<お正月ドラマ カットゥギ>
 
ワンポイントコラム
<韓国朝鮮歴史のトリビア>
105.正月⑥ソルラル
 
 
 
 
前置きが3回続きましたが、
いよいよ今回は韓国•朝鮮のお正月について
見たいと思います。
 
↓↓お正月の歴史、まだの方はコチラ
朝鮮ではお正月元日,元旦,元正,元新,元朝,正朝,歲首,歲初,年頭,年首,年始,愼日,怛忉,旧正など色々な言葉で表します。
 
しかし1番使われる言葉は설ソル설날 ソルラルでしょう。
 
 ソルの語源は幾つか説が有り
❶年齢を数える言葉の살サル歳がなまった説
❷最初の日なので見慣れないと言う意味の설다ソルダから由来した説
❸他にも最初の선다ソンダから来た説
などが有ります。
 
<チョンウォル正月テーポルム(15夜)祭り>
 
我が国では元々お正月は정월대보름チョンウォルテーポルム(15夜の小正月)まで祝いました。
日本もそうですが、満月を祝うのはそれが農耕社会で豊かさを象徴するからです。
新年の豊作を願い祝ったのです。
 
以前朝鮮のお盆とも言える추석秋夕チュソクでも述べましたが、中でも特に小正月と8月のチュソクは格別でした。
 
ソルラルの記載は3世紀の中国史書「三国志」魏書東夷伝に既に見え、「三国遺事」「高麗史」にも紹介されて居ます。
朝鮮王朝時代にはソルラル・寒食・端午・秋夕を4大祝日としました。
 
<チェーサ祭祀>
 
儀礼として
①元旦の朝にはまず先祖に儀礼をする、
 
②家の平安のためにアンテク安宅と言う굿クッ(巫女の儀式)を行う、
地域によってはわら人形を作って、お腹に厄の人の誕生日を書いた紙とお金を入れて交差点に捨てる、
 
③小正月に家庭の平和と豊かさのため「リョングンマジ룡궁맞이竜宮迎え」と言って、きれいな紙に白飯を包んで水に投げ新年の魔除けをする、
 
④他に小正月の夕方に月の形や色を見て農作の占いを見る、
 
などが有りました。
 
お正月関連の俗信•迷信も多く、
❶大晦日の夜には眠ると眉毛が白くなるので寝ない。
 
<トック>
 
❷歳事食の代表的な食べ物トック(雑煮)を食べないと年齢を喰えない。
 
❸女性が朝早く他人の家に出入りするとその家に運がない。
 
❹お正月夜明けに外に出て까치カササギの音を聞くと縁起が良く、カラスの音を聞くと厄になる。
 
<縁起物として飾ったカササギと虎の絵>
 
❺お正月の夜にヤグァングィ夜光鬼という鬼が来て靴を履いて靴を失った人は、その年に縁起がない。
地域によっては小正月の夜、靴を隠したりひっくり返しておく。
 
❻年始に女性はノルティギ(朝鮮のシーソー)をする。すればその年に水虫にならない。
 
❼大晦日頃から小正月まで凧揚げをする。
小正月になると「エクヨン(厄鳶)」として、胴や尾に「送厄」または「ソンエクヨンボク送厄迎福」などの文字を書いて飛ばす。
 
<凧揚げ>
 
❽立春の日に大麦の根を掘り占い、根が3本以上であればその年の農業は豊作、2本であれば平年作、1本であれば凶作。
 
❾年始十二支を有毛日と無毛日に分ける。
元日は有毛日で、毛のある干支の日は豊作が待っている。
その中でも丑•卯•寅の日がその中で1番。
 
➓年始の子〜亥の日まで吉凶となる仕事が有りそれを守る。
 
他にも書き切れない程の迷信が有りますが、これらは民俗信仰と言え、仏教を否定した朝鮮王朝時代には宗教的な拠り所が無かったので、この様な迷信が盛行しました。
 
ご存知の通り今では巫教ムギョとして認知されて居ます。
 
<ソルビム>
 
ソルラルの服飾と食べ物としては
①お正月に着る服をソルビムと言いますが歲庇廕セビウムが語源とされます。
お正月には皆、色艶やかな服を着ます。
 
<正月歳事食>
 
②ソルに食べる歳事食で1番はトックです。
他にも朝鮮はお餅が豊富なので色とりどりのお餅を食べます。
その他チヂミ•シッケ甘酒・スジョングァ(シナモンティー)、清酒など。
 
