ある日私の診察室に、顔の傷跡の修正を希望して、30歳の女性がやって来ました。拝見しますと、眉間から鼻、そして頬にかけての傷跡が肥厚して、ケロイドになっていました。

「これはいつごろ手術を受けましたか」

「3か月前に、〇〇病院の形成外科で受けました」

「結構大胆な仕上がりですね」

「前の病院では、これ以上はきれいに出来ないと言われたんですが、もっと目立たなくなりませんか」

「もう一度手術をして、目立たなくしましょう」

眉間から鼻にかけての傷跡修正に、Z形成術が2か所入れてあり、瘢痕拘縮術として形成外科的にはごく一般的な手術がしてありました。
ただし女性の、しかも顔の瘢痕形成術となると、傷跡がもっと規則的で綺麗であることが求められます。そこで、美容外科的なセンスで手術をすることが大切になってくるのです。

「手術を受けて、まだ赤みが残っているのですが、却って傷跡が目立つようになった感じがしています」

「赤みは半年から1年で消えて行きますから心配はないのですが、今はまだ傷跡が結構目立ちますね」

「手術をすれば、もっときれいに治りますか」

「きれいになります。ただし、ケロイド体質がありますから、手術をした後、ケロイドを予防する薬を半年以上服用する必要があります」

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この患者さんは、眉間から頬にかけて、長いジグザグの傷跡がありましたが、ジグザグの一辺の長さが1センチ以上もある長い状態なので、W形成術のデザインで手術をすることにしました。
そのためW形成術は一辺が5ミリのジグザグの傷跡に変えることになります。
ジグザグの瘢痕は却って目立つのではないかと、心配する人もありますが、結果的には目立たなくなります。

「術後3か月経ちましたね。どうですか」

「手術を受けておいて良かったと、やっと思えるようになりました」

「よかったですね」

「先生、前の病院ではこれ以上治すことは出来ませんと言われたんですよ。やっぱり美容外科と形成外科は違いますねえ」

「僕も形成外科から美容外科に進化した医者ですから、そんなに違わないとは思いますが、きれいに治してあげたいという気持ちがより強いんだと思います。かたや形成外科医の中には、『美容外科は嫌いなのでやらない』と言う先生がいますから、最終的な出来ばえも変わってくるのかもしれませんね」

「そういうことなんですね」