ある部族で結婚の儀式が行われた。
ここは中国の内陸部にある少数民族の集落である。
周りは高い山々に囲まれていて、盆地にひっそりと暮らしている。


女性たちは長く大きな首飾りをしている。
老いも若きも同じような首飾りで何重にも絡んで重そうに見える。
男たちは地味な黒い民族衣装であまり印象にない。


結婚をするという新郎新婦は部族の決まりにより、儀式の間は顔を出さないようだ。
かわりに村の中心にある広場では大きく火が焚かれ、周りを取り囲むようにして部族全体が踊っていた。リズムを刻む太鼓は、木の桶を逆さにして木の棒で叩くだけの簡素なものだった。

儀式のクライマックス、男たちが大きなカゴを持って集まってきた。
中からたくさんの鶏たちが飛び出した。
大火に驚いた鶏たちは、興奮して飛べない羽をバタつかせて上へ下への大騒ぎ、
あたりは鶏の撒き散らす砂埃と火の粉で騒然とした。

しばらくすると一部の鶏たちが特定の二羽の鶏をつつき出した。
すると他の鶏たちも同調して同じようにつつき出す。
近くの男に聞いたところ、この鶏の習性だそうだ。
かわいそうな二羽は嘴でつつかれ血だらけになっている。
黒っぽい羽の方が雄鶏、白っぽい方が雌鶏のようだ。
健気なことに、雄鶏が雌鶏を庇うように上に覆いかぶさっていた。

男たちが興奮する鶏の中心に入り込み、攻撃を受けた二羽の鶏たちを救出した。
そして優しくだいて小屋に入って行った。
この二羽は新郎新婦に託され、二人で大切に育てるという。
そういう結婚の儀式であるという。



と、いう夢を見た。
海辺に近いこの街では昼頃になると銭湯がごった返す。
海の仕事をする人が多く、仕事終わりに立ち寄るものが多い。

出入り口付近で幼い女の子を連れた若いお母さんが、子供を石鹸で洗ってやっていた。
私は上がろうとしていたのに体に泡がついてしまった。
すると、見知らぬ幼い男の子がケロリンの黄色い桶に湯を汲んで、無言で私についた泡を流してくれた。

脱衣場に上がるとガラス一枚隔てて男湯が見える。
浴槽はごった返している。
一瞬、女湯も見えるのかと焦ったが向こう側は鏡になっていて、こちらの様子は見えないそうだ。

下足箱を開けると私の靴が無い。
夫の靴も無い。
夫はその辺に転がっていたトタンの波板を手繰り寄せ、
トタンの上に乗って勢いをつけて移動する。確か向こうに靴があったはずだ。
彼の重みからか、アスファルトが固まっていないからなのか、
ズルズルと勢いをつけて進ごとにアスファルトにシワが寄っていく。


靴を履いてバス乗り場に行く。
バス停は行列、多分座れないだろうと思ったら席が半分だけ空いていて、
私は片尻だけ乗せる形で腰掛けた。

漁協の組合の寄り合い所のようなところに行くとみんなが待っていた。
だいぶお酒も入っているようで一部の友人たちは何処かに出かけてしまった。
多分、さっきの銭湯に行ったのだろう。



と、いう夢を見た。
今度就任した三代目の若社長は、前髪を剣のように垂らしいつもツヤツヤと整髪料でセットしているため脂ぎって見える。

ビシッとしたスーツ、光るほど磨かれた靴で修験者のように険しい山道を駆け上がって行った。
木が生い茂った中に土のむき出しになった獣道が続く。
歴代、社長就任にあたっての儀式である。
軽快に山を超え下り坂に至ったところで集中力が失われ、
若社長は儀式を途中で放棄し、失踪した。

若社長は海沿いにあるバーに現れた。
そこで隣に座って一人で飲んでいた男に話しかけられた。

突然のことであるが、と男は話し始めた。
私とあなたは以前、兵士と上官の関係であった。
その前は母と子、
そのまた前は教師と生徒の関係であった。

唐突にそんなことを言われても、と若社長は思ったが、
なくはない話だと思い直し、二杯目のオーダーをしてじっくり聞く姿勢を固めた。