これも数日前に読み終わった。
「シャドウ」 道尾 秀介
創元推理文庫 \735
向日葵の咲かない夏 の作者。これが面白かったため続けて読んでしまった。
以下ネタバレありの感想。
叙述トリックが使われているのだが、キチンとした伏線を冒頭から分かりやすい形で張っているため、いつ、誰の、どの描写が真実と異なるものなのかという緊張感が作品全体を覆い、不安と戦いながら読み進めていくことになる。
後半の割と早い段階でその伏線は解消されるのだが、このときの不安感の解消は、前半の緊張感からの開放ともなっておりある意味心地よい。さらに、このトリックそのものが、ある登場人物が意図的に設定した作戦の一つだと明かされ、なまじ前半からトリックの内容に気がついていた読者ほど唸らされる結果となっている。
これがこの話のクライマックスで、あとの全ては不要と言えば不要。この話のみを、短編として書いても良かったんじゃないだろうか。その方が私としては評価できるになったと思う。
しかし、この作品は作者自身が「救い」をテーマとして挙げている。曲解すればエンターテイメントを重視して書かれた作品とも言え、その意図は充分達成できているように思える。
子供が登場人物の一人として出てくるのだが、この子供が作品を通して分かりやすい形で「成長」してみたり、火曜サスペンス張りのラストへの展開があったり、まあ、深くはないが良くできたオハナシである。
うかつにもその安っぽい作りに感動してしまったりもしたのだが。
最後まで明かされなかった、ある事件の犯人については展開も動機も唐突だが、エンターテイメントを作る上での必然、予定調和だと割り切れば、これはこれで必要だったんだろうなと納得できる。逆に、途中で明かされる、本筋と関係ないいくつかの小さな謎は蛇足に思える。これだけご都合主義で話を作るのなら、全ての小ネタも大筋に絡めれば良かったのに。
良くできたオハナシでした。映画化うまくいくといいね。
星3つ。
☆☆☆