第2章 1 節 古代中世-⑦ 後三国と高麗
日本の歴史時代劇で何と言っても
一番の人気は戦国時代、
著名な戦国武将達が日本一(つまりは統一)を目指し戦いを繰り広げました。
元々戦国時代と言う言葉は
中国古代の春秋・戦国時代から採られましたが、日本の方がインパクトが有ります。
<ドラマ太祖王建のチェスジョン>
日本の様なスケールは有りませんが、
我が国の歴史でそれに近い物を
挙げるとなるとやはり
後三国(후삼국フサングク)時代でしょう。
新羅が衰退して各地域に豪族が群雄割拠して各々城主や将軍を自称し覇権を争いました。
やがて後百済(후백제フベクチェ)と
泰封(태봉テボン:後に고려コーリョ),
そして新羅(シルラ)の後三国が鼎立、
紆余曲折を得て936年高麗(コーリョ)が
統一する迄に下克上有り、
肉親による裏切り有りとドラマに最適です。
<後三国 勢力図>
韓国ドラマ「テジョワンゴン太祖王建(태조왕건)」はその過程を丁寧に描き、
主演のチェスジョン(최수종)を国民的俳優に
のし上げました。
太祖王建は各地の豪族をも
弾圧するのではなく政略結婚の形で包摂連合する形で国内統合を進めて行きました。
契丹により滅亡した渤海パルへ・パレ移民も
積極的に包摂します。
命脈の尽きていた新羅を武力で無しに
懐柔の上平和統合した事、敵対していた
甄萱(견훤キョンフォン)が息子の反逆で
亡命するや彼を保護しその息子を徹底的に
膺懲した事などの硬軟使い分けの上手(うま)さなども特記されて然りでしょう。
<ドラマ 千秋太后チョンチュテーフ>
以前韓国の名前の由来で
朝鮮第26代国王高宗コジョンが
清や日本からの影響払拭と独立を期し
国号を「大韓帝国テーハンチェグク」に、
自身を「皇帝」と称した根拠付けとして
この統一を挙げたと記しましたが、
まさしく「三韓一統(삼한일통サマンイルトン)」
として長らく我が国に於いて誇らしい歴史と記憶された訳です。
↓↓ 韓国の名前の由来はコチラ↓↓↓
高句麗の古都で有った平壌を
西京(서경ソギョン)と改め副首都として
北方開拓の拠点として重視し
故土回復に努めた事により、
新羅時代に荒廃化したピョンヤンが復興する
キッカケとなりました。
開城(개성ケソン)は開京(개경ケギョン)と
呼ばれ王都として整備されました。
地理的に38度線間近ですが
元々南に属していた事も有り朝鮮戦争で
爆撃もさほど受けず数々の遺跡や
朝鮮伝統家屋群が残されており、
共和国で2番目に世界遺産に登録された事でも
話題になりました。
↓↓ケソンについてはコチラへ↓↓↓
連邦制での統一の暁には連邦政府、
議会が設置され首都の座を勝ち取るかも知れません。
最近は南北関係の停滞と共に共和国の
南北連絡事務所爆破など、
良いニュースがありませんが、
観光特区や開城工業団地など南北協力の
シンボルも有り、
南北双方にとって地の利を有しているので
南北関係の改善と共に今後更に開発される事を待ちます。
<開城伝統家屋地区>
国内的には940年に役分田制度を、
976年に田柴科(전시과)制度を実施し功臣達に
収租権を与えました。
11世紀には中央統治機構として宋の制度を
取り入れ三省六部を実施します。
そして全国を5道両界と呼ばれる地域に分けその下に州,郡,県を置きました。
地理でも挙げますが、
この地域区分がその後の朝鮮八道のルーツとなります。
<高麗の5道両界オードリャンゲ>
仏教を国教とし、奨励し保護しました。
科挙制度と合わせ僧科(승과スンクァ)も導入し
育成に努めました。
高麗では僧侶の力が増大し、のちに奴婢や荘園を独占するなどの弊害が増大するキッカケとなります。
軍制度を整備し中央軍5万人、地方軍10万〜30万人動員体制を築きました。
他に駅站(역참),峰燧(봉수)などの体系も築き
国境に千里長城を築くなど国防体制を強化しました。
