痩せっぽちの男の子

彼女は痩せっぽちな男の子が好き
もやしで出来たトーテムポール?　シャーペン芯の案山子とかかな
兎に角デブは苦手らしくて　汗かきで泣きべそなこの僕は
とてもじゃないけど相手にゃされなそう

そろそろ漫ろに浮かれ始める　多くの純情が気にするのは
スカートを揺らすあたたかい風　
そっと両手で抑えながら眉をしかめて困っている横で
石で止めておかなければ　知らぬ間に飛んで行きそうな
ガリガリにに痩せた軽石の様な男の子　
ぎゅっと抱きしめて「離さないもん」と　幸せ独り占め噛み締めたいのかも

彼女は痩せっぽちな男の子が好き
デブは大概の憎悪より憎らしく　コンビニのゴミ箱の中身より醜い
太っている者は豚よりも汚くて　倒れていても踏み潰し歩く
フリークスな貴方には用なんてないの　同じナードならグレアムの様な子が良いな

そういや　幼馴染で初恋のあの娘も
学校で一番の馬鹿と付き合っていた　理由はやっぱり身長さ
伸びっぱなしのヘアバンドみたいな彼の特技は嘘をつく事
誰も相手にしなかったけどペテンにかかったのは彼女だった
夜の蝶かと思う程に派手で場違いなママと一緒に
仲良く三人で腕を組みデイト　この僕見かけると意味深けに笑い
すれ違った瞬間にその声は大きく震えた

アイドルでもないのにピンクフラミンゴ
すらっと細くスキニーなジーンズ　兎に角痩せっぽちこそが繊細
女の子達もおばさんも時には女性の名が付いた男も　声高らかに理想を掲げる
臭いものには蓋をしろ　それって太った男へのアイロニー　
最近まで知らなかったから恥ずかしいよ

彼女は痩せっぽちな男の子が好き
ストローのキリンにチュロスのエレファント　動物園なら首が凝るね
間違えても寝違えても寄り添わないわ　痩せる努力もしないくせに

生意気に告白してんじゃねぇよ

そこまで言われると思わなかった　好きになっちゃって申し訳ない　
なるべく距離を空けておくから　仄かな想いを断ち切らせないで
少しだけ見つめてもいいかなぁ　きっとそれもストーカーと見なされ
虚しくなっちゃうだけかもしれない　それでも好きには変わりないのさ
今頃華奢な誰かの腕の中　頬赤くして見つめ合ってても　嫌いになんてなれないのさ