よく、「どんなカルチャー•ショックを体験しましたか。」とか、「逆カルチャー•ショックは大丈夫ですか。」とか聞かれる。
しかし、私が出会った「違い」で、「ショック」と言えるほどのものは、実は日本国内での体験だった。
ある温泉に行った時の話。大きな観光地ではなく、一緒にお湯に浸かっているのは、近所に住むお年寄りだった。といっても、彼女たちはまだ現役で畑仕事をしているようだった。自然におしゃべりが始まり、
「東京から来たの?」
「ええ、東京出身なんですけど、今はフランスに住んでいるんです。」
「へえ、フランス!東京でも私らから見たら遠いのに‥」
お世辞もあってか、彼女たちは住んだことのない大都市への憧れをひとしきり語った。しかしその後で何気なく出た言葉は‥
「でも、東京って、出かけるときは、いつも財布を持って行かないといけないんだってね。」
そ、そうだけど‥
「ここだったら、晩のおかずが無ければ、畑の野菜取ってきてご飯にできるもんね。」
そ、そうかぁ、そうなんだ‥
東京だろうがパリだろうが、大都市であることには変わりがない。もっと規模の小さい町でも、出かける時には必ず財布か小銭入れかカードを持って行く。都市に住む者にとっては常識だけど、日本中どこでもそんな生活をしているわけではない。誰もが貨幣経済の中で生きているのは事実だとしても、店だの自動販売機だの改札だのカフェだの、お金を使う場所が、どこにでも同じようにひしめきあっているわけではないのだ。
わかっているはずのことだったけど、実際に温泉で肌触れ合って、目を開かされた体験だった。
2015年6月26日~7月8日
『海と地の対話』
沖縄にルーツを持ち、アルゼンチンで生まれ育ったフリオ•ゴヤの個展。
6月30日18時30~尾山裕子による多言語のパフォーマンス
Gallery Zava
恵比寿駅より徒歩5分
駒沢通りと明治通りの交差点近く
渋谷区東3-16-9
tel. 03-6450-5482