これらはその後の契丹(거란コラン遼)侵略で
遺憾なく威力発揮される事になります。
今年2023年KBSの大河ドラマで『高麗契丹戦争』が放送予定ですが、楽しみです。
高麗では開京と西京を中心に
手工業や商業も発展し、
三韓通宝や海東通宝、東国通宝などの銅銭、
銀瓶(은병ウンビョン:활구濶口ファルグ)と言う国の形を模した銀貨も鋳造され通用しました。
店舗や市場が開かれ賑やかに
取り引きされました。
↓↓ 高麗時代の貨幣はコチラへ↓↓↓
<高麗の国の形を模した貨幣 銀瓶은병>
後世の朝鮮王朝が基本鎖国だったので
見落としがちですが、
この時代まで国教は仏教で有り、
貿易も盛んでした。
開城の碧瀾渡(벽란도ピョクランド)には
遠くアラビア商人達も立ち寄ったと伝えられ
高麗の名が広く
世界に知られる契機となりました。
高麗と言えば
高麗青磁と言われる程有名ですが、
宋の模倣から始まった陶磁技術は
高麗独自の発展を遂げ翡色(비색ピセク)として
「出藍の誉れ」よろしく世界的に
評価が高いです。
また象嵌技術は高麗の大発明でした。
世界初の金属活字もそうですね。
また後述のモンゴルによる30年戦争中に
世界遺産でも有る八万大蔵経が作られ
今も人類の大事な文化遺産として残って居ます。
まさしくKoreaの名を世界に轟かしたと
言って良いでしょう。
<世界初 金属活字>
現在高麗史を研究する上で残念な事は史料の
不足で研究の発展が阻害されて居る事です。
元々朝鮮王朝実録の原型とも言える
高麗王朝実録が編纂保管されておりましたが
戦乱で焼失、
其を基に朝鮮時代に編まれた高麗史と高麗史節要が残るのみで、
自国で編纂された史書が残存しないのです。
<高麗史コリョサ>
高麗を倒した国による史書なので
分量が少ないのみならず歪曲も多いので
研究に隘路となっております。
他に史料が発掘される可能性も薄く
朝鮮王朝の前史としての連続性を紐解く
作業がままなりません。
<高麗磁器 象嵌青磁>
余談として韓国ドラマ「愛の不時着」でも
少し描かれていましたが、
開城からDMZ(非武装地帯)にかけては
高麗時代の古墳が多く高麗磁器が今も多く
出土するそうです。
現在南北で国宝級の磁器もほぼそうした
王墓や貴族の古墳出土だと言います。
盗掘も多いらしいですがキチンと管理すれば何か大事な史料が出土するでしょうか?
DMZの管理とも繋がるので南北の緊張緩和が
欠かせません。
<ドラマ 麗レイ~花萌ゆる8人の皇子たち〜>
ドラマとしては後の朝鮮王朝時代に比べると多くは有りませんが幾つか有ります。
大人気ドラマトッケビはコンユ演じる
主人公キムシンは高麗時代の英雄ですが
王の嫉妬により逆賊として
命を落としトッケビとなりました。
現代と過去を描くヒュージョン史劇の傑作です。
ドラマ麗レイ〜花萌ゆる8人の皇子たち〜は
中国の小説をベースに
現代からタイムスリップしたヒロインが
太祖王建の8人の皇子、
特にカンハヌル演じる優しいワンウクと
イジュンギ演じる冷たい仮面をかぶった
ワンソとの間で揺れ動くラブロマンスとなっており、
激しいアクションシーンや景勝が見ものです。
<ドラマ 輝くか、狂うか>
他にも古くは視聴率でも記録を残した先の
「太祖王権」、
「千秋太后(チョンチュテーフ)」、
「光宗大王-帝国の朝-(クァンジョンテーワン)」などが有り、
新しい所では高麗初期を描いたロマンス史劇
「輝くか、狂うか」などが有ります。
後期を扱ったドラマは次回触れます。
朝鮮王朝時代の史劇が頭打ちの中、今後高麗期のドラマが増える事でしょう。
↓↓歴史篇まとめです。
お好きな時代をどうぞ↓↓↓
<参考文献>
동아대학교 석당학술원他 高麗史
金富軾 三国史記
一然 三国遺事
山川出版社 世界歴史体系 朝鮮史
朝鮮史研究会編 朝鮮の歴史
朝鮮史研究会 朝鮮史研究入門