<ドラマ 王女の男ポスター>

 

2 2 近- 朝鮮の忠臣蔵 死六臣 生六臣、端宗の悲劇について

 

 

 

 

 

忠臣蔵をご存知ですか?

元禄14(1701)赤穂藩の若き藩主、浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が幕府供応役で有る吉良上野介(きらこうずけのすけ)の嫌がらせに遺恨を覚え、殿中で刀を斬りつける事件が発生。将軍綱吉は即日切腹と藩のお取り壊しを命じます。

 

<映画 大忠臣蔵より>

 

家老で有った大石蔵之介(おおいしくらのすけ)赤穂浪士四十七士は潜伏して機会を待ち、元禄15(1702) 旧暦1214日とうとう吉良上野介の屋敷へ討ち入りを果たします。

彼等は幕府より切腹を命じられますが庶民達の大喝采を浴び、江戸講談、歌舞伎、人形浄瑠璃など虚実入り混じりの物語として語り継がれました。

 

しまいには封建忠君思想を体現して居ると言う事で幕府さえもその後、自らの教化材料として重用しました。

今でも年末になると歌舞伎、ドラマ、映画等何かしらのメディアで取り上げられ日本人の琴線に触れ涙を誘います。

 

 <大忠臣蔵>

 

朝鮮にも朝鮮版忠臣蔵と呼ばれる有名なお話しが有ります。

それが死六臣、生六臣(사육신 생육신)サユクシン センユクシン です。

 

世宗の息子で病弱な第5 文宗(ムンジョン문종)が若くして亡くなると幼い端宗(タンジョン단종)1452年僅か11歳で第6代王として即位しました。

後ろ盾が少ない中、叔父の首陽大君(スヤンテグン수양대군)が権力を狙い、とうとう1年後にクーデターで実権を握りました。

 

<映画 観相士>

 

ソンガンホ主演の映画「観相士」は観相と言う占いをモチーフに、セジョ世祖(首陽大君)のクーデター過程を、それを阻止しようとする主人公とキムジョンソ金宗瑞セジョン世宗ゆかりの功臣達とのスリリングな闘いで絡ませ、観る者の手に汗握らせる展開で大ヒットしました。

 

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様々な圧力で案山子(かかし)となった少年王は耐え切れずその2年後譲位(上王に)し、7世祖(セジョ세조)が王位簒奪に成功しました。
 

<ドラマ 死六臣>

 

前述の祖父である第4 世宗は生前に幼い孫の端宗の行く末をおもばかって集賢殿の臣下達に補弼を依頼しましたが、1456,成三問(ソンサンムン성삼문),河緯地(ハウィジ하위지),(リゲ리개),柳誠源(リュソンウォン류성원),朴彭年(パクペンニョン박팽년),金文起(キムムンギ김문기)らは決起して世祖殺害と端宗復位に立ち上がりました。

 

<ドラマ 王女の男>

 

しかし裏切り者の密告により計画は絶たれ、酷く拷問を受け処刑されます。二君にまみえずとことん節操を守った彼等を死六臣(사육신)サユクシンと呼びます。

端宗は廃され次の年に寧月(ニョンウォル녕월)へ流配のち賜死(사사)されます(조선の自害命令はドラマでお馴染みですが服毒です)

彼等は長く汚名を着せられましたが、英祖(ヨンジョ영조)期に復権したそうです。

 

  <端宗 下放図>

 

その後世祖の王位簒奪を快く思わず生きながら隠遁した金時習(キムシスプ김시습),元昊(ウォンホ원호),李孟專(リメンジョン리맹전),趙旅(チョリョ조려),聃壽(ソンダムス성담수),南孝溫(ナムヒョオン남효온)らを生六臣(생육신)センユクシンと呼びます。

この時金時習が隠遁した金鰲山で朝鮮初となる小説「金鰲新話(금오신화)」クムォシンファ(クモシヌァ)を著した事は有名です。

 

↓↓3回に渡る記事はコチラ↓↓↓

 

 <朝鮮初となる小説「金鰲新話(금오신화)」>
 

世祖の死後、第8代睿宗(イェジョン예종),9成宗(ソンジョン성종)と早逝が続き、人々は王位簒奪の報いと噂したそうです。

 

仇討ちを見事成し遂げた赤穂浪士達と異なり、裏切りにより挙兵に失敗し、無念なまま終わるのが朝鮮らしい所です。

勧善懲悪が少ないんですね、中々正義は勝ちません()

ただ、苦しい拷問を受けても操を曲げない様(さま)は封建忠君思想の宣伝にうってつけです。

 

 

日帝時代李光洙(リグァンス리광수)の小説をはじめ映画、ドラマも多く作られており、2007年にKBSと共和国の朝鮮中央テレビの南北合作ドラマ「死六臣」が話題になりました。

最後まで朝鮮王朝に仕える事を拒み高麗王朝に殉じた鄭夢周(チョンモンジュ정몽주)と共に人々の尊敬を受けています。

 

 

他にこれをアレンジしたドラマとしてNHKでも放映した「王女の男」が有ります。

世祖暗殺を狙う役をパクシフが好演し人気でした。

さながら朝鮮王朝版ロミオとジュリエットの様な作りになって居ます。

 

このドラマは韓国に於いて最高視聴率25.8%を記録し、近年稀に見る大ヒットドラマとなりました。

フィクションながら史実を上手く加味し、人物の微妙なヒダを表現するなど人物描写が秀逸で有ると絶賛されて居ます。

韓国ヒュージョン史劇のレベルを示して居る秀作です。

機会があれば是非ご覧ください。

 

<ドラマ 王女の男 ポスターその2>

 

その後、朝鮮イチの暴君第10燕山君(ヨンサングン연산군),

 

↓↓燕山君についてはコチラへ↓↓↓

クーデターについてもコチラへ

 

その燕山君をクーデター(チュンジョン パンジョン中宗反正:중종반정)で廃した11中宗(チュンジョン중종),12仁宗(インジョン인종)と続き、

 洪明熹(ホンミョンフィ홍명희)の歴史小説で有名な盗賊林巨正(リムコクチョン림꺽정)が跋扈した混乱の時代の第13明宗(ミョンジョン명종)と続きます。

 

↓↓詳しくはコチラを参考に

 

この時代は一言で勲旧派(フングパ大地主)と地方儒生:士林派(サリンパ사림파)の戦いで4度の士禍(サファ사화〜士林の弾圧)の時代でした。士林派は酷い弾圧を受けますが、数を背景に最終的に権力を握ります。

 

↓↓士禍サファについてはコチラ↓↓↓

 

そして混乱のまま戦乱の時代に突入します。

 

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<参考文献>

岩波新書 松島栄一 忠臣蔵

集英社版 日本の歴史13

キネマ旬報社 神田聡他訳

          朝鮮王朝実録

キネマ旬報社 金両基 

   ビジュアル版 朝鮮王朝の歴史 

李殷直 朝鮮名人伝

山川出版社 世界歴史体系 朝鮮史1

平凡社 韓国 朝鮮を知る事典

리광수  단종애사

 

 
<ドラマ 王と私よりチョンテウ扮する端宗>