稈体 暗順応の世界にようこそ ・・・暗順応を認識する方法 (追記あり)
夜、星を見ているからといっても、必ずしも完全な暗順応をしているとは限らない。
明るいところから 暗闇に出ても、はじめの数分間、コーラルシュの屈曲点までは錐体の暗順応。
錐体は色を識別し、高い解像度を誇る視細胞。
視力検査はこの錐体の能力の検査である。
赤、緑、青の光に対して、三種類の錐体があるが、合算すると555nm付近に感度のピークがある。
月夜や都市光の元では暗順応もここ止まり。
本当の感度上昇は ここから。
おそらく、月や惑星をご覧になっている方、撮影中にPCやスマホ等の明るい画面をご覧になっている方は、コーラルシュの屈曲点から先の暗順応へは行っていない。
錐体の暗順応しか体験されていないかもしれない。
日常的には錐体までの暗順応しか体験されていない可能性が高い。
稈体の暗順応を 体験されていない方は 是非!
稈体は高い感度を誇る視細胞。
その代わり、色の識別は出来ず、解像度も低い。
感度域のピークは505nm付近と、錐体に比べて青い波長域を得意とする
暗順応が進行し、錐体から稈体へ目の能力の主役が移行すると、赤の感度が低下して、青の感度が上昇する。
これをプルキンエ現象という。
古い変光星の教科書には、月夜・都市光等でバックグランドの明るい空で、赤い星が明るく見えている現象をプルキンエ現象と説明しているものがあるが、眼科の書籍にはそのような記述はない。
話を暗順応に戻そう。
。
稈体の暗順応が最大域に達したかどうかの判断に、プルキンエ現象を利用したら良いのでは?
というのが 私からの提案。
具体的には赤系と青系のカラーチャートを使う。
なるべくビビッドな彩度で、明度も同じくらいの赤と青か良い。
例えば新潟アルビレックスみたいなマーク。
明るいところで見ると、赤~オレンジ色は明るく見えているが、稈体の暗順応が完了すると、赤系は黒く、逆に青系は明るく見えてくる。
このような感度域のピークが青系に移行した状態が暗順応が完了した状態なのである。
逆に言えば、青系の感度上昇をカラーチャートで確認出来れば、それをもって暗順応が完了したことを知ることができるわけだ。
これは私のアイデアなので、過去の天体観測の教科書には載っていない。
眼視観測のベテランの方も知らない方がほとんど。
私は過去の観測者の方を否定するつもりはないが、進歩する勇気は必要だと思う。
是非、稈体の暗順応をお試しください。
稈体の暗順応をした目はこれまでとは違う世界を見せてくれるはず。
これまでの望遠鏡や双眼鏡のインプレッションは錐体によるものばかり。
それは当然かもしれないが、天文用としては片手落ちだと思う。
天文リフレクションズでも、赤ライトの問題が話題になっている。
赤ライトよりも、赤みががった電球色のライトが良いという提案がなされているが、それは暗順応を度外視したご意見だと思う。
確かに星の写真だけを撮影される目的の方なら、稈体まで暗順応をする必要はないので、そのような選択肢もあるかもしれない。
ただ、いくら弱くても電球色は稈体の暗順応を妨げるため、周囲に星を見ている人がいる場合には、電球色のライトは遠慮して、赤ライトを使うのがマナーだと思う。