<ドラマ 客主のチャンヒョク>
 
ワンポイントコラム
<韓国朝鮮歴史のトリビア>
170.朝鮮の巨商たち
 
 
 
朝鮮王朝時代、国家的には農本主義を表明し商業を抑制しましたが、朝鮮後期に差し掛かると商品貨幣経済が盛んになり、商人、とりわけ大きな富を手に入れた巨商たちの活動が活発になります。
 
今回は我が国で最も活発な活動で、我が国を代表する商人の代名詞ともなった
開城商人:別名松商ソンサンを始め、
義州商人:湾商マンサン
ソウルと仁川を中心に活動した商人:京江商キョンガンサンの3商人たちについて見てみましょう。
 
<商人の分布域図>
 
1.松商ソンサンについて
 
松商は高麗と朝鮮時代に顔城を中心に活動した商人です。
開城を松都と呼んだので、松都商人松商と呼ばれました。
 
開城商人、松商は市廛商人と私商に分類する事が出来ます。
 
市廛商人はソウルのユクウイジョン六矣廛およびその他の市廛商人と同様に官に対して一定の負担を負う代わりに禁乱廛権(独占権)の特権などの特典を受けました。
 
<ドラマ 巨商キムマンドク>
 
私商は朝鮮後期国内の商業界を繋ぐ広範かつ組織的な商業網を持っており、各地に『ソンバン松房』と呼ばれる支店を置き、それらを介してその地方の生産品を買い占め、または地方の商品を販売しました。
 
開城で松商が隆盛したのは、まず高麗時代に開城が世界に開かれた国際貿易都市だった事に起因します。
 
<ケソン簿記帳簿発見のニュース>
 
開城のピョクランド碧瀾渡には中国商人を始め遠くはアラビア商人達も行き来して、一大貿易港として機能しました。
朝鮮王朝になると政府は商人達を始め住民を漢城(ソウル)に強制移住させましたが、従わない者達は開城の土地も広く無い為、商業に従事するしか有りませんでした。
 
ましてや開城は朝鮮王朝にとって高麗王家を支持する「反逆の地」で有り、あらゆる差別を受けたので、中央政府への反骨精神も作用し強固な商業コミュニティを構築せざるを得ませんでした。
 
<朝鮮の手形 於音オウム>
 
こうした様々な要因が重なり開城商人は商業で次第に国内で力を付けて行きます。
彼らは独自の貨幣を流通させ、独自に信用手形を発行流通させるなど商業網を構築しました。
 
これらの松商は国内商業界だけでなく、外国との貿易を通じてかなりの資本を蓄積し、今日の複式簿記と同様の『開城簿記』を考案するなど、商業術の優れた商人として君臨しました。
 
主な商品は衣料品・陶磁器・人参などで、特に高麗人参は遠く中国・日本に輸出されて薬用として珍重されました。
 
<ドラマ 客主>
 
日帝の植民地時代にも近代的工業製品を主に扱っている日本の商人たちに圧倒されながらも、開城の商人たちは先住民族の商人として対抗して、彼らの根拠地となった開城やソウルの鐘路には、日本人がなかなか浸透しないように団結しました。
 
以前、開城の地理のコマでも紹介しましたが、開城は日本人居留民が1番少ない都市でした。
 
2.湾商マンサンについて
 
湾商とは朝鮮後期に中国の清国を相手に交易活動をしていた義州の商人を指す言葉で、他に류만柳灣リュマン又は만고灣賈マンゴとも呼ばれました。
 
<イムサンオク>
 
朝鮮王朝前期には所謂(いわゆる)朝貢の形式をとった公貿易が有っただけで私貿易は一切禁止されました。
即ち燕行使(中国訪問の使者)の進貢と下賜によってのみ国家間の必要な物品が交換され、密貿易も殆ど行われて居ませんでした。
 
しかし、17世紀頃から朝鮮国内の商業が著しく発達するにつれ、金属貨幣の全国流通に加え民間の商人を通じた清との密貿易が活気を帯び始めました。
 
鴨緑江左岸の義州は、中国との国境の町であり、朝鮮の燕行使が本国を離れ、中国の使臣が朝鮮に入ってくる関門として政治・外交上の重要な地域で有っただけでなく、朝鮮・中国間の貿易の中心地としても重要視されて居た所でした。
 
<ドラマ サンド商道より>
 
従って燕行使の往来に付随する形で朝鮮と清両国の商人、すなわち燕賈(えんこ:中国商人)湾商たちによって中継貿易が発達し始めたのです。
 
民間商人の私的な取引活動は、
17世紀に『開市貿易』として開始され、
再び密貿易で有る『後市貿易』としてに発展する事により、急激に進展しました。
 
ここで「開市」は公貿易「後市」は一種の密貿易を指します。
 
湾商が中国市場で商品を購入して来ると、国内最大規模の商人で有る開城商人:松商はこれを国内で売って、逆に国内の商品は松商が生産地で買い占めします。
そして中国への輸出はまた義州商人:湾商が担当して売却する協力関係の構造をなして居た様です。
 
