゲ木槿にも似ています。
モクランの花言葉は「清純」「自然への愛」「崇高」「忍耐」「威厳」「恥じらい」などです。
余談ですが、金日成がこよなく愛した花と知られるモクラン木蘭の花は、彼と関連が有る共和国の大型建築物には、ほとんど(モクランの)花模様が入って居ます。
錦繍山議事堂、革命史跡地をはじめ、
95年8月に板門店北側地域に建てられた金日成の直筆記念碑にも、彼の生年齢を象徴する82本のモクラン木蘭の花が刻まれて居ます。
上記の様に日本でも高山に自生しており、広く栽培されて居ますので、機会が有れば探して見てはいかがでしょうか。
参考までに世界の国花を一部引用します。
<参考文献>
나무위키
한국민족문화대백과사전
エーザイ 世界の国花
Wikipedia
국가기록원 나라꽃 무궁화의 내력
연합뉴스 무궁화는 한국의 국화로서 자격이 있는가?"
북한의 나라꽃 ‘목란’
한겨레 북한의 국화는 목란꽃 / 전수태