ある日私の診察室に、半年前に眼瞼下垂の手術をしたMさんがやってきました。

「今日は眉間のしわを消しにきました。けど、瞼のたるみを取る手術をしておいて、本当に良かったと思っています」

「目がすごく若々しくなりましたよ!」

Mさんは70歳、でも今日の顔は60歳そこそこの若い顔にしか見えません。

彼女はもう10年以上前から、クリニックに通っています。すでにフェイスリフト手術も、脂肪注入術も行ったことがあります。それ以外の時はヒアルロン酸注射などを行っています。

1年に1,2回の年から、毎月の年まで、いろいろですが、来られた時はいろいろなことをしゃべって、最後は気分をすっきりさせて帰られます。

彼女はこの日はとても明るい涼しげないでたちでやって来ました。でもこういう時は意外に無理やり気持ちを奮い立たせてきていることを、私はもう長い付き合いの中で分かっています。彼女の家庭環境は決して裕福でも順風でもないのです。しかし、常に明るく振る舞っています。彼女のご主人は、5年前に脳卒中で、あっという間に他界してしまいました。そして、一人息子はうつ病で、もう3年ほど引きこもり状態です。

「息子さんは相変わらず引きこもりなのですか」

「そう、息子は離婚してからもう全然仕事もしなくなってしまって、家でごろごろしています。食事の時に顔を見るくらいです。何時になったら元気出すんですかねえ。先が見えません。私は70になっても年がら年中、女中みたいなものです。私の育て方がいけなかったんでしょうかねえ」

彼女はそれを言うと、目頭を熱くしました。

「せめて、鏡を見たときに気分が良くなるように顔のしわ取りでもしましょうか。気分転換に」

「実は今日はそれで来ましたの。先生は私のことよくわかっていますね‼」

「そう、分かっていますよ。ところで今日のいでたちは、とても涼しげで若々しく見えますよ。それも手作りですか?」

「その通り!今回はデザインもちょっと凝ってみました」

「すごいですね!そんな気になられるだけ、あなたはまだまだ大丈夫ですよ」

そして、ヒアルロン酸の注射は、眉間と鼻根部そして目尻に行いました。そして、鏡を見てにっこりでした。「眉間にしわを寄せた怖い顔がどこかに飛んでいきましたよ!」

「これでまたしばらく気分よく過ごせます」

 

 

気分を変える方法は人によっていろいろなものがあります。顔のしわが一本消えるだけで、気分が良くなる人もあります。それを馬鹿げたことと、笑う人もいます。しかし、私はこの道40年、いろいろな人を見てきましたが、馬鹿げたこととは思いません。鏡を見るたびに憂鬱な気分になるくらいなら、しわやたるみをなくして、気分を良くすることは健康の面でもすごく意味のある事なのです。誰でもハッピーな気持ちで過ごしたいのです。

何もしないで、くよくよ不満たらたらで過ごすことほど健康に良くないことはありません。たかがしわ、されどしわです。それは知性や職業に関係ありません。気になる人はきになるのです。

「先生また気になったら来ますね!」

Mさんはいつものように、気分を良くして帰っていきました。

 

眼瞼下垂症手術の治り方

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ある日私の診察室に、1ヵ月前に眼瞼下垂症の手術を受けたKさんがやってきました。この手術は術後1週間で抜糸が済み、その後1ヵ月目、3ヵ月目に経過をチェックすることにしています。

「術後1ヵ月経ちましたが、如何ですか」

「目尻のあたりが硬くて痛い感じがしますけど、これは大丈夫ですか」

「大丈夫です。目尻の部分は皮下の眼輪筋を少し切除しますから、しばらくの間は硬くて痛い感じがすることもあります。1,2ヵ月もすれば柔らかくなり、違和感がなくなります」

「瞼がしびれている感じがしますが」

「瞼を切開した場合は,そこから睫毛側の皮膚の感覚にまだしびれが残っています。これも1ヵ月余りで正常に戻ります。皮膚の知覚神経は眉毛から睫毛の方向に走っていますから、切開すると一時的に麻痺しますが、神経は再生力がありますのでちゃんと感覚が戻ります」

「まだ目が開きにくい感じがしますが」

「今の状態はまだまだ完全には腫れが退いていないのです。私が見てもまだむくんでいます」


この患者さんは特にナーバスな感じがしましたが、眼瞼下垂症の手術を受けられた方からはよくある質問です。
瞼そのものは柔らかい組織なので、術後は縫合部の傷跡の固さや出血など、いろいろなことで普通ではない状況に、多少の不快感がつのるようです。それを素直に受け入れることができる人と、できない人がいます。

「孫が私の目を見ると、怖い目になったと言うのですが・・・」

「大丈夫ですよ、まだ周囲の人たちは術後の目に見慣れていないだけで、腫れが治まれば優しい目になりますから。今まで瞼がたるんだ状態だったのが一気にすっきりしたので、一時的にきつい目に見えるかもしれませんが、やがて不自然さがなくなり、また周囲の人たちも見慣れてきます。」

中には家族に『きつい目になった』と言われて本当に落ち込んでしまう人もありますが、腫れが退くまでしばらくの間は眼鏡をかけるなどでフォローをしていただければ、その後は肩こりや頭痛から解放され、視野も広がって見えやすくなるので、男女共にほとんどの方がこの手術を受けて良かったと言われます。


ある日私の診察室に、顔の傷跡の修正を希望して、30歳の女性がやって来ました。拝見しますと、眉間から鼻、そして頬にかけての傷跡が肥厚して、ケロイドになっていました。

「これはいつごろ手術を受けましたか」

「3か月前に、〇〇病院の形成外科で受けました」

「結構大胆な仕上がりですね」

「前の病院では、これ以上はきれいに出来ないと言われたんですが、もっと目立たなくなりませんか」

「もう一度手術をして、目立たなくしましょう」

眉間から鼻にかけての傷跡修正に、Z形成術が2か所入れてあり、瘢痕拘縮術として形成外科的にはごく一般的な手術がしてありました。
ただし女性の、しかも顔の瘢痕形成術となると、傷跡がもっと規則的で綺麗であることが求められます。そこで、美容外科的なセンスで手術をすることが大切になってくるのです。

「手術を受けて、まだ赤みが残っているのですが、却って傷跡が目立つようになった感じがしています」

「赤みは半年から1年で消えて行きますから心配はないのですが、今はまだ傷跡が結構目立ちますね」

「手術をすれば、もっときれいに治りますか」

「きれいになります。ただし、ケロイド体質がありますから、手術をした後、ケロイドを予防する薬を半年以上服用する必要があります」

〇     〇

この患者さんは、眉間から頬にかけて、長いジグザグの傷跡がありましたが、ジグザグの一辺の長さが1センチ以上もある長い状態なので、W形成術のデザインで手術をすることにしました。
そのためW形成術は一辺が5ミリのジグザグの傷跡に変えることになります。
ジグザグの瘢痕は却って目立つのではないかと、心配する人もありますが、結果的には目立たなくなります。

「術後3か月経ちましたね。どうですか」

「手術を受けておいて良かったと、やっと思えるようになりました」

「よかったですね」

「先生、前の病院ではこれ以上治すことは出来ませんと言われたんですよ。やっぱり美容外科と形成外科は違いますねえ」

「僕も形成外科から美容外科に進化した医者ですから、そんなに違わないとは思いますが、きれいに治してあげたいという気持ちがより強いんだと思います。かたや形成外科医の中には、『美容外科は嫌いなのでやらない』と言う先生がいますから、最終的な出来ばえも変わってくるのかもしれませんね」

「そういうことなんですね」