「英語学習」という普遍的テーマの、鳥飼玖美子さんの最新刊。
著者が若手の同時通訳者として颯爽とTVに登場したのは、私が小学生の頃だった。
当時から英語学習者の憧れの存在であった彼女の姿を、今も鮮やかに覚えている。
わたしが2、3歳のころ、父は、毎晩のようにOxford出版の英語の絵本を読み聞かせてくれていた。
思えば、今のようにネットで検索や注文もできない、情報自体が少ない時代のこと。
きっと神戸元町の丸善あたりまで出向いて買い求めてくれたのだろうか。
そんな父の最近の告白?によると、当時、将来娘が鳥飼玖美子さんのようになってくれたら!という
淡く、かつ壮大な夢を抱いていたらしい。
といっても、いわゆる早期教育として、幼稚園や小学校で英語を習いに行かされたわけではなかった。
入学した中学での英語の授業は、米国人の先生と日本人の先生のペア、日本語は一切使われず、
教科書もなし。アルファベットより先に習ったのが、発音記号!
目を白黒させながらも、必死に先生の一言一句にかじりつき、でも毎回のレッスンがワクワクだった。
そして英語が大好きになった。
年月を経て(笑)、今思うのは、これまでずっと英語に関わる仕事をしてくることができている、その
原点はやはり、あの楽しかった父の読み聞かせの時間があったから。
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話がそれたが、この本にある、英語を学ぶ人からのさまざまな質問への著者の回答はさすがだ。
豊かなキャリアや経験から来る洞察、試行錯誤しながら学ぶ後輩たちへの愛にあふれている。
読む前に私の中でちらついていた、学び直しも「今更かなあ」という気持ちもどこかへ吹き飛んだ。
著者が講師を務めるテレビの語学番組のゲストたちへのインタビューも多くて紹介されている。
英語のプロはもちろん、アスリート、ミュージシャン、俳優さん、お笑い芸人さんなど各ジャンルで
活躍する人たちが夢や目標に向かうプロセスで、つかみ取ったユニークな英語学習の極意は感動を覚えた。
お笑いタレントの「こがけん」さん。
私は彼の得意ネタ、ハリウッド映画の登場人物の「細かすぎて伝わらない」モノマネが大好きなのだが、
なんと、年間100本以上の洋画を観て、気になるセリフを何度も聞き取りメモして完コピできるまで
体にしみ込ませているらしい。
タレントのウェンツ瑛士さん。
英語力もままならない中、舞台演劇を学ぶため英国留学に飛び込んだ
全部聞き取ろうとせず、想像力を駆使して理解すればいいと開き直り、「大事なことは最初に言う」の
原則を徹底し、コミュニケーション力が格段に向上。
そして何よりも、著者自身のエピソードだ。
高校で米国に留学、大学卒業し通訳に、その後米国の大学院で修士、博士号を取得、大学講師、
輝かしい能力とキャリア、英語学習者のトップエリート、そんな彼女の挫折やそこからの展開。
たとえば、高校で留学中、“cute”だからと言って間違った発音を指摘してくれていなかった
ホストファミリーに、食ってかかる。
それからはガンガン指摘してくれるが、すぐに直るわけではない。
何度も繰り返し、試行錯誤の末、ついに正しい発音に行きつく。
スピーチコンテスト全国大会出場を逃し、何がダメだったか納得できず、スピーチがすっかり嫌いに。
その経験から、後年高校生の英語コンテスト組織を立ち上げ、審査員長を続け、受賞を逃した学生に
励ましの言葉をかけ続けているらしい。
英語を学ぶ、その最終目的は「コミュニケーション」と言い切る玖美子さん。
英語学習でも、翻訳でも、さらに加速するAI化。
それに振り回されず、駆使するためにも私たち自身が英語を学び続けることは絶対に必要。
「やっぱり英語、やりましょうよ!」こう締めくくられるこの本に、「はい!やります!」と答える。
