<ドラマ 不滅のイスンシン>
 

2 2 近- 英雄 李舜臣と壬辰戦争

 

 

 

  本年2023年の大河ドラマ『どうする家康』は今までの家康像を打ち破るべく、コミカルな展開で「人間家康」に焦点を当て、若いアイドル俳優松本潤を起用し、最近の研究結果も多く取り入れるなど、若者層開拓を第一の使命に挙げ、攻めの「大河ドラマ」色を鮮明に打ち出して居ます。

CGを多用するなどこれまでの大河ドラマのイメージからかなりの脱皮を図っておりますが、描写や演出が賛否両論で、必ずしも成功とは言えない状況が続いて居ます。

 

 

NHK大河ドラマは良くも悪くも「イメージ」と「視聴者層」が固定されており、刷新は新しい視聴者層を獲得する以前に彼ら盤石の視聴者層の離反を招きかねず、諸刃(もろは)の剣になりかねない危険を孕んで居ます。

とは言え、旧態依然のままでは公共放送の使命を果たして居るとは言えず、新しい視聴者層を開拓しようと言う姿勢は多いに共感出来ます。

 

私も見習う事の多い徳川家康の生涯ですが、1年間しっかと視聴させて頂こうと思います。

 

 

信長、秀吉、家康と日本三大武将が居ますが、誰がお好きですか?

日本では元々抜群の知能と成り上がりの秀吉が日本人随一のサクセスストーリーを体現して居るとして一番人気でしたが、朝鮮出兵が有るので評価が微妙ですね。

 

近年では日本に必要なリーダー像として求められている短気なリーダーシップの信長も人気ですが、暗殺されずにいたら朝鮮を侵略していたと言われています。

そうなると残るは出兵しなかった我慢・苦労人の家康

因みに明治政府により家康像は歪められ、人気復権は1980年代の山岡荘八の小説「徳川家康」によると言われています。

 

    <日本三大武将>

 

片やウルチムンドク乙支文徳カンガムチャン姜邯贊と並ぶ朝鮮三大名将の中で断トツ人気はリスンシン李舜臣将軍です。

丁度日本の戦国時代と重なります。

まさしく日本で文禄・慶長の役と呼ばれる壬辰倭乱(イムジンウェラン임진왜란),丁酉再乱(チョンユチェラン정유재란)(1592年〜1598)が舞台です。

 

時は第14宣祖(ソンジョ선조)の代、彼は壬辰の乱さえ無ければ名君と呼ばれる筈だったとも言われていますが、党派争いが始まった責任は棚上げしても、早々に国境義州(의주)まで逃げ名前を下げた上に李舜臣や戦いに奮闘する世子:15代王となる光海君(クァンヘグン광해군)の人気を妬みあらゆる邪魔をしたりで人気がありません。

 

この時代の宣祖と光海君との葛藤を描いたドラマとして「王の顔」が白眉です。

架空の観相をモチーフに、宣祖が光海君を嫌った理由を「王になるべき顔と、なってはいけない顔」と言うコンプレックスに求めており、当時の朝廷の空気を知るのに役立ちます。

 

光海君を若き聖君に描き過ぎたキライは有りますが、機会があれば是非。

 

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1592年、朝鮮侵略•明国占領の野望を掲げた豊臣秀吉が20万の兵を率いて朝鮮を攻めて来ました。

 

 突然の侵略に我が国の官軍は歯が立たず連戦連敗、国王宣祖も首都を防衛する考えを起こさず平壌、義州に逃亡しました。

 

陸地での敗北と打って変わり、秀吉の朝鮮全土占領の野望を妨げたのは李舜臣率いる朝鮮水軍の活躍です。

 

我らが李舜臣の三大海戦を挙げましょう。

 

閑山大捷(ハンサン한산대첩),

鳴梁大捷(ミョンリャン명량대첩),

露梁大捷(ロリャン로량대첩)です。

 

      <コブクソン(亀船) 実物模型>

 