③小正月には五穀飯とナムル、ボクサム(白菜•海苔でご飯を包んで食べる)、もち米を蒸してナツメ•栗•蜂蜜などを蒸し松の実を掛けるヤクパプ薬飯などが代表的です。
 
ソルの遊び
大晦日から小正月頃まで楽しみますが、
 
❶凧は大晦日頃から小正月まで楽しみます。
 
❷他に朝鮮のすごろくユンノリ、
 
 
❸ノルティギ(朝鮮のシーソー)、
 
❹スンギョンド陞卿図遊び、
〜ジョンギョンドなど多くの名前で呼ばれ、主に両班家の若者たちと女性が遊んだ出世すごろく
 
❺トンチギ(擲錢、投銭)

〜銅銭を投げて遊ぶ遊戯

などです。

 

<ノルティギ>
 
❻小正月にはさらに多くの遊技が行われます。
チシンパッキ地神踏み•綱引き•当コラムでも紹介した石戦•トーチの戦い•仮面劇タルチュムなど様々な遊びが有りました。
 
特に小正月遊びには회불싸움トーチ(たいまつ)の戦いが絶頂をなしたそうです。
 
<トーチの戦い>
 
近代に入って我が国には旧正月と新正月、二重過歳とも呼ぶ2つのお正月が有りました。
 
1896年1月1日(旧暦1895年11月17日高宗32)にグレゴリオ暦が実施されても朝鮮の伝統的な祝日ソルラルは続きましたが、日本は朝鮮の伝統文化抹殺政策で、お正月のような歳事祝日さえ抑圧しました。
 
<トンチギ(擲錢、投銭)>
 
餅つき場を閉鎖、ソルビムする子供たちに泥を塗るなど。
一方、日本の祝日•儀式を韓国に移植、強制。
お正月(四方拝)の他に日本の祝日、天長節•明治節•紀元節などです。
 
解放後も韓国では二重過歳の浪費性を問い、産業化時代に来ては外国との貿易通商関係を問い新正月を推奨しました。
一方で旧暦のチュソクを休日にし、矛盾が有りました。
 
それでも伝統を愛する庶民の熱意は砕けず、遂にソルラルは1985年「民俗の日」に指定され、国家的な祝日になるに至りました。
そして長い闘いの末、1989年から本名であるソルラルの名前を取り戻しました。
今では新年は1日だけ休み、ソルラルは3日間公休で帰省をします。
 
<民俗村のソルラル>
 
近年ではソルラル連休を利用して国内外の旅行をしたり、民俗博物館や民俗村を家族単位で訪ねる文化が生成されて居ます。
 
中国同様、新年をダブルで祝う文化を作りましたが、キリスト教の新年とも言えるクリスマス同様、慣れれば問題は無い様です。
 
共和国でも伝統継承の考えから1989年より1日公休、2003年からはソル名節(ミョンジョル)として3日間の公休日にして民俗文化を楽しむ日として居ます。
 
<共和国のソルラル>
 
片や中国と言えば春節、春節と言えば爆買いと、彼らの消費行動が世界経済に影響を与える時代になって居て、恐るべし中国です(笑)。
 
今や日本を除くアジア各国で旧正月は市民権を得て居ます。
 
最後に、では何故日本(沖縄を除く)では新正月が根付いたのでしょうか?
 
これは深奥なテーマで、紙面を割く余裕は有りませんが簡単に述べると、
 
①明治政府が国民統合として民間歳事を衰退させ、天皇制確立の為に四方拝•天長節•明治節•紀元節などを強力に推し進めた点、
 
②アジアで唯一自力で近代社会に突入、外勢に強要された他国とは異なる点、
 
③そしてつとに言われるのが、
日露戦争を前後して在来地主層が政府の近代化政策に積極的に賛成•協調した
などが指摘されて居ます。
 
尚、沖縄では他のアジア同様、陰暦が好まれて使われます。
 
陽暦と陰暦の話しを知りたい方はコチラ
新年に新たな気持ちで物事にあたる事の出来るアジア各国の「お正月」これからも我々の伝統文化の継承として大事にして行きたいですね。
 
コチラの記事もご覧下さい。
韓国朝鮮で旧正月を祝う謂れです。
 
 
<参考文献>
한국민족문화대사전 
연합뉴스 세배하고 떡국 먹지만 귀성문화는 없어…같고도 다른 북한 설
양력 명절이 일본에서만 정착한 이유
 
 
<仮面劇タルチュム>