さる消息筋の日常 -12ページ目

さる消息筋の日常

書きたいことを書きたいままに書いています。

もしお気に障ったら、ごめんなさい。

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (単行本)
道尾 秀介 ¥1,785-

また道尾秀介。

前回読んだ「信長の棺」がとんでもない駄作だっただけに非常に面白く感じた。

今回はあまり技巧的に凝ったことはせずに、分かりやすいコン・ゲームで、

人物描写を中心とした佳作。


(以下ネタバレあり)


中年男性二人組の詐欺師が女子高生スリ師とひょんなことから共同生活を始める。

そこに女子高生の姉と姉の彼氏も転がり込み、

迷い込んだ子ネコと共に

騒々しいながらも温かい疑似家族を形成していく。

登場人物それぞれに過去があり、それらが絡み合い

少しずつ明らかになる秘密。

やがて全員の過去にケリを付けるため、ヤミ金融組織相手に

大きな仕事を挑む。


……なんて陳腐な、って思う。

けど、良くある話ってのはそれを面白いと思う人が多いから

頻繁に書かれるのであって、この小説はその良くある話を高いレベルでエンターテイメントに

仕上げており、単純に面白い。


最後のどんでん返しも、まあ、良くあるオチで、どこかで読んだことがある気がするのも

愛嬌として許せるくらい。

相変わらず下手くそなミスリードのせいで興ざめなところも多々あるが

貫太郎が途中からおかしかったのは単に火薬が苦手だったからってだけだったり

それでも全体としては面白い小説だと思う。

悪い人は誰もいなかったんだ、ってラストも、

最も大事な人物が死んで、だから物語も終わりですよ、って所も、いっそ清々しい。


細かいところだと、

お父さん指、お母さん指の話は誰かに教えたくなること請け合い。

穴ぼこに落ちる原始人の話はちょっと考えた。


しかし、この作者にはこの手の話はもう書かないでくれてもいいなとも思う。

こんな話なら他にもたくさんの人が書くだろうから。

道尾秀介にはもっとあっと驚く、しかし心に残る、そういう作品を手がけて貰いたい。


☆☆☆

信長の棺 加藤廣

文春文庫

上 \505 ISBN978-4-16-775401-3

下 \543 ISBN978-4-16-775402-0


信長記の作者、太田牛一を主人公に本能寺の変にまつわる謎をとく

歴史ミステリー……


って どこがミステリーだか。 どこが歴史ものだか。

噴飯モノの超駄作。


以下ネタバレありの感想だが、伏せ字で隠す気にもならない。


まず人間ドラマが糞。

上巻、安土城の設計図を主人公に渡す普請奉行。

彼が本能寺の変直後の安土城を任されることになり、死を覚悟していることを

主人公は覚って男泣きするわけだが

もーたまらない猿芝居。

「(次郎左は死ぬ気なのだ)と直感的に覚った」って、なにが直感的だよ・

今時ジャンプの最下位マンガでもこんな心象風景全て無視の展開書かないよ。


終盤、信長の遺体がどこに消えたかを主人公が探り、最後に解答があるのだが

この大事な過程を、「全てを知るある人物」が下巻後半のほとんどを使って

一人語りして、はい、これが答えでした、とやってしまう。

それまで主人公がやってきたことの意味は殆どなし。

で、その言葉通り信長の遺体が本能寺と南蛮寺の間の隠し通路で見つかる。

どうですかこの展開。小学生の書く作文か???

退屈を通り越して薄ら寒い感動さえ覚えたね。


聞けば作者は75歳にして初の小説を書いたそうだが

なるほど、だからなのか、

年寄りが若い女に惚れられて性交しただの、

年取っても若い者より元気だの、

そういう老人の妄想も気持ち悪いことこの上なし。



さっさと放り投げれば良かったのだが、このクラスの、ひっくり返るほどの

超ダメダメエピソードがてんこ盛りで、怖い者見たさで全部読んでしまった。


上下巻で1000円なにがしももったいないが

何より貴重な時間をこんなものを読むために使ったことがたまらなく悔しい。


文句なしで☆なし!

みなさんは間違っても買ったり読んだりしちゃあダメですよ。



反省を込めて…………


(☆なし)

新世界より 貴志 祐介

講談社ノベルズ ¥1,995


かなり分厚い大作。読むのに1週間かかった。

SFはなんでもそうだが、序盤は世界を理解するまで時間がかかり

まあ、つまらないと言ってもいい。

しかしガマンして読み進めると中盤以降は怒濤の展開で最後まで一気に読んでしまった。

序盤50ページに5日間 そこから2日間で最後まで読んだ。


(ここからネタバレあり) 肝心なところはさらに白文字で書いています。


物語は未来の話、超能力モノ。

超能力のイメージとしては童夢、AKIRA以来の日本コミックでの王道と言えるイメージで

捉えて差し支えなさそうだ。

アキラや鉄男がたくさんいたら世界が滅ぶよねー って想像はしたことあるが、

確かにそのとおり、世界は一度ボロボロになって、

そこから超能力者がどのように世界を再生したか、

一人一人の人間が社会を滅ぼす力を持った時、どのように社会は

その力と折り合いをつけたか、そのあたりの工夫が興味深い。

また、そのような工夫を考えるのは面白いと気づいた辺りが素晴らしい。


バケネズミ の正体なんかは、割と序盤で気が付けるんだけど

あくまでそれに気づかない主人公たちもある意味怖い。


マンガ、アニメにすぐなってしまいそうな軽さは気になるけど

リーダビリティがあると好意的に解釈して☆3つとしておく。


☆☆☆