カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (単行本)
道尾 秀介 ¥1,785-
また道尾秀介。
前回読んだ「信長の棺」がとんでもない駄作だっただけに非常に面白く感じた。
今回はあまり技巧的に凝ったことはせずに、分かりやすいコン・ゲームで、
人物描写を中心とした佳作。
(以下ネタバレあり)
中年男性二人組の詐欺師が女子高生スリ師とひょんなことから共同生活を始める。
そこに女子高生の姉と姉の彼氏も転がり込み、
迷い込んだ子ネコと共に
騒々しいながらも温かい疑似家族を形成していく。
登場人物それぞれに過去があり、それらが絡み合い
少しずつ明らかになる秘密。
やがて全員の過去にケリを付けるため、ヤミ金融組織相手に
大きな仕事を挑む。
……なんて陳腐な、って思う。
けど、良くある話ってのはそれを面白いと思う人が多いから
頻繁に書かれるのであって、この小説はその良くある話を高いレベルでエンターテイメントに
仕上げており、単純に面白い。
最後のどんでん返しも、まあ、良くあるオチで、どこかで読んだことがある気がするのも
愛嬌として許せるくらい。
相変わらず下手くそなミスリードのせいで興ざめなところも多々あるが
(貫太郎が途中からおかしかったのは単に火薬が苦手だったからってだけだったり)
それでも全体としては面白い小説だと思う。
悪い人は誰もいなかったんだ、ってラストも、
最も大事な人物が死んで、だから物語も終わりですよ、って所も、いっそ清々しい。
細かいところだと、
お父さん指、お母さん指の話は誰かに教えたくなること請け合い。
穴ぼこに落ちる原始人の話はちょっと考えた。
しかし、この作者にはこの手の話はもう書かないでくれてもいいなとも思う。
こんな話なら他にもたくさんの人が書くだろうから。
道尾秀介にはもっとあっと驚く、しかし心に残る、そういう作品を手がけて貰いたい。
☆☆☆