この本、かなり面白かったです!
『 THE GIVER 』ロイス・ローリー著 

最初からぐんぐん引き込まれてしまいました。世界中にこの本のファンがいるというのも納得です。 

イギリス英語ですが、読みやすかったです。

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ジョナスは、戦争も飢えも痛みもない、穏やかで平和なコミュニティで暮らす少年。

しかしそこは徹底した管理社会であり、人々は常に監視され、いくつものルールに従い生活していました。

コミュニティを統括しているのは長老会のメンバーで、彼らによって、人々は自らの職業、配偶者や子供、そして生死さえも決定されていたのです。

人々の感情も薬によりコントロールされていました。

子供たちは12歳になると、それぞれの適正に合った職業を任命され、その訓練を始めます。

ジョナスが任命されたのは、【記憶を受け継ぐ者】という、大変名誉ある重大な仕事でした。

実はこのコミュニティの中には、人類の過去の記憶というものがなかったのです。

過去の記憶が人々に痛みや苦しみを与えるのを避けるため、【記憶を受け継ぐ者】一人だけが、それを代々受け継いできたのでした。

そしてその記憶からもたらされる叡智により、長老会に助言をすることも【記憶を受け継ぐ者】の役割でした。

先代の【記憶を受け継ぐ者】から過去の記憶を一つ一つ伝えられるジョナス。

さまざまな記憶を体験するうち、ジョナスはそれに伴う数々の感情も経験していくのでした。

そのうちジョナスは周りの、本当の感情というものを知らない人間たちに違和感を覚え、コミュニティのあり方にも疑問を感じるようになります。

そしてついに、ある行動を起こすことを決意するのですが、それは危険を伴う命懸けのものでもありました。

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過去の記憶を一人ですべて背負わされる【記憶を受け継ぐ者】

その記憶や感情を誰かと分かち合えないことは、本当に孤独で辛いことだと思います。

ジョナスは、時には戦争などの強烈な記憶により、とても苦しみますが、彼が窮地に陥った時、救ってくれたのも記憶だったことがすごく心に残りました。

あと、驚くことに過去の記憶を持たないと、感情だけでなく色彩も感じなくなってしまうんですね。それどころか、動物や音楽というものも知らない世界になってしまう。

それらが全てある自分が生きてる世界は、実はすごく豊かなんだなと思いました。

そして、あんな風に全て管理されてなくて良かったと思う一方、実は気づいてないだけでこの世界もコントロールされているのかも…なんて思ったり。

最後は、「え?これで終わり?一体どうなったの?」という、終わり方だったので余韻が残りました。

いろいろ考えさせられる印象に残る本でした。


2014年には映画化されていました。(原作とは話がちょっと違うみたいです)