閑山大捷は亀船コブクソンが活躍した

最初の闘い。

 

↓↓コブクソン亀甲船についてはコチラ

 

鳴梁大捷は謀略による投獄,白衣従軍後の危機に急遽復帰するも元均(ウォンギュン원균)の無謀な闘いにより水軍は壊滅状態、亀甲船は全部破壊、板屋船(パノクソン판옥선:朝鮮水軍所有の軍艦)も残り12隻になってしまい、心配した国王宣祖からの水軍解散の勧告に対して「臣尚有十二隻(臣にはまだ12 隻の船が有ります)有名な上奏でトコトンこだわり、決定的不利な状況を覆し彼の華麗なリーダーシップの元で見事柔能く剛を制すの言葉如く見事な勝利を納めた有名な闘い。

 

露梁大捷は秀吉の死により退却する日本軍相手に総攻撃し彼が斃れる最後の闘いです。

 

 <映画 バトルオーシャン>

 

韓国で2017年公開のチェ・ミンシク主演「鳴梁(ミョンリャン명량-バトルオーシャン)が未だ観客動員数トップを走っており、興行成績では2020年の「極限職業(극한직업)エクストリームジョブ」に抜かれた物の、人口5000万人中1700万人動員はもう無いのでは?と言われています。

一昨年続編閑山한산ハンサン 龍の出現』の撮影が終了、昨年韓国にて公開され評判でしたが、先日日本でも公開されました。

今後DVDもリリースされる事でしょうから未だの方は是非。

 

 鳴梁ミョンリャン映画レビューはコチラ

 

ハンサンの映画レビューはコチラ

 

 <ドラマ不滅のイスンシンのキンミョンミン>

 

キン・ミョンミン主演のドラマ「不滅のイスンシン」も亀船(거북선)の進水式の日に海に浮かべた途端船が沈んでしまい「안되!(駄目だ!)」と彼が叫ぶショッキングな場面を作るなど歴史歪曲が酷いとの批判は受けましたが、生涯と戦乱を丁寧に描いていて今でも熱烈なファンが居る程人気が有ります。

殊に最終回は圧巻,感動です。

 

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この時期を題材にしたドラマと言えば韓国で金字塔を打ち立てた不朽の名作「ホジュン(허준)も抜かせません。

朝鮮の医聖と呼ばれる彼の人生は斯くドラマチックでしたが、平均視聴率65.6%は日本の「おしん」並みです。

 

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<ドラマ ホジュン>

 

この戦争全体の三大勝利は

閑山大捷,幸州大捷(ヘンジュ행주대첩),晋州大捷(チンジュ진주대첩)です。

 

著名な人を挙げると義兵長・紅衣将軍(ホンイチャングン홍의장군)郭再祐(クァクチェウ곽재우)、官軍の権慄(クォンリュル권률)将軍、僧兵長・西山大師(ソサンテサ서산대사)、泗溟大師(サミョンテサ사명대사)=泗溟堂 惟政(사명당 유정)、妓生・桂月香(ケウォルヒャン계월향) 論介(ロンゲ론개)あたりでしょうか。

 

一時朴正煕の李舜臣びいき批判から韓国で元均(ウォンギュン원균)名将論が叫ばれましたが、現在では物の見事に粉砕されています。

 

無謀な秀吉の野望により引き起こされた理不尽な長期の戦いでしたが、見事退け数々の英雄を輩出したこの戦争をこれからも語り継ぎ、映画にドラマに描いて行く事でしょう。

 

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<参考文献>

集英社編 日本の歴史11

朝鮮史研究会編 朝鮮の歴史

キネマ旬報社 神田聡他訳 朝鮮王朝実録

キネマ旬報社 金両基 ビジュアル版 朝鮮王朝の歴史 

山川出版社 世界歴史体系 朝鮮史1

山岡荘八 徳川家康

東洋文庫 李舜臣 乱中日記

東洋文庫 柳成竜 懲毖録

한명기  광해군〜탁월한 외교정책을 펼친  군주