嗚呼、やっとこのALBUMについて書けるなんてそれこそ「幸せ」! 青春ど真ん中の高校時代。BEE GEESが 3度目の来日を果たした時の記念ALBUMだ。コンサート会場の中野サンプラザで「幸せの 1ペンス」と後ろに刻まれたBEE GEESのロゴペンダント欲しさに購入した、とつい最近まで単純に思っていた。しかし、よーく記憶を整理してみるとALBUMは発売と同時に買った筈である。確か会場では再発された初期ALBUMも同時に何枚か販売していて、その初期の何か(たぶん、「HORIZONTAL」か「IDEA」?)を購入して手に入れたんじゃなかったかなあ、と思う。今から約40年も前の話でどうも記憶が曖昧なのだが。当時、帯は邪魔もので破り捨てていた。今、発売当時のLPを見ると全体の赤オビに来日記念盤と横書きしてあり、部分黒地に「幸せの 1ペンス/ザ・ビー・ジーズ」と白ヌキのゴシック文字で記されている。

左は再発盤LP-MWF1055、右は見本盤LP-MW2099
アメリカのミュージック・シーン、とりわけ、黒人音楽をその根っこから愛してやまないARIF MARDINが、どん底にいたBEE GEESに何を感じたのかは分からないが、とにかく、米で売れる音楽、受ける音楽、流行る音楽を彼ら自身に分かってほしかったのだろうと思う。ブラック・ミュージックのルーツであるR&B(リズム&ブルーズ)の要素、簡単に言ってしまえばリズムを強調したソウルフルな感じを出してほしかったのだと思う。A面 1曲目の「CHARADE」は当時、中学生だった私でも大人の曲だと思えたし、前にも書いたが今でもJAZZテイストな雰囲気でBEE GEESらしい、というよりARIFらしい演出だと思える。GEOFF WESTLEYのエレクトリック・ピアノ(キーボード?)とPHIL BODNERのクラリネットが、ゆったりとした全体ムードの中で幻想的なイメージと、JAZZYな大人の雰囲気を紡ぐ。この曲で幕を開けるというのはやはり、CHANGEの象徴だと私は思っている。
そして、静かに浜辺に打ち寄せる小さな波が引くようにこの曲が終わり 2曲目「THROW A PENNY」のベースとエレクトリック・ピアノの小気味良いリズムについつい乗っかっちゃう。リズムにはいつのまにか、DENNIS BRYONの刻むドラムが加わり、BARRYの優しく囁くようになハスキーなVOCALとメロディーが何か分からないけど、ハートウォーミングな気分にさせてくれる。DENNISは元AMEN CORNER(エーメン・コーナー)のドラマー。(AMEN CORNERは68年に「ハーフ アズ ナイス」で大ヒットの英・ウェールズ出身のグループ。後にキーボードで加わるBLUE WEAVERも在籍していた)幼い子を初めて手に抱えた時の、あのふくふくとしたちっちゃい手をとって、歩かせる時の幸せな感じが歌詞からも感じられる。そういや、あの頃、BARRY もROBINもお父さんになったばかりじゃなかったか。子を持つ幸福感が歌詞にもメロディーにも溢れているのだろう。

(右、日本盤SINGLE「愛のシャレード」見本盤、このSINGLE盤殆ど見ません。入手困難盤?)
かと思ったら曲は切れ目なく次の「DOWN THE ROAD」につながる。所謂、クロスフェードアウトだが、前作「LIFE IN A TIN CAN」でも見られた。こういう手法はLPならではのものだから聴きどころではある。ちっぽけな話だが 3分乃至 4分で一区切りというレコードの既成観念が破られる小さな驚きと快感はあったと思う。しかも「DOWN THE LOAD」はあの頃のBEE GEESにしては珍しいロックだった。ナイーヴでメロディアスな彼らのイメージをかき消すような試みに、何か分からないけど誇らしい気持ちが芽生えたもんだ。この曲やB面の「HEAVY BREATHING」を、BEE GEESというと軽くスルーしていたハードロックやら、ヘビメタファンの友人に聴かせてあげたい程だった。
ところでこの「DOWN THE ROAD」のサビの部分の歌詞だが、昔のライナーには「DOWN,DOWN THE ROAD,DOWN THE ROAD(7TIMES)」と書いてあった。確かにそう聴こえた。大して意味も考えず「そんなに道を駆け下りて、一体どうするの?」なんてただ漠然と考えたこともあったが、最新の紙ジャケのLYRICSでは「DOWN,DOWN THE ROAD,UP THE ROAD(REPEAT 7 TIMES)」と記されている。要はUP,DOWN,UP,DOWN気にせず行こうというような内容なのだが、私にとっちゃ、おっきな違いって感じだった。
そんなことを言えば冒頭の帯の話に戻ってしまうけど、帯には普通の黒い小さい文字で「10月に三度目の来日をするビー・ジーズの最新アルバム、例によってさわやかなサウンドが聞けます。」と特に目立ったアピールがなされているわけでもなく記されている-----。「例によって」とはいったいどういう意味なのか。そもそもPENNY(ペニー)の複数形がPENCE(ペンス)なのだから 1ペニーとは言っても 1ペンスとは言わない。邦題は「幸せの 1ペニー」だろう、などといろいろと彼らの日本盤の扱いへの不満が個人的には多少なりとも募ってしまうこともあるが。 (すみません。ついつい。これも我らがBEE GEESを愛するが故のつぶやきでして)。ARIF MARDINの名前もジャケット裏面に小さな白い文字で義務的に記されているだけ。しかも、これは日本盤に限った話ではないけど、このALBUMからはいわゆる、見開き型の文字通りのALBUMジャケットではなく、レコードスリーブ型になっていて何か物足りなさを感じたのをおぼろげに覚えている。
それから約20年以上も経って、まさかBEE GEESのファンと交流があるとは思わなかった。オリジナルALBUMの中でジャケットに彼ら自身が写っていないALBUMは全部で何枚か? なんていうクイズ問題が過去のオフ会で出題された時、思わず、FIRST ALBUMから指折り数えてしまった。BEST盤、それにオーストラリア時代の「RARE PRECIOUS & BEAUTIFUL」を除けば「ODESSA」「TRAFALGAR」「MR.NATURAL」「MAIN COURSE」の 4枚である。そして、ARIFが関わった「MR.NATURAL」「MAIN COURSE」は意図的に英国出身の白人グループであることを隠すためだった、と言われている。人種的偏見なしに純粋にレコードから鳴る音楽のみをまず、聴いてラジオ局で流してほしいというレコード会社側の意図があったのだろう。 (つづく)