 
後に湾商は中国の『チェクムン柵門後市』でも大きく活動しました。
「柵門」は中国九連城と鳳凰城の間に設けた税関・関所で、柵で囲った事からそう呼ばれました。
 
元々貿易は禁止されて居ましたが、旅費充当や歳入確保の為、朝鮮王朝政府から目こぼしされ、貿易の一大拠点になったのです。
 
湾商燕行使が往来する度に、銀と高麗人参を持って密かに一行に挟まって行き、チェクムン柵門の清商人と交易をしました(柵門後市)。
 
開城・平壌・安州の商人たちも活動しましたが、地理的に有利だった湾商の活動が最も目立ちました。
 
 
後市貿易の開発は清の商人達との間に債務問題などの副作用を起こし、朝鮮王朝政府は幾度か義州商人:湾商との貿易を禁止させたりしましたが、実効を上げられませんでした。
 
そこで朝鮮政府は1754年(英祖30)折衷案で、チェクムン後市貿易を再開させましたが、これを湾商にのみ許可したので、湾商後市と呼ばれました。
 
湾商後市は一時(1787年)禁止される事も有りましたが、1795年(正祖19)再開され、旧韓末まで盛行しました。
 
しかし、1876年の開港後、朝鮮に浸透した日本資本を筆頭とする外来資本に押されて解体の憂き目に会いました。
 
イビョンフン監督の往年のヒットドラマ 「商道」の主人公のモデルイムサンオクが有名です。
 
 
3.京江商キョンガンサンについて
 
京江商とは朝鮮後期、水路を利用してテドンミ大同米の運搬及び各種商業活動に従事していた商人を指します。
 
 
主にトゥクソムからヤンファジン楊花津に至る漢江の一帯地域を『京江』と呼びましたが、ここを根拠地に、政府の税穀と両班層の小作料などを運搬して運賃を取りました。
 
そのような賃運活動は朝鮮前期にもありましたが、活気を帯び始めたのは大体17世紀以降でした。
 
「承政院日記」によると、1702年(粛宗28)には、200~1000石余りを運搬する事が出来る船300隻とされ、これらが運搬する穀物はソウル需要のかなりの部分を占めました。
 
従って京江商がソウル地域や全国の経済に占める割合は非常に大きかった事を知ることが出来ます。
しかし、彼らは正当な運賃に加えて、運搬する穀物に水増しして穀物を増やす『和水ファス』、持ち運び米の一部または全部を着服する『偸食トゥシク투식』
船舶を故意に沈没させる『ゴペ고패』などで不正な利得を取る事も有りました。
 
これらの不正行為により政府の税収が減少すると、朝廷は新しい漕運制度を検討する事となり、1789年(正祖13)には、『舟教司』と言う機関をを設置するなどの措置を取りました。
 
 
しかし、既にかなりの資本としっかりした組織を備えていた京江商から漕運権を完全に剥奪する事は出来ませんでした。
 
それは彼らの漕運活動が停止した場合、三南(慶尚・全羅・忠清)地方の税穀と両班層の小作料運搬に多大な支障を来たす恐れが有る為でした。
 
京江商人たちは運搬業以外にも、張り巡らされた組織を利用して、全国各地の物産を集めてソウルで販売したり、ソウルの物を各地方に販売するなど、水路を通じた運搬手段を最大限に活用して富を増やしました。
 
主な取扱商品は穀物とオヨム魚塩(漁業類)・木材・氷・陶器などでしたが、米穀が最も代表的な商品でした。
 
<伝統的な行商人ポブサン>
 
また、莫大な資本を利用して、京江一帯に集結する米穀を買い占めて、ソウルの米穀価格を高騰させた後、高価で販売する事により暴利を貪ったりしました。
 
その様な米穀の買い占めが頻繁になると需要層の強い反発を呼び起こし、1833年(純祖33)にはソウルで大規模な「米騒動」が起こったりしました。
 
 
このような現象は、当時の商業資本が『都賈行為(卸売り)』を頻繁にする程大きくなった事を意味し、併せてその都賈行為に対する需要層の反発も少なくなかった事を示して居ます。
 
一方京江商は船舶を購入、改造して使用したり、直接木材を購入して新たに建造したりしました。
こうして熟練した造船技術を蓄積する事になり、莫大な資本をバックに、政府が必要とする船舶まで建造し調達するなど、造船業の分野にも進出しました。
 
 
これらの商業資本は、単に排他的な利権や買い占めなど、前近代的な商人から脱し、新しい分野への再投資という近代商業へ移行される過程の様相を呈して居ました。
 
京江商を描いたドラマではコチラのブログでも紹介したチャンヒョク主演の「客主」が有ります。
 
↓↓レビュー記事はコチラ↓↓

 

コチラのドラマは開港前後の歴史を扱って居て、その頃の商人たちの動きが良く分かります。

 
以上の様に朝鮮王朝時代において、商業資本はダイナミックに展開しましたが、開港以降、前述した様に日本資本を始めとした欧米資本によりジリ貧を辿る事になりました。
 
<参考文献>
한국민족문화대사전

강상송상만상내상유상송방(松房네이버블로그

 

図書『韓流映画・ドラマのトリセツ』発売開始しました。よろしくお願いします


#韓国ドラマ #韓国時代劇ドラマ #韓国映画

 愛のムチならぬ愛のポチお願いします ↓

 にほんブログ村 テレビブログ 韓国ドラマへ  PVアクセスランキング にほんブログ村 

ブログ村に参加して居ます↑

韓国・朝鮮よもやまばなし - にほんブログ村