<ドラマ 客主>
ワンポイントコラム
<韓国朝鮮 歴史のトレビア>
25.旅閣と客主
前回、主に庶民の利用が多かった
酒幕チュマクを見ましたが、その大型版且つ豪華版として旅閣リョガクや客主ケクチュが存在しました。
↓↓酒幕チュマクについてはコチラ↓↓↓
<旅閣・客主>
と言っても豪華ホテルと言う訳では無く、
大資本商人が副業として
旅館業を営んだので有り、主な仕事は地方都市の貨物集散地に存在し、
❶往来する商人達の為に貨物の卸売り(問屋業)や保管、倉庫業、委託販売業、運送業などの商業機関としての業務や
❷貸し付け、富裕な両班の預金預かり、オウム(於音)と呼ばれる朝鮮で独自に発達した手形などを発行したりする金融業などの業務です。
↓↓手形が発達した経緯↓↓↓
旅閣と客主は殆ど同じで、客主と一括して呼ばれたりもしましたが、扱う品目や資本の大きさで区別されました。
旅閣はソウル周辺の河口や港湾地などで
穀物、魚類、塩、煙草、海山物など嵩張る荷物を引き受け、大きな倉庫や馬房牛房마방우방なども持ち、宿泊業も掛け持つなど大きな資本が特徴でした。
ハンガン漢江の船着き場一帯をオーガン五江と呼びましたが、上記の業務を商う豪商達がひしめいて居たそうです。
<ソウル五江>
客主は「客商の主人」の略で、
旅閣と比べ小規模だったのが一番の特徴で、
主に軽い荷物、陸産物や地方特産品、薬材、皮製品などを扱いました。
機能面から보행객주(步行客主)と물상객주(物商客主)の2種類が有りました。
步行客主は高級で両班などが宿泊する宿泊を中心にした客主で、物商客主は商業・金融機関としての機能を持った客主です。
<客主の賑わい>
旅閣・客主は上記の業務を行い一纏めに
『客主』とも呼ばれましたが、
いずれも朝鮮で発達した褓負商보부상ポブサンと呼ばれる行商人の親方的な役割もしました。
他にも居間거간コガンと呼ばれる一種のブローカー(仲介業者)を通じて口銭クジョン=手数料を取りました。
<テーマパーク民芸村 内の客主>
特筆すべきは、上述の通り代金の立替え、
資金の融通などの貸し付け業務や地方間の決済代行を行った事でしょう。
先述の於音オウムや為替を意味する
환표(換標又は환간換簡とも)の発行や
引き受け業務、王室、高官、両班の為の預金業務も行いました。
正に『総合商売請負人』とでも呼べる存在です。
<興味深い見聞録>
旧韓末(1897〜1909)に我が国を訪れた
ロシア人の紀行文に面白い記載が有ります。
以前述べた通り、我が国には高額貨幣が無い為、旅行時には重い貨幣の山を持たねばならず、
著者も25kgにも及ぶ貨幣を担ぐ為に馬をもう1匹借り不便を感じて居ます。
しかし、一般の全ての内国人は、
旅行を始めて最初に泊まる旅館の主人に葉銭ヨプチョンの束を預けて領収書を貰った後、その以降はそれをお金の代わりに使用します。
<ドラマ巨商キムマンドク>
以降の旅館の主人は領収書に宿泊費や食費、
物品費などを記します。
そして旅人が最後に立ち寄る旅館の主人にその領収書を渡し残金をもらうのです。
旅行客や旅館が規則を破ったり悪用する事は一度も無かったと記して居ます。
この様な朝鮮全域における酒幕(旅館)ネットワークに著者も感嘆を禁じ得ずにいますが、
これらは長らく存在した我が国の財政組織、旅人宿主人連合会の素晴らしい簿記能力を見せてくれる一例です。
また全国の旅館主人達の組織が広範囲に一元化されて居たからこそ可能な事です。
<客主・酒幕>
この様に我が国の後進性は著者を当惑させると同時に、驚くほどの先進性を生んでいて特筆すべき物が有りました。
最後に我が国で旅館業が隣国と比べ発達しなかった理由を簡単に述べましょう。
原因は2つ有り、
1つは周知の通り朝鮮王朝が農本主義を採用し、商業発展を抑えた為、商業の発展が朝鮮後期になったと言う理由です。
↓↓ブログ参照↓↓↓
2つ目は両班などの有力者の邸宅がホテル代わりの役割をしたと言う理由です。
夕暮れ時に門を叩く旅人をもてなし食事や宿所に路銀まで、時には女の奴婢まで寝床に供用するのが士たる者の礼儀でした。
情報量の少ない時代において大事な情報を得る機会でも有りました。
前に紹介した江陵カンルンの船橋荘ソンギョジャンには10部屋(房)もの客間(행랑채行廊-)が有りました。
↓↓家の造り↓↓↓
正に無料のホテルが全国そこら中に存在したので高級旅館が不要だったと言えるでしょう。
高級なホテルが登場するのは外国人が増える開港期以降の事です。
以上、前近代における我が国の郵駅、院、酒幕(旅閣・客主含む)などの旅館事情でした。
<テーマパーク民芸村 内の客主>
<参考文献>
코레아1903년 가을 러시아 학자 세로셰프스키 대한제국 견문록
한국민족문화대사전
위키백과
나무위키
네이바블로그 객주와 여각 가온누리
ソウル城下に漢江は流れる
경북 청송에 재현된 객주문학관광 테마타운 '민예촌’
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