今年は、いよいよ東京でオリンピックが開催されます。沢山のアスリートが私達に感動と勇気を与えてくれることでしょう。昨年暮れには、日本開催のラグビーワールドカップで、ベスト8と大活躍をした日本代表チームの凱旋パレードが、銀座で行われました。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ、リーチ・マイケル主将を中心にワンチームとなり、予選リーグを見事に4連勝して悲願の目標でもあった決勝トーナメントに進出をしました。このチームは、年間300日にもわたる合宿で、徹底的に激しい練習を積み重ねてきました。その練習内容は、壮絶で 体力のギリギリ限界まで肉体を酷使するというもので、あの屈強な選手達でさえも これ以上は体が壊れてしまうので危険だと感じた程の激しいものだったそうです。そこまで追い込まなければ、格上の海外チームには決して勝てないということを全員が自覚していたからこそ乗り越えられたのでしょう。そもそもラグビーというスポーツは肉弾戦ですから、中途半端な気持ちで行っていると、取り返しのつかない大怪我をすることになりかねません。ましてや日の丸を背負って戦うことになった彼らには、命を差し出す覚悟があったからこそ、一つ一つのプレーが正に命懸けであり、多くの感動を生み出したに違いありません。そこに至るまで、どれ程の犠牲を払ってきたことでしょう。にわかファンの私でさえも、目頭が熱くなります。
パレードでは屈強な30人の選手達が応援してもらったファンへの感謝の気持ちを込めて、笑顔で手を振りながら堂々と行進をしていました。しかし中には、稲垣啓太選手のように笑顔を全く見せない選手もいました。諸説あるとは思いますが、私は笑顔を見せない選手がいても不思議ではないと思います。「我々は本当に命を懸けて頑張ってきたのです。そのことを分かって下さい」というメッセージを彼の強面から感じました。正に男の中の男です。一見無愛想に見える彼ですが、その反面 母校のラグビー練習場に、後輩が本式の練習ができるよう 自費で芝生を寄付する等、優しい心根の持ち主でもあります。
また、もう一人 私の心に残ったのは、パレードの最初から最後まで ずっと涙を流しながら歩いていた田中史明選手でした。ひときわ小柄な選手であるにも拘わらず、8年前のワールドカップ以来 ずっと代表を努めてきた選手の一人です。その8年前のワールドカップでは一勝すらできず敗退した、辛い経験も味わいました。それでも あたたかく見守って頂き、今回の快挙に至るまで、応援し続けて頂いた人々のことを思うと、感謝の気持ちでいっぱいになり、涙が止まらなくなったそうです。彼もまた、本当に心の優しい人だと思いました。その様子が画面に映し出される度に、もらい泣きをしてしまいました。
挨拶のスピーチでは、リーチ・マイケル主将が「犠牲」という言葉を3度も口にしていたことが最も印象的でした。「犠牲」という言葉を、goo国語辞典で調べてみて下さい。
1、神、精霊に捧げる供え物 2、目的の為に損失を厭わず大切なものを差し出すこと…と記されています。最も分かりやすいたとえは、野球で「犠牲打」「犠牲フライ」という打法があります。バッター自身は打数に繁栄することも無くアウトになりますが、それによって走塁者は活かされます。つまり、彼らはプライベートを含め、多くのものを「犠牲」という名の下に神様に捧げることで、大きな目的を達成することができたのではないでしょうか。そして そこに、ご家族や関係者、国民の祈り…それら全てが大願となりワンチームとして、日本の八百万の神様に届いたのではないでしょうか。また、ワールドカップと同時期に起こった災害の復興にも、彼らは大きな勇気と希望を与えてくれました。八百万の神様に心からお礼を申し上げたいと思います。
「ワンチーム」が昨年の流行語大賞に選ばれたことは喜ばしいことで、どこか聖徳太子の「和を以て尊しとなす」を連想させる意味合いが感じられ、協調・協和を大切にする日本古来の精神道に相応しい響きを覚えます。それら全てが、彼らの「犠牲と覚悟の精神」から生まれた言葉で、きっと神様も感激をされたのではないでしょうか。
母国開催のオリンピックで、沢山の感動とメダルを授けて頂けるよう、神様に祈りましょう!